◆202



地界、外界、天界、大きく分けて3つの世界が存在していて、その世界をどう見るかは個人の自由。

わたしは.....3つの世界が───楽しげなオモチャ箱に見えて仕方がない。


地界には黄金の魔結晶という人の命を惜し気もなく使い作られた人工魔結晶があり、人間だけではなく沢山の種族が住んでいる世界。

この箱は───スーパーレアアイテムがあり、外界を追い出された売れ残りのオモチャが詰まったガチャ箱。


外界には魔女や悪魔といった危険種が生息していて、地界にはないアイテムが沢山ある世界。

この箱は───地界をめちゃくちゃに出来る新作のオモチャが沢山詰まったオモチャ箱。


そして天界。天使と閻魔が住んでいる世界。大きな鐘と大きな釜があり、地界と外界には全然興味を持たない種族の世界.....だからこそ、ひっくり返したらどうなるのかワクワクドキドキするビックリ箱。


この世界はパンドラの箱.....だからひっくり返して、全部混ぜたい。好きなオモチャが壊れる瞬間を一番近くで見ていたい。


魔女、人間、魅狐、妖精、星霊、悪魔、天使、閻魔、妖怪、亜人、、、、沢山の種族オモチャでド派手で楽しいサーカスをしたい。だから、する。


「新しい仲間オモチャを集めないと.....まずは───キミがいいなぁ」


わたしは追跡魔法で追っていた人間を最初の仲間に選び、綺麗に拭いた “グルグル眼鏡” を装備した。





「ピッ!」


という聞き覚えのある高い声をわたしの耳が拾う。テーブルで溶けていたわたしはダラダラと顔を上げると、猛スピードで迫る影が。その姿を瞳が捉えた瞬間、顔面にそれは張り付いた。


「───ッ!? ~~~ッ、息止まるっての!」


わたしは顔面に張り付いた子竜───ピョンジャピョツジャを剥がし、子竜を放り投げる。すると可愛らしい翼をパタパタと動かし、子竜は帽子の上に着陸。


「子竜はもうすっかり元気ね。よ、エミリオ」


ピョンジャピョツジャを連れユニオンに現れた人物がわたしを見て軽い挨拶を飛ばした。年寄り染みた口調ではない人物はキューレではなく、


「お、リピナ」


ギルド 白金の橋 マスターのリピナだった。


「調子はどう? ───って、アンタは毒関係なかったんだっけ」


「おう、でも調子は最悪だぜ」


リピナが言ったようにわたしは【ギフト レーゲン】の毒に侵されていなかった。恐らくあの魔術は魔女以外を毒にするゲス系魔術。わたしとダプネは毒になっておらず、このチビ竜もなぜか毒にはなっていなかった。あと狼人間も。


「今朝の騒ぎでしょ? 魔女について知りたい気持ちはよーくわかるけど.....アンタに聞いてもねぇ」


疑うような視線をわたしへ流しつつ、リピナはセッカの元へ進み書類を渡した。


「はいコレ。こっちが解毒剤の調合方法と効果で、こっちがあの毒を解析した結果。解析はラピ姉とだっぷーちゃんがやったから、理解できない部分は2人に聞くと早いよ」


「ありがとう。......うん、大丈夫! ご苦労様」


渡された書類を中々の速度で読んだセッカは書類の下へスタンプを押し、ナナミンへ渡した。


「.....あれだな、ナナミンは完全セッカの羊だな」


「はぁ? ワケのわからない事言う暇あるならエミリオも少し手伝って」


黒赤の瞳を持つ悪魔───ナナミンが人間と共に忙しそうにしている姿はどこか面白い。が、そこに魔女まで加わると面白くないのでわたしは拒否し、キューレの到着を待つ時間潰しとしてリピナを捕まえる。


「なーリピナ、街のみんなは毒大丈夫なのか?」


「うん、もうみんな解毒したし人体系にしか影響がない毒だったから植物とかは平気」


「ほぉー。ラピナは?」


「アイレインへ帰ったよ」


「ふーん。そか」


ルービッドはどうしてる? と聞きたかったが、その言葉は喉に詰まり出てこなかった。リピナとルービッドはアイレインで生まれ、子供の頃から一緒にいる。ルービッドを一番心配しているのはリピナだと思うし、わたしは聞かなくていい事、言わなくていい事、を最近少し理解してきたつもりだ。それでも.....仲良くなれたルービッドの事が気になる気持ちは変わらない。


「あ、そうそう、アンタの友達の.....ダプネだっけ?」


「うん? どした?」


「アイレイン付近で今朝アンタと居る所見たってラピ姉言ってたけど、見間違いよね?」


「今朝? わたしずっとここにいたし見間違いだろ?」



今朝ダプネは空間魔法でどこかへ飛んだ。どこへ行ったのかわたしは知らないが、どこで何をしているなど事細かに聞く必要もないし、わたしと似た人と一緒にいた.....のも、気のせいだろう。



「キューレ.....おっせーなー」






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