かいざ~ぜんめル。

 いつものバス停にて――


「アメリカで肉が高騰し肉のないBBQへっ!?」

 月夜がなぜかグルメ系アプリの中にあった、そんな記事を読んでいた。


「肉のないBBQ――肉のないBBQっ!!」

 あまりの衝撃に二回繰り返す月夜。


「それはBBQじゃないわ! ただの野菜焼く集まりよっ! BBQは肉があるからBBQであって肉がないBBQなんて存在しない! ウチは断固認めない! あえて言おう! それは野菜を焼いてボソボソ食べる集まりだとっ!!」

 瞳に火と灯し、そんな事を主張する月夜の隣では、


「カイザ〜ゼンメルっ⁉︎」

 イブキがそんな声をあげる。


「なにこれ? メッチャつよそぉ〜」


「いや。パンの名前よ」


「パンなの? ひっさつわざじゃなくって」

 イブキは腕を交差させヒ〜ロ〜の必殺技スタイルでそういう。


「違うわよ。オ〜ストリアやドイツの伝統的なパンよ。王冠型のね」


「やっぱりドイツかぁ〜。カッコイイひびのなまえってタイテ〜ドイツだよねぇ〜」


「パンでさえこのカッコよさ、もしイブキさんがドイツにうまれてたらすっごいカッコいいなまえついたかもねぇ〜」


「とりあえずカイザ〜ゼンメルとはつけないと思う、パンの名前だし。日本で例えるとメロンパンとか焼きそばパンとか子供の名前にしないよね」


「もっと、カッコいいなまえだよっ!」

 下校時にカイザ〜ゼンメルを買って帰ったイブキだった。

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