第59話 吾輩は『夜の海へ』繰り出す
吾輩は目を覚ました。こうもりが話しかけてくる。
「旦那、お目覚めですか?」
「蒸し暑い・・・いかん・・・頭が沸騰する」
「確かに熱いですね」
「そういえば、こうもりって夏バテとかないの?」
「私たちは夏から初秋にかけてが活発的な活動状態ですからね。いまピークに近いっす」
「そうか!!」
吾輩は歩き外に向かいながら考える。
これなら・・・きっと・・・
海までひとっとびだぜぃ!!楽勝。
へい、タクシー的なものである。やはり、楽ちんが一番いい。無料で楽ちん。
『蝙蝠、イン・ザ・マント』の久々の起動である。元気いっぱいなアイツらならきっと・・・。
吾輩は意気揚々と外に飛び出した。そしてこうもり達にロッカーっぽく話しかけた。
両手をアロハのマークにして。
「いくぜ、野郎共!!海へ行くお時間だぜ!!ロッケンロールーーーーーーーー!!ヒャッハーーーーーーーーー!!」
「・・・・・・・」
反応が返ってこない・・・・・・あれ?
みんな、お時間だよ・・・・。なんか、あわただしいな・・・。
「ちょっと、そこどいてくれ、アインツ!!邪魔だ!!」
「ほい・・・いや・・・あの」
「ちょこっとどいていただけますか?坊ちゃま」
「・・・すまん。夫人」
「あ、あ、あ、アインツさん!!どいて、どいて、どいて!!」
「・・・・ごめん」
空をいっぱい飛び回るこうもり達・・・邪魔者扱い。
主人なのに・・・土地を貸してあげてるのに・・・。くっ・・・恩を仇で返された。
目から塩水が溢れだし、吾輩は立ち尽くした。
「旦那、みんなおさんで忙しいんで、今日は非番です」
「えっ・・・おっさんで忙しいの?」
「お産です」
「えっ・・・。」
「繁殖期ですから。みな、子供が生まれたりして忙しいんですよ。旦那」
「な、な、な!?子供!?」
「そうです」
そうか・・・。新しい命が生まれるのか・・・・。そうか。
ならば、吾輩の命など取るに足らないこと・・・・そうだ。新しい生命ほど大切にしなければ・・・。それが、平和だ!!
「お前ら頑張れーーーー!!いっぱい産めようーーーーー!!」
「うるせぇいアインツーーーーーーー!!今、交尾の最中だ!!ムードを壊すな!!」
「ごめん・・・ちゃい」
こうもり様の交尾を邪魔してしまった。反省。反省。
吾輩はそそくさと外に出た。いつも通り心臓やぶりそうな坂を前に歩き出す。
吾輩は考える。
なぜ・・・吾輩の屋敷から外に出るとき・・・このルートしか存在しないのだろう。
ほぼ一本道。他のルートは分岐に行くまで出てこない。苦行だ。
くそ・・・。早く・・・。早く・・・誰か・・・直してくれ。
おそらく、道路建築法違反だ・・・。作っちゃいけない道路の基準があるはずだ。なんとかネクスコ気付け!!これはダメだって!!
吾輩は登り切った。膝を抱え呼吸を整える。
「旦那、よく頑張りましたね!!」
「・・・セバスチャンって・・・DTなん?」
「なんっすか?GT?ドラボンボールの話っすか?」
「・・・・・・なんでもない。そのままでいて」
間違いない。セバスチャンはDTだ!!
吾輩の眷属は汚れていない!!
≪つづく≫
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます