にク。

 いつものバス停にて――


「好きな牛肉料理ランキング?」

 月夜がグルメ系アプリの中にあった、そんな記事を読んでいた。


「そんなの牛丼が一位でしょ! 他にないわよ、日本で毎日一億食食べられているのよ」

 そんな妄言を口にしながら、続きを読み進める。


「一〇位とか肉寿司ね~……あれ肉料理なのかしら?  九位は牛カツ。悪くないケド、揚げ物には鶏や豚のほうが合うと思うわ。八位はハンバ~ガ~。これも悪くないわ。ビ~フパティはおいし~もの!」


「七位ロ~ストビ~フ。いいわね! 牛肉のおいしさを味わうにはピッタリよ。六位しゃぶしゃぶ、五位スキヤキは肉料理なのかしら? いろんな具材を楽しめるのが売りの二品だと思う」


「四位はハンバ~グ。三位は鉄板焼き二位にステ~キ――この辺りは僅差っぽいわね。どの料理が上位と入れ替わっても不思議じゃないわ!」

 ランキングを見ながら、そんな事を言う。


「いよいよ一位ね! ま~わかってるんだケドね。ど~せ牛丼よ。国民食なのよ!」

 瞳を輝かせ『フンス』と鼻息荒くそう言う月夜。


「一位は牛――焼肉? あれ???」

 月夜が何度も確認するも、一位のところの文字『焼肉』は変わらない。


「そ、そんな……牛丼は? 国民食なのに……一日一億食……も、もしかして一億食も食べられていないのかしらっ!?」


「いまさらソコにきづくんだぁ~」

 隣でイブキがそんな事を洩らす。


「一〇位にもはいってないなんて……ランク外?」

 完全に『ぴえん』と化す月夜。


「ハっ! ち、違うわ! こ、これはみんな当たり前すぎて牛丼を上げなかっただけっ!? そ~よ、きっとそうっ! 一日二億食食べられてるんだから間違いないわっ!!」


「ふ、ふえたっ!?」


「絶対王者だからあえてランキングにいれなかったのね」

 そう納得する牛丼狂信者だった。

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