ゆめか……まぼろしか……

「う〜ん……だ〜くぱんしゃ〜……あと……あと……3びき……むにゃむにゃ……」

イブキがゲ〜ム画面の映しだされたパソコンディスプレイの前でゲ〜ムコントロ〜ラ〜を握ったまま、キ〜ボ〜ドに右頬をつけて寝落ちしていた。

たまにモゾモゾと身体を動かすために画面のチャットウィンドウには意味不明の文字が羅列していた。


そして――それは夢か現か――


『ん? あれ?』

いつの間にか狭い個室――周囲は鉄製の壁に囲まれ――狭さを誤魔化すためにか一角には大きな鏡が備え付けられていた。


『えれべ〜た〜?』

 そこはどこかのエレベ~タ~の中だった。どこかの階についたのか『チン』という音ともに月夜がはいってきた。

 バイト終わりなのか? いつもの制服姿ではなくエプロンドレスのような恰好だった。


「ふ~……」

 疲労の色を張り付かせた表情でタメ息をつく。

 そのままイブキの事を全く気にせずにエレベ~タ~へと乗り込むと、


「う~……ウチってそんなにキツそ~な印象与えるかな~……」

 備え付けの大型、鏡の前で腰を折って顔を近づけ自身の表情を見ながら呟く。


『あれ? イブキさん――カガミにうつってない!?』

 鏡に映らない自身に困惑しながらも、


『お~! これはきっとユメかユ~タイリダツとかいうアレだな』

 ポンっと手の平を叩いて納得するイブキ。


「う~ん……」

 その間にも月夜は鏡にうつった顔を見ながら口角を上げて笑顔の練習をしたりしていた。


 チンという音とともに鏡から顔を離す月夜。


 しかし、止まった階には誰も待っておらず。


「もう……なんなのよ……」

 悪態をつきながら『閉』のボタンを神速で連打する。

 扉が閉まった後に――


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――あだだだだだだだだだだだだだだだだだだ――!!」

 物凄い勢いで他の階のボタンを押した後に2連打して取り消すという完全に意味のない行動する月夜。


『月夜って……ひとりのときはこんなイミのないコトしてたんだ……』


「――だだだだだだだだだだだだだだだだだだ――おわったぁぁァァ!!!」

 そういって満足気な表情を浮かべる月夜の背後に『月夜百裂拳!』という文字を見た気がした!


 その時――


 不用意に近づいたイブキを月夜の引いた拳がかすめる! その瞬間、自身が霧散するのを感じた!


 そして――


「……ん」

 目をこすりながら起きたイブキはスマホを手に、


イブキ『月夜いまなにしてんの?』19:07


月夜『いまアルバイト終わって着替えてるトコ』19:08


イブキ『月夜ひゃくれつ――』

 と、打ちかけてイブキは先ほどの事は夢だと思う事にし、文字を打ち直す

イブキ『おつかれさま』19:10


月夜『ん。ありがと』19:10

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