◇247
一瞬と呼ぶには短すぎる時間の中で、プンプンは
「.......、」
真っ暗な空間が消え、雨が降り落ちるアイレインが視界に広がる。プンプンは朱色の瞳を天使みよへ向け、みよの表情や反応を見る。
───泣き出しそうな顔で、こんなボクに怒ってくれたみよっち。表情は変わっていない事から.....本当に一瞬だけボクの意識が?
「......みよっち。ありがとう」
プンプンはみよへ言い、優しく笑った。その表情には温かい優しさと───覚悟が。
「プンプン.......プンプン、死なないよね?」
「うん、もう大丈夫......だけど、ひとつお願いしていいかな?」
「お願い? なんでも言って!」
「ありがとう。それじゃあ───ボクがボクじゃなくなったら、迷わないで。みんなにもそう伝えて」
「───え?」
「それじゃ、行ってくる」
◆
数十体の
その中でも増え続ける人形にマユキは眼を細めた。
───面倒すぎデスねぇ。10や20壊しても問題ないデスかね?
迫る人形の数と増える人形の数はマユキの想像を遥かに越えていた。
「もう壊れても知らないデスよ」
「───頭を下げて!」
人形撃退ではなく破壊を選び、マユキは両腕に深い傷を作り血液を変化させた瞬間、背後から声が届きマユキは迷わず姿勢を低く下げた。
チチチ、と小さな音と微かな光の線がマユキと人形の間を走ったと思えば、激しく空気を震えさせて青白い雷が荒れ駆けた。
「───、っ、!?」
「おぉー、凄いデスねぇ」
雷が荒れる前にリリスは人形達を力で引き戻し、雷撃はどのモモカにもヒットしなかったものの、雷撃は牽制でありモモカに当てる気など初めからなかった。
みよの居た場所からマユキの居る場所へ、文字通りひとっ跳びで移動したプンプン。
今までにないほど綺麗な銀色の毛と鮮やかな朱色の瞳。
顔には瞳と同じ色で模様が描かれ、扇状に広げられた尾の数は九本。
「ごめん、押し付けて」
「問題ないデスよぉ、もうお任せしても?」
「うん、ありがとね」
マユキと交代したプンプンはすぐにモモカ達へ視線を送り、そのまま視線リリスへ流した。
◆
クルクルと回る瓶筒───にしては複雑なパーツをもつ何かを地面へ置き、ブツブツと唇を動かしつつフォンからアイテムを取り出すキノコ帽子のしし。
倒れる半妖精を横眼で見てはフォンを撫でブツブツと何かを呟く。その姿、雰囲気や視線はどこか鋭く、料理をしている時とは全くの別物。
クルクルと回る謎の瓶筒は大瓶が回り、その左右に細長い瓶が付けられており、小瓶に入れられたアイテムが分解され大瓶へ流れる。
大瓶の蓋の上には更に小さな瓶が5つ。そこも入れられたアイテムが分解され大瓶へ流れる仕組み。
不思議かつ複雑な仕組みで作られた謎の瓶筒を見ても、ワタポはこれと言った反応を見せず、傷付き倒れる半妖精の姿を見て、強く瞳を閉じた。
「───よし、出来た。これ飲ませてあげて」
瓶筒に付く蛇口のような部分へ空の小瓶を装着し、捻ると謎の液体が小瓶を満たす。それをししはワタポへ渡し、ひぃたろへ飲ませるよう指示した。
ワタポは無言で頷き、ひぃたろへ。ししはすぐに次へ取り掛かる。
再びアイテム───素材を取り出しつつブツブツ言い、瓶筒を使ってそれらのアイテムを合成する。
この瓶筒はイフリー大陸にいた錬金術師【あぷりこ】が作り出した合成ポッド。複数の素材を小さな瓶部分で分解し、分解された素材を大瓶で再構築して薬などを合成生産する、超がつくレアアイテム。
その合成ポッドを匠に使いこなし、次々とポーション系の消耗品を生産するしし。それをワタポが受け取り、指示通りにひぃたろへ。
この作業が5分ほど続き、最後のポーションを使いきった頃、ししは大きく息を吐き出し緊張をゆるめた。
「ふぅ、クタビレダケだ」
「......これで、ひぃちゃは大丈夫なの?」
「ううん。私がシダのは、少しダケ質のいい応急処置。所詮は応急処置レベルだから......ご胞子様じゃなく、お医者様に診てもらわないとイケナイよ。でも、今は大丈夫! 中心街まで戻ってお医者様を探したり、近くの街まで行ってお医者様を探す時間はあるよ」
「───よかった......ありがとう、ししちゃ。本当にありがとう」
「早くお医者様を、探しに、いこーねぇー、そーゆーのは、早い、ほう───........」
喋っている途中でししはベチャっと倒れた。
ワタポは驚き、ししへ一歩近付くと───、
「むにゅ......」
と言い、小さな寝息を。
「もぉ.....ビックリしちゃったよ。ありがとうししちゃ」
料理人であり、消耗品生産者であり、冒険者でもある
獅人族の特徴なのか、しし個人の特徴なのか、集中力や体力をフルに使った場合、強い眠気に襲われ、辺り構わず眠ってしまう癖を持つ。
今回は治癒術や支援術、獅人族のパワフルな力、ししの
「クゥ、ひぃちゃとししちゃを乗せて教会まで行こう。きっと教会にはセッカちゃ達が───......?」
愛犬───狼のフェンリルへ言い、ししを抱きあげようとした瞬間、ししの帽子がざわつく。
「なんだろ? クゥはひぃちゃを背中に乗せて」
愛犬へ言うと、フェンリルは尻尾を器用に使い半妖精をすくい上げ、背中へ。その間にししの帽子から───
「たいへん! ししちゃんが眠っちゃったよ!」
「どうしよう、ここ外なのに......わっ!? 水?」
「雨だ! 外に出ると流されちゃうよ!」
「わー! おっきな狼がいるよ! 食べられちゃう!? 食べられちゃうの!?」
と、声をあげキノコ帽子から顔を出す小人達。
「え、ちょ.....ちょっとなに、えぇ?」
合成ポッドよりも衝撃的な存在を前にワタポはあたふたした。
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