トサカはえちゃう。

 いつものバス停にて――


「ふっふっふっふっふっふっふっ――」

 月夜がスマホ片手に不敵な笑みと含み笑いし始める。


「ど、どしたの? 月夜」

 その様子に戸惑いながら声をかけるイブキ。


「今年もやってきたわよっ!」

 握りこぶしを天に高々と掲げ興奮を抑えきれずに叫ぶ月夜。


「ふえ? な、なにが?」

 月夜の異次元的な高テンションの意味も理由もわからずキョトンとしているイブキ。


「あの人の誕生日よ」


「あのヒト?」

 イブキの脳内で様々な有名人,偉人の名前が浮かんだ後、


「だれ?」

 結局わからずに聞き返す。


「カ~ネル・サンダ~スの誕生日よ」


「へェ~」

 と、さして興味のなさそな生返事をするイブキに構わず続ける月夜。


「それでね――9月9日はチキンたべほ~だいなんだってっ! スゴイ? スゴイよね!! スゴイでしょ!!!」


「う~……きょねんもそんなさそいにのっていったらアタマにトサカがはえてくんじゃないかってぐらいいっぱいたべさせられたキオクが……」


「もちろん行くよね? 行くでしょ! 行きたいでしょ!! 行かなきゃでしょ!!!」


「ことしこそトサカはえちゃうかも……」


「なんと今年はポテトもジュ~スも飲みほ~だい! さらにスィ~ツ1個付きなんだからっ!!」


「そっか……イブキさんあんましたべられないとおもうケドつきあうよ……」


「大丈夫、大丈夫。ウチがちゃんと押し込んであげるから」

 笑顔でコワイ事をいう月夜の顔を見ながら今年は本当にトサカ生えるかもと思ったイブキだった。

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