◇433 -収束-3
華と鬼が
「俺も力を貸す。強引な方法ではなく、先を見通したやり方でシルキを変えたい気持ちは同じ......俺にも力を貸してほしい」
龍組の烈風はすぐに華と鬼の会話へ参加する。所属していた組は違えども、求める答え、考えは華寄りだった烈風。龍が思い切った強行手段に出なかったのは烈風が何度もヌエや大名に抗議していたからであり、そのせいで停滞するように状況解決が遅れたと何度も龍兵に言われてきた。それでも烈風は強引なやり方を望まず、別の何かを求めて外───ウンディー大陸へ冒険者として入り、様々なモノを冒険者として見て学び、シルキを救う方法を考えていた。
しかし時間は待ってくれず、ついに夜楼華が全てを拒んだとの報告が入り、烈風はシルキへ戻った。悪化する状況、最悪へ進むシルキ。そんな時舞い込んできた対話のチャンスに烈風は華や鬼の本心とも言える意見を聞き、今烈風は「力を貸してほしい」と言い頭を下げた。
離れた位置からそれらのやり取りを見ていたウンディーの冒険者陣は、お互いがお互いを頼り頭を下げているシルキ陣に不思議な感覚を覚える。
目的が同じだというのに頭を下げてお願いをする。目的が同じなら一緒に頑張ろう、ではなく、目的が同じなら一緒にお願いします、のスタイルはウンディー勢にとっては珍しい。
「シルキってみんなああニャのか?」
「ああ、とは?」
猫人族の隻眼、一見鬼角のような耳を持つ るーは単眼妖怪ひっつーへ質問した。ああ と言われて少し困った様子のひっつーをフォローするように千秋が答える。
「そうですね、シルキの方々は変に上へ立とうという姿勢はないです。常に相手を見て考え、行動や発言をしていますね」
「にゃんかそれ疲れそうだニャ」
「遠回りでは? と思う事もありますが、今のような場面、目的が一致している場面で協力を要請する際、頭を下げてお願い出来るシルキの方々は凄いと思いますよ」
これを聞いていた面々の中でキノコ帽子がすぐ同調する。
「そうだね、いくら目的が同じでもあんな風にお願いされると頑張ろう! って思えちゃうし、こっちもよろしくお願いします。って思えちゃうし、良き良きな事だと思う」
「そうですよね! 相手を思う気持ちが少し、ほんの少しだけでもイフリー民にあれば違ったのかも知れませんね......」
千秋の極小の呟きを聞いてしまったカイトは狼耳をピクリと揺らすも、それ以上は何もしなかった。
「なぁこっちも協力する感じでいいの?」
天使みよは不機嫌そうにウンディー勢へ問い掛けるも、正直ウンディー勢は国というものに関わる気はない。だが、
「俺は協力してもいいと思うぞ。いや、むしろ協力すべきではないか? どう思う情報屋さん」
「うむ、ウチも協力すべきじゃと思うぞ! その方が色々都合も良さそうじゃし」
皇位を持つジュジュとキューレは協力に賛成。この2人がそう言うという事は、何かプラスがあるという事だ。ジュジュもキューレも今後の関係を見通し、協力もとい恩を売る考えでいる。
「んじゃ協力するって言ってくるわ」
謎にアクティブな天使みよはすぐ立ち上がり、シルキ陣のもとへ。
「こっちも協力するぞ。何をすればいいとかわかんないから指示よろしくな」
簡単に、ラフに言う天使へシルキ陣───華と鬼は眼を細めた。国とは無関係だというのに協力してくれる。そこに裏があると感じ警戒する。が、烈風はすぐに、分かりやすく説明する。
「あっちの人達は冒険者、つまり龍が雇ってる傭兵と同じで報酬さえ貰えれば手伝ってくれる。そしてその報酬はお金だけじゃなく、品物や情報、他にも冒険者が欲しがるモノなら何でもいい」
「そういう事だ。で、私が欲しいのは食い物だ。とりあえず話まとまったなら朝ごはんご馳走して頂きたい。もう遠くで日昇ってるし朝ごはん食べないと今後の話もまともに出来ない自信がある」
「だそうだ」
ただただ空腹だったみよは、一刻も早く朝食を出来る事なら無料で頂きたかった。だからこそ自ら動き、シルキ陣へ会話を促し、ウンディーの協力も伝えたのだった。
◆
あと数十分もすればシルキの空は暁に染まるという時間帯にも関わらず、
「ここは相変わらずフル回転ナリ〜!」
両手の人差し指を立てクルクル回すフロー。以前にも
「これ、は、凄い、所、ね」
「あぁ......コイツ等は朝から晩まで馬鹿騒ぎしているのか?」
「ん〜んんん〜ん〜......朝から朝までかも? 盛り上がるのはやっぱし夜だけども、朝も朝で盛り上がってるわさ」
シルキ大陸
鬼が管理している娯楽街であり、街の中心には壁。この壁が
色遊は女性を相手に男性が夢心地。
夜遊は色気を求めぬ者が夢心地。
ここでは、飯も酒も女も、何でも金で手に入る。
フロー達は夜遊を抜け色遊へ足を踏み入れた所だった。
「さてさて、遊廓を一望できるお城へ行きますかい」
「あの城か?」
「目、的、は?」
街も人も派手色に染まる中、一際派手な佇まいの城。
「目的は! どぅるるるるるるる......ばん! 最後のクラウン団員! 鬼の
フローはクルクル回していた指を頭の上で立て、鬼の角を作って御機嫌に言い放つ。
「城へ入ったら誰に遭遇しようと即戦闘になるわさ。今のうちに準備を済ませるナリよぉ〜」
「はぁ? なんで───まぁいいな」
「うん、いい。殺し、て、いい、の?」
「ん〜〜どうしたいナリ?」
「殺せばいいだろ」
「あら。ダプネ、が、そんな、事、言う、とは、思わ、な、かった、わ」
「んじゃじゃ、殺していいナリ〜!」
「酒呑ってのも殺していいのか?」
「いい、わよ、ね?」
「いいど! 殺せないと思うけども! んじゃ参りますでゴザルぞ!」
クラウンは遊廓に佇む城へ隠れもせず向かった。
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