ばれんたいん。

 イブキの家のキッチンにて――


「はい!――とゆ~ワケで、これからバレンタインにむけてチョコをつくりたいとおもいます!」

 エプロン姿のまま『しゅた!』と片手を挙げながら宣言するイブキ。


「ど~ゆ~ワケよ。一体」

 こちらもエプロン姿で長い髪が焦げたり、チョコについたりしないように後頭部に結い上げてる最中だ。


「え~! いっちゃっていいの~?」

 イブキが手の平で口元を隠しながら『にしししし』と笑う。


「月夜がアルバイトさきのオトコのヒトあげるためって――」


「ちょ――そ、そ~ゆ~じゃないからっ!!」

 髪を結上げる手を止め、顔を真っ赤にさせながらそう否定する月夜。


「ちょっと約束しちゃっただけよっ! こ、交換条件なんだからっ!!」


「はいはい。そ~ゆ~コトにしときましょうか~」


「まったく……変な勘ぐりやめてよね」

 と、言いながら温めて置いた鍋にチョコをいれて溶かし始める。キッチンの中になんともいえない甘い香りが立ち込め――


「はい! これがカタだよ」

 溶かしたチョコを流し込む型を渡すイブキ。


「ありがと――って、ハ~ト型じゃん!」

 と、言いつつも型に流し込む月夜。


「はい! つぎはホワイトチョコでジをかいて『アイラヴュ~』だよ」


「なんで、ちょっと良い発音になってんのよっ!」

 言いつつもその通りに書く月夜。


「――んしょ、んしょ。ケ~キトレ~をしいてと――」

 イブキが手際よく箱を組み立て、チョコをプレゼント用に少し豪奢になってるケ~キトレ~の上にのっける。


「さぁ――あとはラッピングだよ!」


「うぅ……結構、めんどいなぁ……」

 不平を口にしつつも箱を包む紙を選び、包み始める。


「――ねね」

 ラッピング中の月夜に膝歩きしながら近寄っていく声をかけるイブキ。


「コ~カンジョ~ケンってなに? もしかして――チュ~? チュ~すんの月夜! いいな~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~はじめてのチュ~はチョコのあじかぁ~……」


「ん~……」

 それをめんどくさそうにあしらいながら、


「『おそ〇さん』のグッズ当たったってゆ~から、それ頂戴って言ってら、じゃバレンタインにチョコくれって言われた」

 今年もロマンスの欠片もないバレンタインだった。

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