◇招集メンバー
ロウソクの火が消えるように視線は消えた。
ついさっきまでウザったいくらいわたしを見ていた視線が突然。
「......なんっっだよクソ、誰だったんだ?」
見たりそらしたり消えたり、遊ばれた気分になったわたしは盛大に舌打ちしつつ高度を下げ本来の目的地へ足を近付け無事着地する。
炎塵の女帝と戦闘した街にして崩壊率が相当低いが、フライパンの上かと疑いたくなるような熱が下からジリジリと昇る。
「エミちゃ、何があったの?」
「ホントじゃぞ! 見られとるって誰にじゃ?」
駆け寄ってくるワタポと、周囲へ看破を広げ索敵してるであろうキューレへわたしは、
「わかんねーんだよ......でももう消えた」
視線が完全に消滅した事をざっくり伝え、吹き抜けになっている通路の先を見る。
テラスの奥は円形に広がり、そこにはアグニが直接選んだであろう面々が既に。
「......ま、全員知った顔だわな」
今イフリー大陸に集まっている面々はほぼ全員知っている。その中から神様のおめめに
「おっせぇぞテメェ! 青髪の魔女ォ!」
「ア? ......あ? 誰お前?」
いた、知らないヤツ。
すげぇ怒ってるし声でかいし、めんどくさそうなヤツが。
そいつの近くにいる数名も、わたしは多分知らない。
「ハッハッハッ! コイツはこれでもアンタより上の冒険者だよエミリオ」
大笑いを添えて発言したのは海賊船長のゼリー。あれでも凄腕っぽい冒険者でガチモンの海賊ではない......と思うがその辺りは詳しくは知らない。
他にもケセラセやリトルクレアと、外界から戻った
わたしがよく知っている面々は、キューレとワタポ達【フェアリーパンプキン】やカイト達、しし屋にリピナ、そしてシルキ勢からはモモ、あるふぁ、白蛇の三人。
同期......と言えばいいのか知らないが、リピナの所からは数名しか呼ばれていないらしく、同期冒険者が圧倒的に少ない。
「アスランや烈風は呼ばれてねーんだな、あと猫ズも」
呟くように言いつつ
よくよく見たら上の世代は知らねぇ連中が多かったが、なんというか......あんな奴等を呼ぶなら猫人族の手を借りた方が絶対に戦力になる。そう思えるくらい、経験値が低そうな連中がいる。
「どうせ上のギルメンでしょう。下手につっかからないでよエミリオ」
「へいへい」
小声で釘を刺してくる
見知らぬ
「まだ来てない者もいるが、時間だ」
お偉いアグニ様は側近の褐色美女へ飲み物を配膳させ、自分だけ王様っぽいイスに深く座り偉そうな姿勢で本題へ深く突っ込む。
「まず、6名から8名を地殻へ。残りはこの街で拠点に使えそうな場所を選択し、そこで魔結晶塔の指揮を取れ。俺様は神族という立場ゆえ直接関与できんのだが───こうして茶を共にするために声をかけ、茶会の話題がたまたま今の現状についてだったとなれば問題あるまい」
バリバリ今の現状の話題をお前から持ち出しただろ、という言葉が喉まで上ってきたが強引に押し戻す事に成功。さっさと話を進めてデザリアに拠点を作ってもらわなければ乾燥して死んでしまう。
「......いいかな?」
沈黙が炙られる中で声を上げたのはノールリクス。この仕切りたがり屋め、という言葉も今は干乾び死を避けるために飲み込む。
他のメンバーも下手にツッコミやヤジを飛ばさず黙っているのはそういう事だろう。実際仕切りが決まらなければ話は進まないし、アグニは神気取りモードだ。
「地殻のメンバーを決め、残りは魔結晶メンバーという事で進めるが───まず、地殻ではヴォルフフェンリルの鎮静が必須、少し厄介な状況ならば炎狼王の鎮静、最悪は四大イフリートの説得だ」
「............いいか?」
ここでわたしは律儀に挙手し、発言許可を貰う。
「なんだい? エミリオ」
「ヴォルフフェンリルってのはどっかで聞いた事あるけど、全然知らん。んでエンロウオウ? ってのは初耳。そしてイフリートって本当にいんの?」
誰ひとり質問しないのでわたしが代表として質問すると、やはりみんな気になっていたらしくノールリクスの方へ注目し答えをまった。
が、
「それについては専門がいる。頼めるかい? シンディ」
ご指名を受けたシンディは───ドメイライト騎士団の残念女だ。確かに騎士団の自室は変な研究所や難しい本の山でくっそ散らかっていたし、そういう話題には強そうだ。
「
「......そうか、それは
......? なんだこの二人。
なんだ、この、二人。
シンディは口癖のように残念残念言ってるイメージがある。でも思い出してみるとノールリクスも時々不必要なタイミングで残念って言葉を言っていた───気もしなくもなくもない。
そして今のシンディの態度。これは何かある。
「なぁワタポ、あの二人ってなんだ?」
小声で元騎士のワタポへ情報提供を促すも、渋い表情だけで言葉は無かった。
「ならば僕がそのバトンを受け取ってもいいかな? いいよね? という事でクレアちゃん。お願いできるかな?」
名乗り出たケセラセは強引に場の仕切りを受け取った直後にリトルクレアへとそれを投げ飛ばし、
「......貴方のそういう所は尊敬しちゃうわね。ケセラセ」
全く尊敬していない視線で受け取り、ヴォルフフェンリル、エンロウオウ、イフリート、についての情報を語る。
わたし達はリトルクレアの声に耳を傾け、集中した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます