◇115




みなさん。お元気ですか?

怪我や病気には気を付けて健康で毎日笑って過ごしてくださいね?

わたし、エミリオは病気もなく、今の所は怪我もありません。


今の所は、の話ですけど。おほほほ。


わたしは今オルベイア火山に来ています。オルベイア火山から更に下、地底火山に【フレアヴォル】という炎犬モンスターが生息しているのです。そのフレアヴォルから武器素材の【炎を宿した喉笛】を頂戴しよう!と頑張っています。

ですが、今わたしは...わたし達は赤々とした巨大ダンゴムシに追われています。

今の所は怪我もなく頑張って、走っています。



「フロー!お前がダンゴムシに石にゃげるからこんな事ににゃったニャ!」


「ダンゴムシこわあああ!潰されるよおおお!」


「わたしのせいかよ!だっぷーが石投げてやれ!って言うから!」


「それで本当ににゃげるバカどこにぃいるニャ!」



みなさん。

ダンゴムシには石を投げてはいけませんよ。






岩の様に巨大なダンゴムシに追われる事、数分。

わたし達は鋭いコーナリングでダンゴムシを壁に激突させ、逃げる事に成功した。

しかし...予定とは違う道に入ってしまい、地底火山へ遠回りして向かうハメになっていた。


「...、っだぁー疲れた」


「誰のせいニャ」


呼吸を整えているわたしへ猫人族の大剣使い、るーがジトっとした視線と言葉を送る。


「だっぷーが石投げてやれゆーから」


そもそもの始まりはノソノソ歩く巨大ダンゴムシを発見した時、だっぷーが石をわたしへ渡し、投げてやれと言ったからだ。

コレと言ったモンスターとの遭遇もなく、正直暇だったので石を投げた所、見事顔面にヒット。ダンゴムシは...そりゃもう当たり前の様に怒って、身体を丸くし、追ってきた。


「本当に投げると思わなかったんだよおー」


「まぁとにかく!ダンゴムシはもういないし、だっぷーも反省してるんだから許してあげなよ。るー」


迫るダンゴムシの恐怖から逃れた事への安心か、わたし達への呆れか、るーは溜め息を地面に落とし、この一件は終了。

各自水分補給を済ませ一旦落ち着いた所で、わたしは炎耐性バフを、るーはマップを開き、だっぷーはマップで現在地と目的地までの新たなルートを説明した。

戻りダンゴムシを倒す選択肢はなしなのか?と質問してみた所、ダンゴムシのお腹には子供が沢山いるので無しとだっぷーは言った。優しいんだなぁ。と思ったがダンゴムシの子供はリンゴくらいの大きさで、数は100近くいるらしく、倒せば100の子ダンゴムシが溢れ出るシーンを想像し、わたしとるーは言葉を失い新ルートを進む事へ同意。


熱く色気の無い火山道をダラダラ歩き、数回モンスターと遭遇するも戦闘が究極に面倒で、道を外れない様に逃げ、辺りが赤々と色付き始めた頃、やっと地底火山へ下る階段へ到着した。


「この下が地底火山だよお。マグマがグツグツしてるから、ここで水分補給とバフのかけ直し!」


個人的に好きではないが、水を飲み喉を潤し、炎耐性バフを全員へ。

赤オレンジ色の光が身体の中心で弾け、全身に溶け込む。

温度の鬱陶しさが遠くなるのを体感し、わたし達は噂の地底火山へ一歩一歩進む。



オルベイア火山から地底火山へ足を踏み入れると、眼の前に広がる風景が一変。


暗く、色で言うならば茶が多かったオルベイア火山。

地底火山は赤が多く、マグマを吐き出す穴、流れる赤熱色の海。


「地底火山は簡単なマップだから、迷う事はないけど気を付けてねえ」


だっぷーはマップデータを送信し、ニッコリ笑う。

この風景を見て気を抜く奴がいるなら会ってみたいものだ。

届いたマップデータを開き、地底火山の全体図を確認し、納得する。

今わたし達がいる入り口。

ここから真っ直ぐ進めば一番広いエリアに到着する。

途中左右にも広いエリアがあり、地底火山は一本の通路と3つの広いエリアで作られていた。


「目的地は真っ直ぐのエリアでいいにょかニャ?」


猫人族のるーが言ったエリアは一番広いエリア。

わたしもそこが怪しいと思っていたが、だっぷーは頭を左右に揺らした。


「真っ直ぐの部屋には行けないの、マグマを泳げるなら大丈夫だけどねえ!目的地は...右の部屋!」


各々がマップで右の部屋を確認。目的地がハッキリした所でわたしが先頭になり進むと、るーが鋭い声で、短く叫ぶ。


「フロー下がれ!」


言葉に ニャ がない違和感さえ感じる暇なく、わたしは気配を感知し大きく下がった。

すると天井から大岩の様な何かが降り落ちてくる。


岩に見えたモノは大型モンスターの頭骨。その頭骨を背負う様に這う...ヤドカリの様なスタイルの蜘蛛モンスター。

蜘蛛の脚はキラキラと輝き、宿の頭骨は宝石の様な石でデコレーションされている。


「オシャレな...ヤドカリ蜘蛛?」


「オシャレ...か?キモいだけニャ」


「鉱石を食べる蜘蛛のボスだよお!倒したいいいい!」


ヤドカリ蜘蛛を見てわたしとるーは引き気味、だっぷーは眼を輝かせ、リボルバータイプの魔銃を迷わず構える。

この地域に詳しいだっぷーが「倒したい」と言った事から、コイツは何かある。と読み取ったわたし達は、武器を手に取りヤドカリ蜘蛛と戦闘する事を選んだ。


「だっぷー!指示お願い」


わたしはそう叫び、2人と離れる。

るーも離れ3人でヤドカリ蜘蛛を囲う隊列になり、だっぷーの指示を待った。


「本体は後回しで、殻を先に壊すよお!糸は吐き出さないけど岩とかマグマは吐き出すから注意、弱点は水!」


だっぷーが言葉が終わるや否や、ヤドカリ蜘蛛はその場で回転し、クチからマグマの玉を吐き飛ばす。


ランダムで飛ばされるマグマ玉をわたし達は回避しつつ、モンスターへ接近し、殻───蜘蛛が背負っている大型モンスターの頭骨へ剣術を撃ち込んだ。


「~~ッ...、堅すぎ」


細剣ではなく、剣を装備している事で普段より威力が増しているわたしの剣術。しかし頭骨の強度は恐ろしく、両腕が痺れる様な反動に襲われる。


攻撃された事に気付いたヤドカリ蜘蛛はわたしをターゲットに岩を吐き出す。

剣術ディレイ&腕がビーン...状態のわたしは岩攻撃を回避、ガードする事は出来ない。


足掻いても無駄。

そう判断したわたしは魔術詠唱に入り、迫り来る岩はだっぷーがリボルバーで銃撃し、粉々に粉砕してくれた。


魔女の力を完全に抑えていた時期は不可能だったが、今のわたしには可能な天才的スキルがある。

それが、“詠唱後ならば会話しても魔術のファンブルがない” 事。

勿論自分の意思で詠唱が終了した魔術を破棄する事も出来る。


「だっぷーアメーバいこう!」


詠唱を済ませたわたしは叫びつつ、ヤドカリ蜘蛛の気を引く為に剣で攻撃を仕掛ける。


「おっけー!いっくよおー!」


リボルバーのシリンダーへ慣れた手つきで【アメーババレット】を装填し、構える。

この瞬間にわたしは詠唱していた水魔術を発動させた。


水系の補助魔術 でだっぷーのアメーババレットの威力、効果、範囲を拡大させる。


放たれたアメーババレットはオルベイアの街で見た弾丸と同じサイズだが、弾薬の中に仕込まれているアメーバは数倍のサイズになっている。

弾丸が弾け、巨大...と言うより肥大化したアメーバがヤドカリ蜘蛛の脚や胴にヒットし、その場で蜘蛛は停止する。


「るー!」


ヤドカリ蜘蛛が肥大化アメーババレットにより、自由を奪われた瞬間、ウォールランで天井まで駆け登っていた猫人族のるーへ 魔術を発動した。


るーが持つ大剣はブレ歪み、重さも数倍になる。


わたしはディア───同時に複数の魔術を詠唱出来る力を使い、水系補助魔術と重力魔術 を詠唱していた。

その重力魔術を今まさに天井からヤドカリ蜘蛛を狙う猫人族の大剣へかけ、破壊力を増加させている。


「ニッ...だぁー!重いニャ!」


ウォールランで天井まで登り、その速度を殺さず天井からヤドカリ蜘蛛を狙い落下。

移動と落下の速度、重力魔術の重さと威力が大剣の剣術を更に重い一撃へと昇華させる。


るーの大剣がヤドカリ蜘蛛の宿───大型モンスターの頭骨を粉砕。それでも威力は消えず蜘蛛をも、斬り、耳障りな悲鳴を響かせて蜘蛛モンスターは灰の様な姿になり、爆散した。


「一撃かよ、大剣すげー」


「すっごおー!魔術と剣術の合体!?カッコイイ!」


「フロー、やるにゃら前もって言えニャ!肩千切れそうにゃるだろ」


落下した猫は無事の様で、強そうに見えたヤドカリ蜘蛛は余裕で倒せた。


蜘蛛はリソースマナを爆散させ散ったが、破壊した宿───頭骨をデコレーションしていたキラキラと輝く石はその場にドロップする。


「鉱石を食べる蜘蛛だから、部位破壊で鉱石を沢山落とすんだよお!やったね!」


目的のモンスターではないものの、やはりモンスターを討伐して獲る素材は嬉しい。


誰がどの鉱石を貰うか。

ワイワイ3人で話し、大量の鉱石をいい感じに分け、ポーションを飲みバフをかけ直し、噂のモンスター【フレアヴォル】がいる右のエリアへ入る。





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