◇301 -命彼岸-2
ワタポとの通話がハロルドの手によって終了した数分後、鍛冶屋のビビとララが部屋を訪れた。
さすがはビビ様、宿屋から出たくない病のわたしへコーラの差し入れを持ってきてくれる気遣い、優しさ、天才。ララは手ぶらだったので今後ララを呼ぶ時は【手ブラ】と呼んでやろうか悩み迷う。
「ビビがコーラ買ったしいいかなーってさ、そんなふくれないでよ~」
「エミリオの場合ふたりでコーラ差し入れしても喜ぶ子だよ」
「そういう子だぜ、それなのにララは酷い、酷すぎる.....干からびて死んだら呪うからな」
と、この調子でわたしはふたりとの会話を楽しんでいる頃、フェアリーパンプキンズは何かクソっぽいクエストを必死にやっているんだろう.....全く、可哀想なヤツらだぜ。
「そうだ、エミリオ。夕鴉と夜鴉の入手方法わかったよ」
「なに!? ビビ様それ素敵な差し入れだぜ! 早く教えて!」
なんとなんと、なんと!
謎に包まれすぎてて存在さえも疑っていた【夕鴉】と【夜鴉】の入手方法をサーチしてくれてたとは驚きだ。わたしがビビ様の立場なら知っていても教えないだろう.....金ほしいし。
「さっきキューレ捕まえて聞いてみたらちょうど情報が入ったとか何とか。エミリオのフォンにメッセ届いてないの?」
「んあ?......あ、届いてるわ。見てみる」
情報屋キューレからのメッセージに気付けなかったのはスピーカー通話していたからだろう。フォンを耳に当てず近くの人とも会話出来るのは嬉しい機能だがメッセ受信に気付けないのは気を付けなきゃだな.....てか、このフォンとか便利機能とか誰が作ってるんだ? わたしの次に天才なヤツとみたぞ。今度キューレに聞いてみようかな。まぁ今は噂の素材の正体が先だがな!
「さてさて、なになに......」
わたしは〈夕鴉と夜鴉の情報が入った〉という件名を見て、相変わらずメッセだとあの口調は出ないんだな、と関心しつつ本文へ。
〈和國にいた三本足の
「.....だぁー!! なんっだって三つ子カラスがもういねーんだよ!」
モンスターがいないなら討伐してドロップするというTHE 冒険者も発動出来ないじゃん。素材があっても現実的ではない金額とか.....しかも和國!? 行った事ねーし行く方法も知らねーよ船か? 船なのか? ポートに和國行きの船なんてねーだろ聞いた事ねーぞわたしは。つーななんで猫人族が和國の情報知って........、猫人族の里ってたしかウンディーの領土になったけども位置的にはシルキ寄りだったんだっけか。確かにるー も ゆりぽよ も和國系の装備だったし、るーなんて今や鬼猫だし和國との交流がどの大陸よりも多かったのか? それなら猫人族の里へ行ってもう少し詳しい話を聞いて回れば.....もしかしたらポロっと素材が手に入るかも知れないな。
「ビビララ、わたし大至急猫人族の里へ
「......ね? 自分のプラスになる確率があれば時間も何も無視して行動したがるでしょ? これがエミリオ」
「本当だね.....ビビが言ってた通りの冒険者だわね」
ビビ様がララに何をどう言ったのかは知らないが、一刻も早く猫人族の里へ突撃して三つ子カラスの情報を詳しく聞く必要がある。そりゃもうキューレもビックリするくらい詳しく聞く必要が。
「っつー事で、コーラサンキューな! わたし行くわ」
「まてまてエミリオ。その行動力はいいと思うけど、今から猫人族の里まで船なんて出てないよ」
「それに猫人族の里とか本当に存在してるの? たしかに最近はゆりぽよちゃんとか、猫人族が多くなったとは思うけどさぁ.....実際に里へ行った事ある人って本当にいるの?」
わたしを止めるビビ様の方は大丈夫だとして、ララの発言は正直驚いた。わたしは猫人族の里である【シケット】へ行った事あるからこそ疑いも無いが、そうか....冒険者だから、ウンディー民だからといってみんなが猫人族の里を知っているワケじゃない。そうなると純妖精の所も知らないって事になるのか。
「時間は大丈夫、船はいらん、猫人族の里はある。全部大丈夫だぜ!」
セッカが上手く猫人族と仲を築けばそのうちシケットは観光スポットや癒しスポットになるであろう。純妖精の方も猫人族ほど簡単ではないが、そのうちきっとメジャースポットになる、と思う。この辺りはもうわたしが考えた所でどーにもできん。そうなるまではララのように存在そのものを疑う人がいるだろうけど、それも何かいいじゃないの。
「さっきから何考えて頷いてるか知らないけど、本当に大丈夫?」
「頭の方、大丈夫?」
心配よりも不安な表情のビビ様と失敬なララを横眼にわたしはニッと強者の笑いを浮かべフォンを華麗に操作する。アイテムポーチをタップし、装備枠から箒を取り出す。
「見ろ! この魔女全開のスーパーアイテム!」
ダプネが保管していてくれたわたしの愛箒を堂々取り出し、鍛冶屋に見せつける。
「おぉ、でもそれ何か.....」
「折れてない? 自分で修理ってかただテープで止めてるだけじゃん」
そう。謎の術式が施されたアイレインの教会に突撃した際、ポッキリ折れてしまった愛箒の【ムスタング】さんを、このわたし自らが修理したのだ。少々不安があるものの、そういうのは気にしなければ問題ない。
「細かい事は気にするなっての、これで飛べば速攻シケットに到着すんぜ」
魔箒があれば船代や馬車代も浮き、好き勝手自由に飛べる。こんなにも素晴らしいアイテムをずっと忘れていた事が悔やまれるぜ。
「これは止めても無駄だね。それじゃ行く前に箒を少し直してあげるから待ってな」
「お、まぢ!? さすがビビ様!」
「それ私も触ってみたい、手伝うよ」
「お、いいねいいね! そんじゃふたりに箒を任せて.....その間にアイテム整理してるわ」
なんかいい流れで箒の修理がスタート、お金の話は出てないし、修理後に請求された場合は.....修理後なので窓から飛んで逃げてしまえば勝ちだ。
「うーん、この棒部分が知らない木材だなぁ」
「代用できそうなモノありそうだけど、今ここにはないしなー」
魔女の箒にはしゃいでいたかと思えば、ふたりはすぐに
「───!」
アイテムポーチの放置しすぎはよくない。今まさにそれを体感する事になるとは思ってもいなかった。
「.......ビビ様、これ、箒に使えないかな?」
妙に力んだ指先でそのアイテムをタップし、取り出してみると、今箒に使っている棒よりも長く頑丈な───骨が。
「お、それ使えそう」
「綺麗な色だね。何の素材?」
全体的に白───といっても真っ白ではなく、薄く青色が混ざった白で、所々に薄桃色を持つ骨。これは───
「.....霧棘竜......霧薔薇竜の素材だ」
「それって武器素材に角を使ったやつの?」
「ピョンジャピョツジャか」
アイテムポーチには骨だけではなく、鱗や牙、そして───魔結晶【霧薔薇竜】も入っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます