にくにひ。

 いつものバス停にて――


「んっふっふっふっふっふ――」

やや頬を痩けさせた月夜がそんな含み笑いをする。


「ど、どしたの?」

珍しくイブキがやや引き気味に尋ねる。


「今日よ……今日こそ……」

月夜は正に一日千秋の思いで言葉を紡ぐ。


「今日こそ――29日! 決戦の肉の日よっ‼︎」


「け、けっせんって……」


「ウチはね……今日この日のために昨日の夕食を抜いてるのよ」


「なんかスゴそ〜にいうわりのイッショクぬいただけなんだ」


「さぁ――行くわよっ!」

言うなりイブキに腕を『ガシッ!』と掴むと、


「えぇぇぇぇぇ!! ガッコ~は?」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! 肉の日は学校お休みでしょ?」


「あるから! フツ~にあるからガッコ~。ほらまわりみてよ――」

 そう言いながら制服姿で自転車通学中の男子中学生を指す。


「――って、月夜もセ~フクきてんじゃん!」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………………………」

 月夜がこの世の終わり脳様な声を上げながら、その場に倒れる!


「終わった…………このまま授業うけて…………数時間後だ…………なん…………て……がく」

 顔に陰縁をつけつつ、


「……ウチの墓前には肉100人前を…………」

 最後の力を振り絞ってそう遺言のようなモノを残そうとする月夜の口にカロリ~メイトを放り込むイブキだった。

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