◇391 -帽子、京へ-1



和國シルキの大名という連中は他大陸での王族ランクで、全員人間。それも年寄りばっか。

この大名が人間だけじゃなく妖怪やアカヤシまでもを上から抑え付けているから和國は外と交流しないらしい───大名が謎に外との絡みをスーパー制限してるとかで。しかしまぁ.....人間だけじゃなく妖怪やアカヤシまでもを抑えてるとは、大名はやり手か?

わたしが妖力やアカヤシ.....いや人間だったとしても、たぶん大名に反発する。でもそれを和國ここの連中はしない。圧倒的な力があるなら華とか龍とか生まれてないだろうし......大名もだけど和國の連中もよくわからん。


「ここって王様とか女王様みたいな偉いヤツはいねーの? 大神族がやってるようには見えねーけど」


まずこれだ。セッカも人間だが他種族.....悪魔さえセッカに従う。それは多分セッカの性格とか人間性的なものが大きいが、それでも国に王や女王がいるといないでは大違い。何もしなくてもその存在がいるだけで抑止力になる不思議。


「居る.....いや、居すぎる、というのが問題なのかもねぇ」


怪我の傷痕も綺麗に治っている烈風はそう答え、自分でお茶を淹れる。苦茶を普通に飲む時点で和國のヤツは感覚がオカシイと思わされるが、もっとオカシイのは、


「王様とかいすぎんの? どゆこと?」


これだ。

王族が沢山いるのは他大陸もだし、あくまでも王族。王様や女王様のように絶対的な権力を持っているワケではないのが王族。そりゃまぁ権力者ではあるがそいつ等が王様とか言い出したら烈風もいよいよだぞ。


「華組の姫はエミリオも見た眠喰バク、竹林の姫は夜しか姿を見せないし見れたら幸運。他にも妖怪の姫もいるな.....それと滑瓢や鬼神種の鬼も権力者かな。そして大神族が2人いる」


「ワラワともうひとりが厄介者じゃのぉ。月詠と鬼に関しては除外してええぞ。あやつは人の上に立つのは好きじゃが仕切りまとめ導く事を嫌う。ワラワも王という立場は勘弁じゃ。眠喰は確かに妖怪では高い地位を持っとるが眠姫は無理じゃろな。本人も理解しておるし嫌がっておる」


ほほう。

難しそうな話はわからんとして、あのクソネミは王族的なヤツなのか.....となると、赤いモヤモヤから救ったわたしは謝礼金を貰う権利があるという事か。こりゃいい事を聞いた。


「でなエミリオ、大名は多分もうひとりの大神族と繋がりがある」


「それがどうした烈風よ。わたしは大神族なんかに興味ねーぜ、ムフフ」


まず千秋ちゃんの懐へ上手い具合に入り込み、次はクソネミから謝礼金を貰って、強そうな妖怪を引き連れて鴉素材を頂戴する。これで完璧だろ和國! 大神族だとかサクラだとか勝手にやってろ!


「何を企んで笑ってるか知らないけど.....まず俺達妖怪やアヤカシが大名を意味無く刺激しないのは後ろに居るであろう大神族の存在があるからだ。そして外から来た者を処刑したがる理由は外に知られたくない何かがあるからだ」


「む? 知られたくない何かって何だ?」


お金の計算と今後の妄想を膨らませていたわたしだったが、知られたくない何か というワードに惹かれた。烈風があれこれ語る時点で中々のレアシーンにも思えるが、もっとレアそうな情報が聞ける気がする。


「俺もそこまではわからない。でも厄介事のような気がする.....大神族が大神族だからな」


わたしはなぜか療狸の方を見てしまった。


「なぜにワラワを見る?」


「いや.....大神族が大神族なんだろ?」


「あんな輩と一緒にするでない! ワラワはまともな大神族じゃわ!」


大神族ってのがどんなヤツなのか詳しくしらないが、療狸コレでまともな大神族だというのなら相当ヤバイ連中なのだろう.....出来る事ならこの先関わりたくない連中だ。


「つーか大神族とか大名とか難しすぎてわかんねっての! もっと簡単にさ、捕まった友達フレがどうなんのか教えてくれよ」


捕まったアホ共に構ってる暇はないが、捕まった事を知ってしまった上にバリバリの知り合いとなれば無視は出来ない。


「俺が簡単に教えるよ」


療狸やひっつーが何かを───恐らく簡単に説明しようとしたのだろうけど、烈風が説明したいお年頃なのかその役を買って出た。


「大名知る、悪い事してなくても処刑、大神族いる、助けるのは難しい、理解したか?」


「いやナメすぎだろれぷさん! 何その子供に教えるみたいな喋り! .....で、どのくらい難しいんだ?」


「うーん.....処刑ってなったらエミリオひとりで助けるのはまず無理だろうな。ここのメンバーでも無理だ」


「ワラワは直接手を出せんから頭数に含むでないぞ」


「.....は? なにそれ大名って難易度ヤバくね?」



戦う、でなく、助ける、だけで無理って.....いやだってわちき辺りを生贄にすれば隙出来るだろうし魔術ブッパすれば一掃出来るだろ。大名って人間らしいし赤帽子クラスとは思えないし。


「華組とか龍組とかが邪魔してくんのか?」


大名自体は雑魚だろ。大神族もひとりっぽいし、どっちかの集団───華組に捕まったなら華組が総出で邪魔してくんのか? それだと無理だな。お花妖怪に雪女に鬼とクソネミがいるだろうし。


「いや、処刑となったら華組も見てる事しかしないと思う。大名とつるんでる大神族は仏様なんだ」


「仏様? 偉そうだなそいつ」


「仏様───観音様には部下が沢山いる」


部下.....巨大ギルド的な何かか? でもまてもし処刑ってなったらウンディーとシルキが戦争おっ始めるんじゃね!?


「ちょちょちょ、処刑ったらセッカ達黙ってないだろ! やべぇよ戦争なるぞ!? 勘弁してくれよそういうの! わたしは騎士や兵じゃなく冒険者だぜ!?」


「あー、確かに黙ってないだろうなぁ......しかも戦争そうなったらただの戦争じゃなくなる」


「え? どんな殺戮合戦になんの?」


「観音様に部下がいるって言ったけど、ちゃんとした部下じゃなくて、観音様の命令を聞く腐敗仏が大量にいるんだ」


「.....は?」


「それに多分、処刑は形だけで実際は全員が腐敗仏の実験.....命彼岸の実験に使われる。今まで何百ってこの実験されてるけど成功したって話は噂でも聞いた事ないな」


「.....、......は??」


「大名がジュジュ達を処刑すると言った瞬間から、敵は大神族と数百体の腐敗仏って事になる。だから───助けるなら今しかないぞ」



腐敗仏.....大神族の仏様......どうなってんだよ和國ここは。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る