◇289
突然現れたダプネを突然現れたフローが手荒く空間魔法で飛ばし、今わたしの前にはフローだけが残っている。
「ダプネちゃんの魔女力は余裕で街まで届いてるわさ。で、オネーサンはエミリオちゃんとお話しをしたいだけ。叩いたり叩かれたりは今望んでないわさ」
手を平を見せヒラヒラとさせるフローは戦闘する気はない、と言う。
「.....お前嘘つきの代表みたいな顔してっから信じらんねーぜ」
「うへぇ!? なにその顔どんな顔───うっわ嘘臭い顔してるわさコイツ! ってワシやないかい!」
騒がしく氷魔術を使い氷の鏡を作り出し、自分の顔を見て更に騒がしく鏡を地面へ投げた。フローの今のふざけた行動や発言で見落としがちだが、氷で鏡を作り出したあの魔術.....詠唱、展開、発動が全て同時とも言える速度だった。それに、さっきダプネを攻撃した時は三種同時魔術.....あれはわたしの
「.....わたしはお前が嫌いだ。でも、お前の頭の中には興味がある」
「お? と、言う事はお話しタイムしちゃう? しちゃう?」
会話中に上手く情報を抜き取れればコイツの事や今後の行動を予想出来るかも───
「会話中に上手く情報を抜き取れれば今後のコイツの行動を予想出来るかも~ なーんて、どこぞの情報屋さんじゃないんだから無理よん。エミリオちゃんは言葉や情報を武器に出来ないタイプナリ~」
「なんでわたしの考えが───.....闇魔術か」
「大正解ナリ! 魔女や悪魔と話す時は闇魔術、幻想魔術、幻惑魔術に気を付けるのは当たり前! もっと言うなら妖怪やアヤカシ相手でも頭覗かれる系は気を付けるように癖つけなされな! 癖になっちゃえばなーんて事ないわさ!」
コイツ本気でヤバイ奴かよ.....とにかく今は丸眼の言う通り、その辺りに警戒しつつ会話するしかない。
「あーあー、それじゃあからさま。露骨すぎナリ」
「あ? お前やっぱなんかムカつくな!」
「おっふ、エミリオちゃんはエンジェリアちゃんとは全然性格違うナリなー! エンジェリアちゃんなら今のは.....貴女の発言ひとつひとつが、存在が腹立たしいわね。目障りだから消えて貰うわ。とか怖い事を遠回しに言うわさ!」
「うっわ、お前声真似うますぎね!? 何かキモイ」
完成度が高すぎる声真似を披露したフロー。真似と言うよりもそのままにしか思えない再現度、完成度は正直凄すぎて引く。
「ムカつくとかキモイとか、思っても本人に言うのはよくないぞい! っと、少しはお話しする気になったわさ? なったなら早いとこ空間移動しまそ。街の連中が「魔女や! 魔女がおるでお!」って来たら面倒臭いナリ」
「空間移動? そうやって誘い込む作戦か? それにわたしは誰か来ても面倒臭くないぜ」
.....コイツの考えている事が本当にわからない。魔女だと名乗った瞬間は嘘だろと思ったが、直後に自身の姿、種族を変える変彩魔法を披露しつつ魔女の魔力を露にした。さっきの氷魔術も凄かった。ダプネと一緒にいた事やエンジェリアを知っている事から魔女の中でも相当な位置の魔女と予想して間違いない。
それでもコイツが.....フローがわからない。わたしと同じと言える能力、多重魔術をついさっき披露し、魔術持ちを相手にする際は会話中でも闇魔術などを警戒するようレクチャーしてくれた。何を考えているのか本当にわからない。今も空間へ誘い込みわたしを始末するつもりなのか、本当に話をしたいだけなのかさえ見えない。
「うーむ、それじゃエミリオちゃんが空間使ってちょ! それを使ってわたしも移動すれば騙し討ちの暗殺計画への疑いは晴れるでしょ? ここの雨は晴れないけどね」
小雨を眺め、重たい雲を眺め、フローはケタケタと笑う。
敵と言える相手、魔女であるわたしを前にしても余裕すぎる行動や発言、ダプネが出した魔女力を感知して誰かが来てもおかしくない状況でも焦りひとつない。油断なのか余裕なのか.....色々と危険な雰囲気を持つ存在には変わりないが───話を出きるのはやはりチャンスなのかもしれない。
「.....おっけー、わたしが空間を出して先に移動するから、お前はわたしの魔力を追って自分の空間でこいよ。先に移動して術式でも張られたらうざったいし、同じ空間魔法はあり得ねーぜ」
「お、いいどいいど! エミリオちゃんが安心できて納得出きるやり方でケイオツ! わたしはただお話しがしたいだけナリ。信じてくれろん」
「おっけ、んじゃ適当に飛ぶぜ」
と言ったものの、わたしの空間魔法ではダプネのように長距離移動は出来ない。長距離に空間を繋ぐことは出来ても出口の位置や繋いだ先の地形.....その他細かい演算が苦手。まぁ適当にいい距離へ空間を繋ぎ、適当に移動すれば問題ないだろう。
戦闘中でもないのでゆっくりと詠唱し、わたしはバリアリバルとアイレインの中間地点辺りに空間を繋ぎ移動した。
「.....っと、まぁこの辺りならいいだろ」
着地後辺りを見渡したが何も平原。ベンチ.....丸太でもいいから落ちていれば座れたのだが、位置的に雨もあがっているので地面に座るでもいい。
「どやさ!」
と、変な声で言い空間移動を済ませたフローは出口から飛び出し、両足で着地。謎のドヤ顔でわたしを見てくるのがイラッとしたがいちいち突っ掛かっていたら夜になってしまう。
「で、話したい事ってなによ?」
「色々だわさ。まぁ焦らさんなってば」
フォンを指先で撫でたフローはアイテムポーチから謎の壺を取り出し、手を突っ込み、壺から骨型のクッキーかビスケットかわからないがお菓子を取り出し食べ始める。
「エミリオちゃんも食う?」
「いらねーよ、毒入ってたらアウトだし」
正直食べたかったが相手はフローだ。何を仕込んでくるかわかったもんじゃない。
「あいやー、わたしってそんなに信用ないナリか!? ま、いいや。早速お話を~、チミが瑪瑙を殺したってのは本当の話ナリ? 何で殺したん?」
最初の話がそれか.....。
「.....お前には教えねーよ」
「そ。んじゃ次。チミは地界側なのか? それとも魔女側なのか? それともそれとも、地界も外界もどーでもいいのか?」
「お話しとかいってて質問じゃねーかそれ.....まぁいいけど。最初はどーでもよかったけど今は地界寄りだろな。だからお前らクラウンもうぜー存在だ」
「そ。んじゃ次。チミのママン───天魔女のエンジェリアをわたしがブッ殺したらどーする?」
「どうでもいい」
わたしはフローの質問に即答した。エンジェリアは魔女の中でも一番魔女っぽい.....自分の事しか考えていないヤツだ。自分がよければそれでいい、他人の事なんてどうでもいい、とも考えない。
何が邪魔だったのか知らないが、わたしを魔女界から地界へ弾いたのもアイツだ。が、今は正直どうでもいい存在だ。フローがクソババーを殺すなら好きにしろって感じしかない。
「ん~.....エミリオちゃんはアレかい? な~~~んにも、わかってない子なのかいな?」
「あ? 何がだよ?」
大きなグルグル眼鏡が鋭く嫌な光を宿し、わたしに向く視線。フローは骨クッキーをフォンポーチへ投げ入れ、一度背を伸ばした。
「~~~ッ、ふぅ.....。んじゃ今日は魔女の事やエミリオちゃんが持ってる魔力について、軽~くお話しして帰らせてもらうナリ! 自分の事なんだからよーく聞いてケロな?」
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