◇444 -オロチ-
チーム エミリオがモズと遭遇した頃、チーム ひぃたろ も妖魔と呼ばれるモンスターと遭遇していた。般若のような面と青白の甲冑、大太刀を持つ幻魔に。
「なによコイツ」
「鬼みたいな仮面だね?」
ひぃたろとプンプンは般若ブショーを前にしても焦りはなく、武器を構える。
マナの性質も把握───根底にあるマナの質が人間である事も把握───した上で戦闘する姿勢を見せる2人。
すると、白蛇が一歩進み、
「アイツは妖魔のオロチだ。鬼の連中は聞いた事あるだろ?」
対象の名前をクチにした。妖魔 オロチ。エミリオ達が出会った妖魔と同じく巨体を持つ人型、ブショーモンスター。朧げな眼光も赤紫色で一致する。
「アレがオロチなのか?」
「人を喰い、鬼を喰い、楼華結晶まで喰らった人間だよね?」
「正確には、妖魔に一歩届かなかった存在、ですがね。
四鬼の
「やめとけ、アイツを倒すのは無理だ」
そんなウンディー勢を白蛇が止める。
「無理? にゃんで無理にゃんだ?」
「夜楼華が魂を放置していて、この島に魂が集まる。アイツらは魂を餌にしてる化物だ。倒した所でオロチの魂が別の魂を喰って蘇るだけだ」
白蛇は過去にあのオロチを討伐した事があった。割に合わない仕事を受けた、と後悔したものの確り仕事は完遂───オロチを討伐───し、報酬を貰った。その後オロチは魂を喰らい蘇生───リポップ───した。
元は人間とはいえ、ここまでモンスター化してしまえばそれはもう立派なモンスターでしかない。リポップもすればドロップもあり、言語も人情も失う。
「蘇るって、アレを倒した事あるのかよ......凄いな」
「ね! 凄いねえ! 私は出来れば戦いたくないよお!」
「私もノコノコ逃げるに一票!」
「同感、あんな見るからにバケモノと戦って勝ったアンタがバケモノに思えてくるわ」
「とにかくどうするんじゃ? 逃げるなら速い方がいいのじゃ」
「逃げましょうすぐに逃げましょう! わちきは痛いの嫌です! 戦えば絶対怪我しますし、そもそもわちき戦闘が嫌いなんです!」
ジュジュ、だっぷー、しし、リピナ、キューレ、枕返しの妖怪わちき は退却推し。白蛇も無意味だと言い逃げる事を推す。ひぃたろとプンプンはそれを聞き入れ、四鬼も同感と頷く。
「逃げるにしても何処へ逃げる?」
「それはそっちがエスコートしてほしいなぁ。私達この大陸自体初心者なんだしさ」
烈風とララも退却には賛成だが、退路に悩んでいた。するとオロチは声を唸らせ太刀を顔の横で構える。突き系のモーションから一気に地面を蹴り、一点集中の攻撃を繰り出した。狙いは白蛇。
「チッ、俺かよ」
中々の速度を持つ突きを白蛇は、相手の太刀を叩き軌道を反らした。白蛇が使っている量産品のカタナは今の一撃で刃に亀裂が走り簡単に破損するも無言でカタナを見詰め、適当に投げ捨てた。
「俺がアイツを黙らせてる間に退路決めとけよ」
軽量防具と必要以上にも思える武器で固める白蛇だったが、今の行動で一同は理解した。白蛇にとって武器は武器でしかなく消耗品。
銘に拘らず最低限武器として殺傷力があれば他は必要ない、と言わんばかりの行動と武装。次に手を伸ばしたのは量産品のクナイ。これも急所に深く刺されば命を奪える代物であり、安価で簡単に手に入る武器。
妖魔と呼ばれる異変種を相手に白蛇は単独で時間稼ぎを行う。持ち前の勘に傭兵として得た経験値が上乗せされ、反応、判断、対応が並の冒険者より遥に高い。小柄な体格を活かしたスピーディかつアクティブな戦闘スタイルで巨体のブショーオロチを翻弄し、確実に叩ける隙へ余す事なくクナイを見舞う。
「アイツ凄いニャ......空中で軌道変えてるニャ」
「ありゃ空中で空気を蹴ってるんだ。もっと言えば空気を足場にしてるって所か......並の努力じゃああはなれねぇよ」
「空気を足場に? そんな事可能なの?」
「不可能じゃないよ、ボクも足に雷を溜めて空中で破裂させて移動したりするもん! ただ......あの人のは風纏いとかじゃないよね」
鬼猫と四鬼の脳筋、妖精南瓜の戦闘狂が白蛇の動きに感心していると、オロチが悲鳴をあげる。鎧兜の隙間───首や手首などには無数のクナイが突き刺さり、最終的には朧気に燃える両眼をクナイが潰す。
「───退路は?」
息切れひとつせず、あっさりとオロチを黙らせ戻った白蛇。数分程度の時間を稼ぐために使ったクナイの数は約30本。それでもまだ腰周りに吊るした武装は心強ささえ感じる。
「......こっちに
いままで黙っていた華組の雪女スノウが苦しそうな声で退路案を出す。よく見ると妖華モモも苦しそうにしていた。
「どったの!? どこ痛いの!?」
「怪我? 診せて」
キノコ帽子のしし、治癒術師であり医師のリピナが2人を心配するも星熊と金熊が2人を抱きあげる。突然抱きあげられるも拒む気力もないほど苦しんでいる華組。鬼の頭脳と謳われる八瀬が指揮をとり、スノウが指差した先を退路に選び走る。
「リピナ、2人はどうなの?」
走りながら2人へ触れたリピナへ、ひぃたろが容態を訪ねる。
「......わからない」
「わからない? どういう事だ?」
今度はジュジュがリピナの答えに対し質問を返す。
「怪我でも病気でも、状態異常でもないのよ......別の何かが発生していて、2人を苦しめてる。詳しく調べたいから速く
進む歩幅と共に気持ちも足早になるリピナ。
彼女でも見抜けない症状というものが存在している事に、ウンディー組は顔を曇らせつつも今は社へ急いだ。
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