◆204
上位、上流貴族と対等の立場となる称号【皇位】を持つ情報屋のキューレ。
ギルド【白金の橋】のマスターでありヒーラーでもあり、医者でもあるリピナ。
あらゆる素材を分解し再構築する魔術ではなく技術を持つ【錬金術師】のだっぷー。
魔女の未完成魔術、イロジオンに長年呑まれる事なく見事人間型に戻った大剣使いの【半人半狼】ヘソ出しカイト。
小型の竜に見えるもSS-S2指定の高ランクを持つドラゴンであり、謎に結界マテリアの効果を受けない【霧棘竜】ピョンジャピョツジャ。
そして、魔女の歴史上最も天才であり可愛くもあり美しくもある、欠点と言える部分がまるで見当たらない完璧な生命体こと、わたしエミリオさん。
中々に個性際立つメンバーがウンディー大陸の女王様の趣味全開のお部屋にいた。
フラワークロスが咲く壁紙や、どこか雰囲気のあるランプなどなど.....上品に思える内装の中に散りばめられた子供心漂う部屋でわたし達は目的もなく流れのまま会話をしていた。
その中でわたし、エミリオさんは色々と知る事が出来た。
フォンページ───フォンをプラグに繋ぎ色々と世間事情を知る事が出来るページや、世界事情を知る事が出来る新聞、冒険者の事を中心に書いている雑誌や、観光客向けの雑誌などなど.....その気になれば様々な情報を入手出来るにも関わらず、わたしはそういう行動を全くしない。ので、こうして何気ない会話の中から色々と知れるのは面白い。
だっぷーやヘソ、ラピナの存在はギフトレーゲンの騒ぎでウンディーだけでなくノムー、イフリーまで広まった事。
魔女が動いた事により、外界種族への警戒も強まった事。
冒険者や装備のランク表示が解りやすいものになった事.....はルービッドに聞いていたがさらに詳しい事を知れた。
まず S.SS.SSS とあるランク。
これらの表示はSの場合、S、S-1のどちらかで表示されるが、呼び方はエス、エスワンだけでなく、シングルという呼び方もある。シングルの冒険者イコールSランクの実力者となり、ダブルならばSS、トリプルは最高ランクのSSSとなる。
エスエス、エスツー、というよりダブルと言った方が何か格好いいのはわかる。エスエスエス、エススリーまでいくと、トリプルの方が言いやすいし伝わりやすい。まぁお互い理解出来るならエスでもエスワンでもシングルでもいいと思うが、呼び名などが変わる、つまりそれだけその単語などがポピュラーになっているという事だ。こういった変化はハイランクの冒険者や冒険者に眼を向ける人が増えたとも考えられる。
それはまぁ、いい。
今わたしが最も驚いた情報が “シングルからはランク低下がある” という情報だ。
Aまでは下がる事はない。しかしSからは下がる事もあり、上がるのが難しい。ギルドランクも同様で放置していればAまで下がりシングルの称号が剥奪される。
Sがどれだけ凄い称号なのか....それがピンと来ないが、称号だけでスムーズに進む事が多々あるらしい。SSSなどになればどれ程凄い事になるのか.....。ランクが世界的に力を持つものになったのは、ウンディー大陸がならず者の大陸から女王が管理する国へと変わったからだろうか。
ノムーの騎士と対等にあるのがウンディーの冒険者。そこまで冒険者はメジャーな存在となり、煙たく思われる事もなくなった。
その冒険者になるため、冒険者登録をしようとユニオンまで来たのが、だっぷーとヘソらしい。わたしに挨拶~はオマケで本当の目的は登録.....まぁだっぷーやヘソが冒険者になれば色々と誘いやすくなるので個人的に嬉しい。
プリュイ山のように指定ランクがあるエリアは他にも沢山あるらしいし。
登録はセッカではなく、ユニオンで働く者達が相手なので今すぐ行っても問題ないが、急ぐ事でもない。と大人の余裕なのか実力者の余裕なのな、そんな落ち着きを見せるだっぷーとヘソ。
「まぁあれだな.....脳みそが追い付かないからほとんど忘れちうぜって感じよな」
「じゃろうな。お前さんはくだらん事ばっかり覚えとるから大事な事を忘れるんじゃろ」
「あー? 大事な事しか覚えてないから、キューレ呼んだんだけどな」
「あれじゃろ? ウチに小さくしてもろーて外出て、装備作りに行くつもりじゃろ?」
バッチリとわたしの考えを見抜いていたキューレ。なぜわかった? と言わんばかりのフェイスパターンで見詰めると、キューレは首を傾げ大きく呆れる。
「ほら、お前さんは重要な事を忘れとる」
「なんだよ、別にわたしがディア使うワケじゃないから呑まれる事もないだろ」
「おう最低じゃの。まぁそれは置いといてじゃ、お前さん金は貯まったんか?」
どうやら......わたしはわりと本気で重要な事を忘れてしまうタイプの生き物なのかもしれない。
武器と防具の素材はロック状態でフォンポーチの中でその時を待っている。
ビビ&ララの鍛冶屋コンビに生産の話は通っている。
生産もタダじゃない。素材持ち込みで安くなるが、それでもお金はかかる。
わたしはフォンのウォレット、所持金を何度も確認し───財布同様、中身のない頭を抱えた。
◆
晴天に雨、そして───空間魔法。
アイレインの空にクチを開いた限りなく透明に近い空間魔法から、数百の紙切れが降り落ちた。
ざわつく街を宿屋から見下ろすグルグル眼鏡の魔女。
「いい感じ、いい感じ」
その声を合図に紅玉の瞳を持つ魔女は空間魔法を閉じる。
「───で、フロー。この紙に書かれているお宝ってのは?」
「んやー、そかそか話してなかったな。そこに書いてあるお宝は───」
黒に赤色のペンで書かれたメッセージは、どこぞの怪盗が使いそうなユーモラスな犯罪予告だが、怪盗とは違って文章が雑。
───雨の街にある赤いお宝を夜な夜な奪いにいっちゃうぞ!
と、ふざけた悪戯のような文。しかし紙の端に描かれている【大玉から転び落ちそうなピエロ】のシルエットマークが大人達の記憶を刺激する。
数十年前───この紙切れ、通称サーカスチケットが配られた街があった。
ノムー大陸の街。花と人形の街と言われ、大きなステージもあり毎日賑わっていた。しかしこのサーカスチケットが配られたその夜、その街は悲惨極まりない状態となり、今では呪われた街と言われ誰も近寄らない廃墟と化した。
不幸の象徴とも言われていた黒赤の手紙───サーカスチケットが数十年ぶりにその姿を現し、地界が揺れる。
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