◇◆205
◇◆◇
大玉から転び落ちそうなピエロのシルエットマーク。
地界の歴史に名を残すだけでハッキリとした姿が全く掴めていない存在が使うマーク。そのマークが残っている文書は───全て悲惨な事件の記録。
現場が悲惨な事になっていたためマークが発見されていない事件もあるだろう。
悲惨な事件には必ずと言っていいほど痕跡を残しているのがSSS-S3───トリプルの指定犯罪者 (集団) 【クラウン】
トリプルの犯罪者や犯罪集団は少ない。しかし複数名存在する。ここ近年では【レッドキャップ】などがトリプル指定の犯罪集団の中でも最も有名になった。その【レッドキャップ】よりも危険視されているのが【クラウン】という謎の存在。
ハッキリとした目的や人数など掴めていないため、各大陸の権力者達は不安や混乱を招かぬよう、人々の前ではクラウンの名に触れず生きてきた。しかし噂はどこからともなく広まり、サーカスのクラウンが一時期嫌われてしまう時期も。
顔を出せば派手に暴れ、満足すれば消える。退屈になればまた現れ、からかう様にマークを残す。
クラウン───名前の通りピエロのような存在。
*
【クラウン】がピエロのマークを残した事件。
今から数百年前───。
イフリー大陸で行われた非人道的な研究【破壊魔結晶 (黄金の魔結晶) 生成】とキーとなる魔結晶を各種族へ配布。
シルキ大陸が他大陸を狙った【百鬼夜行】事件。これによりシルキは他国との関係を断ち始める。
それからクラウンは姿を消した。
*
今から約20年前、クラウンは再び顔を出す。
ノムー大陸で再び、騎士団の極秘任務として行われていた【人工魔結晶の生成】
イフリー大陸、四大精霊の具現化事件【トロッケン】
トロッケンの火種が燃え、ノムー大陸とイフリー大陸は【地炎戦争】へと。
戦争に挟まれたウンディー大陸では冒険者によるドメイライト騎士、デザリア兵を対象とした【テロリア】事件。
シルキ大陸の強種族と言われていた、
───それから半年後、再び世界を覗くピエロ。
ノムー大陸から全大陸へと広まった双子マテリア。マテリア生成した子、オリジナル、マテリア、関係なしに拐った【ジェメッリ キラー】事件。
ノムー大陸のドメイライト騎士団 対悪魔隊の全滅へと誘った【アンビバレンス】事件。
ウンディー大陸で
シルキ大陸、【ジェメッリ キラー】事件のオリジナルをシルキの役人へ売りサクラを掘らせ、サクラを人間に使わせ
*
今から約10年前。
ノムー大陸での無差別大量誘拐事件【カレイド ラピメント】
ノムー大陸、花と人形の街の悲劇【マリオネット ミゼル】
ノムー大陸、竜騎士族の里が一夜にして消えた【マリオネット リリー】
ウンディー大陸で行われていたディアの研究【キメラ クリスタ】
シルキ大陸の
イフリー大陸で巨大狼【ヴォルフ フェンリル】を暴れさせ街をひとつ焼き消した【陽炎】事件。
クラウンはまたも姿を眩ませた。
*
数々の事件を引き起こしてきた【クラウン】
何が目的なのかさえ掴めないまま10年が過ぎ去り───再び玉乗りピエロが現れる。
ウンディー大陸 雨の街アイレインにある “赤い宝石” を狙って。
◆◇◆
「───.....と、まぁ有名なのはこの辺り? 全部わたしがやってたんだよねーん」
アイレインの宿屋でドロリと濃いココアを混ぜながら、サラリと軽く自分の事───クラウンの事を話したフロー。湯気で曇るグルグル眼鏡よりも曇った表情を見せるダプネ。
同じ種族───魔女だからといって、他の魔女がどこで何をしているかなど知らないし、さほど興味も持たない。しかし今の話は興味が無いだの有るだのの話ではない、とダプネは息を飲む。
「それ全部、
「そーそー、
グヒ、と笑いココアを楽しむ四大魔女─── |変彩の魔女(アレキサンドライト) フロー。ダプネが強魔女 |黒曜の魔女(オブシディアン) の名を与えられた時には既に四大の席に座っていた存在だが、フローの実力をダプネは知らない。
普段からどこかふざけた様子の魔女だが、戦闘ではさらにふざけている印象が強く、ケタケタと笑っては逃げ、姿が見えないも思えば大アクビでダラけていたりと、とにかく何も掴めない。
現在最強の魔女───天魔女さえ手を焼く存在......そこにダプネだけではなく、他の魔女も納得いかない様子だったが、今の話、クラウンの話が全て本当ならばフローは相当厄介者となる。
「.....お前ひとりで今話した事件を起こしたのか?」
「ひとり.......うーん、まぁスタートはぼっちだけど、魔結晶作りも戦争バンバンも邪魔になりそうな種族バイバイも、結果的に誰かとやった事になるのか? それだとぼっちじゃないし.....ムズいなーその質問!」
「今の話以外にも.....色々やったんだろ?」
「お、勘がいいね。蜘蛛飴の作り方教えたり、蝶の鱗粉を爆発させる方法を広めたり、冒険者の本を出して盛り上げたり、星霊をかき混ぜたり、猫人族になってニャンニャン天国で癒されたり、全部数えてたらドラゴンフルーツの種くらいあるかも」
「.......外界でも色々やってたな?」
「星霊界ってワード出てんじゃん? あれ外界っしょ。てか......質問ばっかり飽きてきたぞ?」
フローの雰囲気が一瞬で変化した。
聞かれる事が嫌なワケじゃない。
飽きたのに続けさせられる事が嫌。つまらない事を続けるのが嫌。
魔女フローはそういう性格。
大事そうな部分だけ話せば次へスムーズに進むだろう、と考えザックリと話をしたフローだったが、ダプネは共に行動する以上は色々と知っておきたいと思っている。
「飽きるなよ。こっちはお前の実力的な部分を何も知らないんだし、ひとりでここまでの事をしてたなんて.....」
「知らなかったからなんだ? 今さら知っても遅くね?」
───変彩....フローは強いから四大の席につけた。それは全魔女達も理解している。でも、わたしの想像以上に強いのか? 今の話が真実ならば想像を越えているレベルの話ではないが......とてもそうは思えない。
ダプネはフローの実力を知りたいと思い、何をしてきたのかも知っておきたいという気持ちから質問を続けようとした。しかし、
「飽きたっての。つまんない事は続けたくない。そんなに知りたいなら取引しよう」
「取引?」
「空間使ってやるから、そん中でわたしを倒してみ? そーしたら全部ぜーんぶ教えてあげる。もちろん殺しても構わないよー」
───四大と戦える.....しかも1対1で。こんなチャンス滅多にない。
「わたしが負けたら?」
「うーん、今まで通り声かけたら来る事! それと必要ないのに終わった事を聞かない事! 必要な時はこっちから話すっての。さっきみたいに必要最低限だけね」
───負けてもわたしの立場は今と変わらない.....
ダプネは数秒間迷いを見せたが、すぐに迷いは消えフローとの戦闘を選んだ。
「よきよき、んじゃ空間パッカーンするぞ! 手加減しないよー? グヒヒ」
開かれた空間魔法の中へフローはすぐに飛び込み、ダプネも数秒遅れて飛び込んだ。
◆
「くぁ~~~ッ、....ツマンネ」
瓦礫に座り、足をブラブラと揺らすフローは涙粒を溜めるほどの大アクビを落とす。
黒曜の魔女ダプネは酷い有り様で地面に転がっているも、それをつまらなさそうに見下ろす。
「......ダプネちゃんや、死んだかいな?」
フローはアクビに溶ける言葉をダプネへ投げ掛けた。するとダプネはピクリと動き、微かな呼吸音を。
「お、よかった。魔塔..... “クリスタルタワー” が起きるまで生きててもらった方助かるやい......んじゃ、おわりな! 飽きた飽きた!」
フローは金色のコインを一枚指で弾きあげ、コインケースへ器用に収納する。
ダプネとの戦闘でフローが使ったアイテムはコイン一枚。使った魔術は常時発動させている変彩魔法を除けば、ひとつだけだった。
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