第24話 オークション
「それでは交渉を始めましょうか。まずは鱗10枚から」
俺達は町外れの空き地で交渉を再開した。
商人の一人が店の商談室を貸そうかと言ってくれたのだが、巨大なエルダードラゴンの骨はとても入りそうに無いので断った。
多分こっちの印象を良くしようとして提案したんだろうな。
といっても俺に商売の知識は無いし、憑依してきた連中にもそんな知識は無い。
だから今回は商人達のやるように任せてみようと思う。
「鱗10枚で金貨100枚」
「鱗5枚で金貨70枚」
纏め買いで金額を多く見せようとした商人を別の承認が牽制する。
「鱗1枚で金貨30枚」
周囲の見物客からどよめきが走る。
「金貨30枚だって!? 高すぎだろう!」
「いや、レッサードラゴンの鱗が金貨2枚だ。ドラゴンの鱗が金貨5枚と考えると単純に大きさだけでもドラゴンの鱗5枚分はある。適切な価格だろう」
詳しいなモブの人。いやもしかして コイツサクラか?
一般人がドラゴンの鱗の値段とか知ってるとはとても思えない。
多分この商人に雇われた演出要員だな。
けどそれは俺に対して有効であってもライバルである商人達には逆効果なのでは無いだろうか?
「鱗3枚で金貨100!」
ドンドン値が吊りあがっていきます。
そういや昨日の勘違い男が居ないな。
「鱗一枚で金貨40!」
「「「おおー」」」
金貨40枚が出た所でそれ以上の入札が終わった。
この辺りが最高金額か。
「では鱗一枚を金貨40枚で落札とさせて頂きます」
商人達の観客が拍手をする。
「こちらが代金です」
俺は代金の入った袋を開き、金貨の数を確認する。
「確認いたしました。ではこちらの鱗からお好きなものをお選び下さい」
「自分で選んで宜しいのですか!?」
驚く商人。選択の自由があるとは思わなかったらしい。
「ええ、貴方が今回一番最初に落札してくださった方ですから」
つまり一番お金を出してくれたという事だ。
その言葉を聞いた商人達の目の色が変わる。
彼等もまた、自分で選ぶ事で一番良い鱗を手に入れたいと思ったのだろう。
入札が再会する。
「鱗4、4枚で金貨155枚!」
「では金貨155枚で落札です」
次々に落札されていく鱗達。
そして最後の入札んとなった。
「それでは本日のメイン。エルダードラゴンの尻尾の骨です」
観客が歓声を上げてテーブルの上に置かれたエルダードラゴンの骨を見つめる。
「コレ1つで様々な者が作れるでしょう。何を作るかは皆さん次第です」
俺の尻尾の骨は、一番小さな先端の骨であるにも関わらず、2mを越える巨大な骨だった。
「あの大きさならば武器でも防具でも好きな物が作れるな」
「いや、マジックアイテムの材料としても最高級の値が付くぞ」
「あれだけあれば魔法船の建材として全面に加工加工できるぞ。そんな船が出来たなら、海魔の海だって渡りきれる」
様々な職種の商人達が己の商売に役立つであろう貴龍の骨を求める。
「では入札を開始します」
「金貨500!」
イキナリ飛ばしてきたな。
「金貨1000枚!!」
「金貨1500枚!!」
「金貨2000枚!!」
最初からトップスピードでの入札なので速攻で現金払いの出来ない商人達が振り落とされて行く。
残ったのは3人の商人達だった。
内2人はさっき鱗を落札した商人だ。
まだ金があるのか。
「金貨2200枚!」
「金貨2000枚と金貨100枚相当の宝石!!」
そろそろ渋くなってまいりました。
いや、それでもかなりすごい数字なんだけどね。
商人達は半ば意地になって価格を吊り上げていく。
そして遂に……
「金貨2100枚と金貨200枚相当の宝石!!」
止めの数字が放たれる。
もはやこれ以上は払えぬと商人達は諦めの顔を見せた。
2400枚を提示した商人が勝利を確信する。
「それでは……」
「金貨1000枚と金貨2000枚相当の宝石を出そう!」
最後の最後で待ったがかかった。
だがそれを言ったのは入札に参加していた商人達ではなかった。
それを言ったのは。
「どうですかな?」
昨日の勘違い男だった。
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