◇456 -盲目-1
わたし達が貸し切りにしている京の宿屋に、夜楼華攻略隊が集まっていた。
メンバーは、天下無双の天才魔女エミリオ様と、他4名。
「四鬼は二手に分かれてもう出発したのじゃ。他の者も行ったぞエミリオ」
療狸はリピナの治癒術を浴びながら、ハロルドとプーのパテが既に出発した事を教えてくれた。
「療狸って治癒系じゃないの? 私も上でししの手伝いしたいんだけど」
「良いじゃろ〜減るモンじゃないし良いじゃろ〜」
「減るわよ! 私の魔力が減るわよ!」
ご機嫌ナナメ風なリピナの発言で、しし屋が残っている事はわかった。って事は怪我したら京に戻ればいいな。
「よし、チームエミリオも出発───ってか何でリピナ無事なん!? 人間とか毒の餌食じゃねーの!?」
当たり前のように療狸を治療していたので全然気にもしていなかったが、サクラの毒は人間とアヤカシ? にクリティカルだったハズだ......もしや、リピナは人間ではないのか!?
「今はまだ無事、かしらね? これの
凄腕の治癒術師は新たな武器を入手したらしく、その武器が思わぬ働きを見せたと......武器が所有者の命令なしに
「リピナ、お前サクラの毒食らった時、その武器に何か願ったり祈ったりしたか?」
「あら、よく分かったわね。恥ずかしい話だけど武器を握って、助けてって願ったわ。ヒーラーが最初に倒れるワケにはいかないし、倒れたとしてもすぐ起きなきゃみんなを診られない........例え助けられないとしても、何も出来ずただ見ているだけなんて、私はもう嫌」
「───!......、、、」
リピナの言葉に微かな反応を見せた妖怪クソネミだったが、すぐにまた表情を沈めた。
クソネミも気になると言えば気になるが、リピナの件もわたしの中で納得出来たしそろそろ出発したい。
「んし、ここはリピナに任せてチームエミリオ! いざ───」
気合いの声でメンバーの鼓舞し、出発! という時にわたしのフォンが鳴った。相手は───連結通話でハロルドとプーだ。
「おい今めっさいいトコなんだけど」
『エミリオ、療狸はいる?』
「あん? いるけど......スピーカーにするわ」
ハロルドの声にわたしは答え、周囲の者も巻き込む通話モード、スピーカーをタップしフォンを机に置く。
『療狸、こっちは避難も始まって、夕方前には問題なく全員が
『ボク達もバッチリ! 何かみんな話を聞いてくれたから夕方前には全員
「うむ、それじゃったら問題ないのぉ。お前さん等は今、えーっと、外でいう結界マテリアと同じ効果じゃから、エミリオが明日の夜明けまでに夜楼華をどうにかしてくれれば解決じゃ」
「え、夜明けまで!?」
ここでわたしエミリオさん、初耳な時限クエに思わず声が出た。
「おい、俺は何も聞いてないぞ? 確りしろよ......冒険者ってのはそういう説明も出来ない無能か?」
「私も聞いてないですよ? エミーちゃん」
「うむ、俺も夜明けまでって聞いてないな」
「私も。エミーは一緒に来いしか言わなかったよね?」
おいおいお前ら! ここは何も言わず黙ってた方がいいってわかんないのか!? そんな事言ったら───
『エミリオ本当頼むわよ? 失敗したら全員死ぬレベルなのよ? もし失敗したら死んでも殺すから』
『エミちゃんに超重要な事任せるのは狙って失敗するようなものだよ〜.......大丈夫?』
ほらみろ! この耳と狐はすぐこうだ!
「余裕余裕、エミリオさんだぞ? 本気出せば秒クリだぜ。そっちこそ失敗すんなよ?」
くっそ、そもそも療狸が時限について言わなかったのが悪いだろ! これであれか? 言ったじゃろ〜ぽこぽこりん! とか言えばわたしが悪者だろ? そうだろ?
「おっかしいのぉ〜、時間についても言ったんじゃがのぉ〜」
ほらみろ! ふざっけんな! クソ狸!
『おいババー! テメーちゃんとやれよ? 迷惑かけんなよ?』
「その声はクソ天使みょんか!? お前もちゃんとやれよ? ふざけた事したら首に縄つけて引き摺り回すからな!? つーか切るわこっちも暇じゃねーんだ」
わたしは強引な通話を終わらせて、療狸へ声を荒立てる。
「おい狸ふざけんなよ! わたしは100パー 時間について聞いてねーぞ!?」
「夜明けまでじゃ。頑張れよエミリオ」
「それは聞いわボケ狸!!」
「なんじゃ!? 聞いたんじゃったらなぜ皆に伝えん!? そうやって人のせいにしとると成長せんぞ!」
「だぁー!? 何言い出してんだクソポコが!」
と、騒ぎ散らかしていると宿屋2階へ続く階段からひとり降りてきた。
「何を騒いでるんだエミー」
「あァん? いや療狸が───え? ヘソ、お前大丈夫なのか!?」
2階から現れたのはアラベスクのような模様と狼の耳と尻尾を持つ───人間のカイト。
楼華島でモズの攻撃を受けた上に夜楼華の毒の対象となっていたハズのカイトことヘソが起きていた。
「大丈夫だ。俺以外のメンバーも一応起きてるが、あっちは大丈夫そうにない」
他のメンバーも起きてる、という言葉にわたしより先に反応したのは眠喰のすいみん。イスを倒す程勢いよく立ち上がるもヘソが眠喰を見て首を降った事で2階へ駆け上がるまではいかなかった。
「ししちゃんの話だと、俺は特種らしい。詳しく診てもらいなってししちゃんに言われて、下に神様がいるとか何とかで降りてきたらエミーが怒ってたからさ」
「.......ふむふむ、しし とはあの茸娘じゃの?」
噂の神様、療狸がリピナに怒られながらも酒瓶を抱き、ヘソに問う。ヘソは頷き療狸に神様か訪ね、療狸も頷く───お前は神様ではないだろ。
「楼華の毒は人間に反応する。アヤカシも例外なくのぉ。それだけじゃのぉて、
「しし屋はキノコだからだろ?」
「エミー悪い、今はちょっと黙っててくれ」
いやこっちも時間ねーんだけど? と思いつつ、黙る。話が早く終わればヘソも是非パテにほしい逸材だ。
「......ふむふむ、お前さんはアレじゃの、人間じゃが一度人間から外れたのぉ? そしてその余韻が残っとる。それが今回ばかりは良い働きをしたって所じゃわ。夜楼華の毒に対して余韻が活性化し、抗体が出来たと言う所じゃの」
「なるほどな......ししちゃんはどうして無事なんだ? 帽子の中の小人みたいな人達は俺達に比べれば軽いが、まだ調子悪そうだったぞ?」
「小人? それはわからんが小人も人間に近い種じゃしのぉ。ししが無事なのは簡単な話じゃよ。猫人族は人寄りの猫じゃが、ししは何か寄りの人じゃからじゃ」
「......? 詳しくわからないけど、まぁ無事ならいい。それより───その酒はどこで手に入れた?」
ヘソは療狸が持つ酒瓶に反応した。酒好きだとだっぷーからは聞いていたが、まさか今この状況で酒飲みたい病になったのか?
「これは供物じゃよ〜ワラワはこう見えて一応、大神族、神様みたいな存在じゃ。盲目が持ってきてくれたイフリー大陸の酒じゃよ」
「盲目........その盲目さんは今どこに?」
「さぁのぉ? 気になるんかえ?」
「.......その酒は、俺の故郷の酒なんだ。大した酒でもないし、それより美味い酒は探さなくても沢山ある。神様に供えるにしては安すぎる酒だけど、俺も多分それを選ぶ......それを選んだヤツに俺は会ってみたい」
「うむ。近う寄れ、占ってやるのじゃ」
でた、でたでた療狸の詐欺占い! クソすぎて時間の無駄占い!
「..........ほぉ、こりゃまた......うむうむ」
「何を占ったんだ?」
「エミリオと一緒に行くと良いぞ。きっと盲目に会える」
「───!? その占いで盲目は......盲目の事は」
「それはそこの華や龍が知っとると思うぞ? さて、時間は限られとる。夜明けまでに夜楼華をどうにかするため、お主達は楼華島へ行くのじゃ!」
なーにが時間限られとる、じゃ! お前がちゃんとその事話してればわたしも急いだっつーの。
「んし、ヘソも一緒に来い。楼華島いくぞ」
空間魔法を詠唱しつつ、ヘソの顔を見ると、何か思い詰めたような、戸惑っているような、そんな顔をしていた。
盲目ってヤツはわたしも気になるが───そういうのも全部、楼華島についてからだ。
「さぁ───飛ばしていくぜ!」
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