【アンラヴェル】
◇一夜明け
昨夜バリアリバルで起こった出来事はすぐに広まり、街中その噂話で持ちきりとなっていた。
皇位情報屋のキューレも情報収集する事を諦める───必要ない───程に。
「全っっっく、なーにをやっとんのじゃ! あの
珍しく声を荒立てる情報屋へ悪魔はお茶を出し、
「バカとアホが別でよかっただろう? バカとアホを兼ね備えている飛び切りのヤツがいたら......集会場は建物ごと吹き飛んでいたかも知れない」
悪魔ナナミの言葉にキューレは「違いないのぉ」と頷く。唯一の救いが “バカとアホを兼ね備えた飛び切りのヤツ” が
喧嘩騒動の時点で問題アリだが、被害的には集会場より幾分もマシ。タダで済んだワケではないが、現実的な弁償金額と謝罪で済んだ。
「エミリオはまぁ......わかります。絶対絡むと思ってましたよ......エミリオですし。しかし、カイトとトウヤが喧嘩騒動を起こすだなんて驚きました」
ウンディー大陸の女王セツカは、クチではそう言うものの、どこか楽しそうな表情を浮かべていた。女王としてその表情はどうなんだ? と2人は思うも、冒険者セッカとして見れば気持ちはわからなくもない。
なにせ今街中で噂になっているのが「
世代分けすればセツカ───セッカは
土地柄......と表現していいのかは不明だが、そういうものだろう。ここがウンディーではなくノムーでバリアリバルではなくドメイライトならば、笑えもしない大事件になっているだろう。
生意気世代と問題児世代。どちらが比較的にまともなのかは......考えるだけ無駄だろう。
「それより、
「それは
「何かあったんじゃろな。ウチも気になっとるんじゃが、そこをどうにかするのはウチの役目じゃないのじゃ。まぁゼリーと喧嘩した事で吹っ切れとるかも知れんが......むしろゼリーはウチらの言う以前のエミリオを見たくて喧嘩売ったかもしれんし、そういう点じゃと今日エミリオに会うのが楽しみじゃ」
今日、ユニオンには
◆
ギルドメンバー全員で訪れるには人数が多いため許容範囲内で、という事になっている。
【ジルディア】はマスターの【ノールリクス】とサブマスターの【ノレッジ】が出席。
【アンティルエタニティ】はマスターの【クレア】とサブマスターの【ヴィアンネ】が。
【アスクレピオス】はマスターの【ケセラセ】のみ。
世代的にはトリプルと同じ
勿論、皇位情報屋の【キューレ】も。
しかし会議はまだ始まらない。
ユニオンの外には各ギルドの冒険者が他の冒険者達を威圧するように集まっている現状をどうにかする事は出来ず、面倒事が起こるまでに会議をサクサク終わらせたいと願う、ウンディー大陸の女王【セツカ】だが、おそらく外より中の方が面倒事発生率は高いだろう。
なんせ今日は───
「───へぇ」
「......」
「おや? 珍しいね」
3名のギルマスがその
「悪い悪い、遅れた。昨日の夜中に
前髪を上げた黒髪、装備も黒を基調としつつ頼り甲斐のある腕は肩から手首まで晒されており、グローブを装備している男性。
「遅刻じゃないよ、久しぶり。相変わらずグローブをしているのに袖はないんだねぇ! キミは!」
ケセラセは早速と言わんばかりに袖をいじるも、男性は「格好いいだろ?」と挨拶を返し椅子に座る。
「?......あぁ、悪い悪い! 挨拶をしていなかったな。俺は【ゴッドリヴレ】、気楽にリヴレって呼んでくれ。冒険者ランクは
頼ってくれだの助かるだの言う男性は右拳で左胸を軽く叩き、笑顔で挨拶する【ゴッドリヴレ】。上の世代に対して
無所属の
人間的にも人気高い凄腕冒険者の登場はトリプル達にとっても予想外であり、指摘されると面倒なのでクレアは威圧的だった雰囲気を静めた。
「......それよりゼリーは? 久しぶりにみんなに会えると思ってたけど───?」
ゴッドリヴレがトリプル達を見て、キャプテンゼリーの不在を気にして発言すると、何やらユニオンの廊下から騒がしい声と共に気配が近付く。
大扉が豪快に開かれ、そこに立っていたのは長身の男性。
「ハァ、ハァ、遅れてすまない、」
息を切らす男性は左腕で青髪の魔女も担ぎ、右腕では海賊船長を抱きかかえ、ユニオンに登場した。
◆
最高ランク、
だが、今の【バリアリバル】はここ近年にない凄み───盛り上がりに包まれている。
その理由は間違いなく
冒険者見たさに何時間もかけてこの街に来た者もいる。
そこに輪をかけるように、話題が尽きない
ウンディー大陸が騒がしくも賑わしいくなるのは必然と言えるだろう。
「わ......すご......うっわぁ......」
「お祭りでもやってるのかな?」
「お祭り......とは思えないね」
「普通に働いてるだけに見えるけど、凄い盛り上がりだね」
見慣れない格好をした連中が【ウンディーポート】に上陸し、その中の4名が広く活気つく港街を見て眼を丸くしていた。
「みんな
年寄りめいた口調の
「む? なんじゃアレなんじゃあの串焼き! ひっつー
「うにゅ〜......人が多くて
「みんみん! あれ見て! 沢山氷が入ってる氷風呂がある! 入っていいのかな? 魚入ってるけど!」
「うわ、ちょ、何この鳥! 私は落ちてた魚を見ただけなのに、痛い痛い痛い! ゴリ助けて!」
「みそ仲間だと思われてるんじゃない? その鳥の眼元にも
活気ある港街に負けない騒がしさで進むに進めない異国の連中。
「これが量産品なのか? いくつか買ってみるか」
「へぇ......鉄は
ウンディーポートに上陸したシルキ大陸の者達。国の状況が状況だったため重く鋭い印象を纏っていた者もいたが、今のシルキが、今の雰囲気が本来のシルキ民なのだろう。
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