第76話 ぅゎ、ぁりっょぃ

 はーい! 私は今アリになってしまいましたぁぁぁぁぁ!!

 しかもょぅァリ!!

 大量の魔物達に襲われた俺は彼等に食い荒らされ、更にそのおこぼれに預かろうとやって来たちょっとフライングぎみのアリっ子達によって止めを刺された次第です。正に食っ殺。

 ははははははははははっ、アリですよアリ! もう笑うしかない。

 カジキとか可愛いレベルだったわ!

 もう異世界存亡の危機とかどうでもよくなる位困惑中。

 だってさ、アリなんだぜ。仮に俺がリ・ガイアの魔力枯渇現象の原因を究明したとして、どうやってそれを伝えるのよ?

 っていうかその前にこの身体で生き残れるの俺!?

 …………マジどうしよう。

 落ち着け、落ち着くんだ俺。

 スーハースーハー。

 よく考えたら寄生虫だった時期もあったわ。

 それに比べりゃ自分で歩けるだけマシだな。最悪別の何かに憑依するだろ。

 っつーわけでアリライフいってみよーかー!


 ◆


 森が超絶デカいです。

 魔族の時ですらデカかったというのに、アリになった今では更にデカく感じます。

 正にミクロの世界。

 でもね、漫画とか特撮とかってさ、小さくなると大抵碌な事にならなくなるよね。

 普段はなんでもない小さな生き物に襲われて死にそうになったりとかさ。

 今の子アリの姿だと普通の虫が相手でもヤバクない?

 例えば……さっきから少しずつ視界の横をモニモニうねりながら歩いてるムカデと思しき生き物に見付かったら……あ、やべ見付かった。

 ちょっと逃げるわ。全力で逃げるわ。

 逃げるくらいなら隠れてればいいだろって思った? いやいや、ここは森ですよ。そこらじゅうにいろんな生き物が居るんですよ。

 つまりストップオアダイなのです。

 森には危険が一杯!

 周囲に居る沢山の生き物が致命的な光景を繰り広げているその様は、正に食物連鎖、弱肉強食の世界なのです!!

 その言葉でお察し下さい! 詳細な説明はしたくない! グロい! 昆虫食とかありえない!!

 そんな事を言っている間にもムカデはやって来る。全力で逃げてるけどムカデ早い! さすが足が100で百足って言うだけあるわ!

 このままじゃ追いつかれる! 何か、何か対策は無いか!?

 えーっと、えーっと……そうだ、ムカデはツバに弱いって言うよな! 昔話でもそれでムカデの化け物をお侍さんが倒したって伝説が有るくらいだし! ツバか、アリのツバって言うと蟻酸だね! キャー強そう! 蟻酸といったら人間でも痛いレベルですよ!!

 でも実は蟻酸を持っていないアリの方が多いって知ってたかい? 本来アリの大半は尻尾に蜂みたいに毒針があってそれで攻撃するんだ。でも人間の生息域の一部に居るアリが蟻酸で攻撃するから日本ではアリ=蟻酸で攻撃するってイメージが浸透しているそうだ。って昔生物の先生が教えてくれたよ!!

 どうでもいい事ってこういう時に限って思い出すよね。

 という訳で喰らえ蟻酸!


 ぺっ


 ぽとっ


 …………はい撤収ーーーー!!!!


 届かねぇよ! 途中で落ちたよ!! あんなでかいムカデ相手に至近距離でツバなんて飛ばせるか!!

 つーかムカデにツバって迷信だろうが!!

 あーヤベェ! 馬鹿な事してたら更に距離を詰められた。このままじゃ本気で捕まる。

 せめて武器とか、って俺アリですよ! 武器あっても使えませんよ!

 ああー! 何か虫の足でも使える武器になるものとかないのかよ!

 魔法とかさぁ!!


 …………


 龍魔法発動!!!


 全身に魔力が奔り、俺の肉体が瞬間的に強化される!!

 ムカデに向き直った俺は全力で助走をつけて、ムカデに向かって跳躍し飛び蹴りを喰らわせた!!!

 ムカデは突然の反撃を回避する事が出来ず、顔面に俺の飛び蹴りを喰らう!

 更に俺の蹴りはムカデの全身を貫いて反対側まで飛び出す。

 それでもまだ俺の跳躍の勢いは衰えず、数m飛び続けて漸く地上に着陸する。

 俺の脚が飛行機のランディングギアの様に滑りながら地面の土を削っていき、漸く止まる。

 後ろを振り向けば、大きな穴を開けて死んだムカデの死体が転がっていた。


 …………

 そうでしたー! 俺龍魔法が使えたんでしたー!!

 いよっしゃー! コレで何とか生き残る事が出来るぞー!!


 魔法を使う史上最強のアリ! ここに爆誕!!!

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