-ローウェル-

◆163



ウンディー大陸に何百年も前から存在する山。

山そのものは決して大きくないが、頂上付近は濃い霧に包まれ「霧が晴れた日を見た事がない」と、山の麓にある街の住人達は言う。

街の名は【アイレイン】

四大陸にはそれぞれ特徴があり、ウンディー大陸は四大陸の中で最も雨が多い。

そんなウンディー大陸にあるアイレインは一年のうち半月ちかくは雨が降る【レインタウン】とも呼ばれる街。


そのアイレインを通過し、少し進むと “制限区” に指定されている【プリュイ山】に到着する。このプリュイ山の頂上には竜が生息してる。

エミリオが求めている最後の武器素材【濃霧の秘棘】を持つモンスターこの山に生息している。ターゲットは─── SS-S2 ランク ドラゴン。白薔薇竜、または霧棘竜と呼ばれる【ピョッジャ ピョツジャ】


最後の武器素材を求め、エミリオが向かった先に現れたのは───



◇武具と魔法とモンスターと

-ローウェル-








冒険者達が受注しているクエストの約95%が【集会場】経由の依頼になる。

この集会場システムを考えたのがギルド【マルチェ】だ。

皇位を持つマスター【ジュジュ】は様々な事柄に手を出し、ほぼ全てが当たっている。集会場は冒険者にとって最高のシステム。マルチェに所属する “冒険者” のセッカは、集会場システムをより良いモノにするため、女王の名を添え、今ではノムー大陸の【ドメイライト】にまで、集会場が設けられるとも聞く。

わたし、冒険者ランク “S (S1)” の天才冒険者エミリオが集会場とご無沙汰して1ヶ月と少し。わたしの知る小汚なくゴミゴミした集会場が想像を遥か上回る進化を遂げていた。



わたしは純妖精エルフの街で数日過ごし、傷も疲れも癒し癒され、さぁ帰ろう! と言ってみた。しかしセッカは「純妖精の方々と、うんたらかんたら~ですのでまだ帰れまてん!」と言い、ハロルドは「純妖精に話がある」とキリッとしたキメ顔で言い、プンプンは「ひぃちゃんが残るならボクも残るビリビリー!コンコン!」とアホみたいな顔で言い、その後はもうみんな残るだの帰るだの、好き勝手にしていい雰囲気になった。

わたしはもちろん、即帰る事を選んだ。残ってもダルい作業やらされそうだし、わたしは暇じゃないのだ。

冒険者も猫人族も帰ったり残ったりで、誰がフェリアに居るのかもハッキリ知らない。

まぁ、まぁそれはいい。冒険者は自由な存在なのだから。


一足先にバリアリバルへ帰還したわたしは、ダラダラと数日過ごし、武器の素材集めを完全に忘れていてちょっぴり焦り、とりあえず【ユニオン】へ行き冒険者登録コードの更新をしてきた。更新したのはさっきだ。それも初更新だ。

一年毎に冒険者は冒険者コード、ギルドはギルド登録を更新しなくてはならない。もちろんキッカリ一年ではなく、だいたいで~ なので問題なく更新完了したのだが、なんと!


【エミリオ F-21】

ランク:S (S1)

ギルド:───

種族:魔女

フォンID:~.....


と、詳しい自分の情報がフォンで確認できる事を知ったのだ。Fは性別で数字は年齢だろう。種族が魔女って....まぁ公開処刑されかかったし、みんな知ってる事だろう。

そんな事どうでもいい。

今、冒険者エミリオが驚いているのはランクだ。わたしの記憶だとC+....Bまでいってか? とにかくその辺りのランクだったが、一年でS (S1) まで登り昇って昇天しそうな嬉しさに焦り戸惑いニヤケているのだ。

更新の際になんか優しそうなお姉さんが「数ヵ月前のユニオン会議で冒険者ランク表示が~」と言っていた。詳しくは覚えていないが、わたしがSランクなのは間違いない。そして最大がSSS-S3なのも変わらず。


誰がどこで何を見て、何を聞いてわたしをSランクにしたのか知らないが、よくやった。勢い余ってS3にしてしまってもよかったのだがな!


と、まぁ浮かれウキウキなエミリオさんはまだ見ぬSランククエスト───Sクエを確認しに行くため集会場へ来たのだが....場所を間違えたか?と思う程、集会場は変わっていた。


バリアリバルの集会場は艶のある良さげな木製で作られた集会場。そこは今も変わらない。しかし三階建てになり、中も広く、陽気でいてどこか味のある雰囲気を醸す素敵仕様に更新されているではないか。二階のレストラン酒場はどうなった? そしてまだ見ぬ三階もおおいに気になるが....今はクエストリストの確認が優先だ。


わたしは壁から延び出たフォンコードを摘まみ、自分のフォンを取り出した。すると丁度いいタイミングでフォンが、ピコン、と鳴る。メッセージ受信時の音だ。

集会場でクエストリストを見ている時は通話以外の機能は後手に回される。受注したクエストなどを確認している時は普通に受信するのだが、集会場のコードと繋がったフォンは通話以外の機能は一度コードを抜かなければ使用不可能となる。メッセージの相手は───



〈ダプネ〉

件名:ついた。

バリアリバルに到着したけど、どこに行けばいい? マップデータは買った。



魔女ダプネから受信したメッセージへ返事を送り、わたしはコードをプラグインした。

あらゆる機能が一度ダウンし、クエストリストがフォン画面に表示される。

BもAも....Sまでのランク一覧が表示され、わたしは迷わず【Sランク】をタップした。するとSランククエストが28件表示される。


「28件....思ったより少ないな」


もっと沢山のクエストが存在していると思っていたが、たった28件。試しにAを確認してみると、その件数は281と、Sランクの10倍。


これは....さすがにバランスがおかしくないか? それに + ランクが見当たらない。


わたしは一度コードを抜き、クエストカウンターから移動した。集会場が広く快適になったため冒険者の数が以前よりも増えている。クエスト受注もしないのにカウンターを1つ埋めるのはよろしくない。


「しっかし、こんなに冒険者がいたとはビックリだぜ」


ウンディー大陸のバリアリバルと言えば冒険者の街。ウンディーで一番大きな街で右も左も冒険者だらけの街だが....バリアリバルの集会場だけでこの人数は凄い。クエストリストはどの街の集会場でも中身は変わらないハズ。

まぁ冒険者の本場、集会場の本部とも言えるバリアリバルで受注したい気持ちも理解できるぜ。


「お? アンタ確か....」


ウンウン、と謎に頷き先輩冒険者感を醸し浸っていると、わたしへ声をかけてくる女が....、髪も眼も赤く、少々褐色感のある肌と赤系の装備.....なんだコイツ。


「誰だお前? 」


記憶にあるような、ないような......うむ。うむうむ....出てきそうだ。頑張れブレインエミリオ。エミリオンメモリーを巡れ、記憶のインデックスを───


「....エミリオ!」

「赤女!」


どうやらわたしは思い出せず、相手はわたしを思い出したらしい。





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