おしごと。
いつものバス停にて――
「も〜すぐ夏かぁ〜アルバイト増やそ〜かな?」
月夜が空を見つめながらポツリとそんな事を漏らす。
「なつ? なつになんかあるの?」
「う、うん。まあ……ち、ちょっとね……」
「なになに? あたらしいミズギとか? なつもののフクとか?」
「う〜……ま、まあ、そんなトコ……新作よ新作」
「ヘェ〜。あっ! こんなおしごとあるよ」
そういってイブキの差し出したスマホ画面には――
「へぇ、どれどれ」
月夜がスマホを受け取ると内容を確認しはじめる。
『ペンギンと氷山に囲まれたほのぼのとした職場です』
「ペンギン? なにこれ水族館とか?」
珍妙な誘い文句に疑問符を浮かべる月夜。
「なんかユ~ビンのはいたつのオシゴトみたいだよ」
「ふ~ん……」
業種にはとくにこだわりがないのか、そう流して続きを読み始める。
「もしやるならペンギンのガゾ~おくってね」
「いやいやいやいやいやいやいやいや――これ場所、南極だしっ!? 健康で氷の上で重い荷物を運べる、マイナス5度の環境でもヘッチャラな人、一ヶ月シャワ~浴びなくてもいい人で、その環境の3人と共存でき、さらにもっと臭い2000羽のペンギンと暮らせる事――って、ムリ!」
「え~! 月夜ならイケるよっ!!」
イブキは両手で握り拳をつくって力説する。
「いや! ムリ!!」
と、キッパリ拒否する月夜になぜか落胆するイブキ。
「えぇ~……ペンギンのガゾ~ほしっかたな~……」
「自分でやれば?」
「ん~……イブキさんセンサイだし、ムリかな~オフロはいらないとねれないからいちにちもいられないとおもう」
「……なんでウチは平気だと思ったんだ?」
そう問い詰める月夜に曖昧な笑みでこたえるイブキだった。
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