◆36



エミリオが三階へ向かってもう30分程経過した。

私はこの男と剣をぶつけ合って30分...相手の体力や集中力の低下は見えない。

それどころか動きが速くなっている気がする。

私が疲れている?それもあり得なくないが相手の動きは本当に速くなっている。


何度も剣術をぶつけ合うも相殺という結果で終わり、攻防の中隙を見てはそこを突いてもヒットしない。

この男...相当対人慣れしている。


次の攻防で力押しを狙う私を黙って見つめる男は何かに気付いた、または思い出した様に声を漏らし小さく笑った。


力押しが見抜かれた?ならば手数を増やして隙を作らせるだけ。

お互い距離を一気に詰め剣を振る。ぶつかり合う剣は火花を散らしお互いの顔をチリチリ照らす。

この力...引けば突かれる。


私は相手の望み通り押し合いを受けた。少しでも油断した方が、力を抜いた方が斬られる攻防戦の中でクチ元を緩ませる男。


「いつかのハーフエルフでは?」


「...!?」


この男...私を知ってる!?

この男が言う様に、私はハーフエルフ。人間とエルフの混血。

記憶の糸が極限まで張り詰め、1つの特徴が私の記憶と一致する。男の、眼の下の酷いクマ。


「思い出した?キミの心を奪い損ねて変な狐に感情を横取りされた最高傑作...この世界じゃ名前が無きゃ仕事も出来ないって聞いたので数年前からユノで活動してる傭兵です」


昔、私が居た研究所で人工的にディアを手にした実験体。

もうその研究所は潰れて研究も打ち切り。この男は最初で最後の最高傑作。

まだ生きていたとは...。


「口調が違って気付かなかったわ。久しぶりね失敗作」


私の記憶が正しければ、失敗作 と言うと男は、


「なん...な、うるせぇよモルモットが!」


激情する。

失敗作と呼ばれる事を一番嫌いどんな実験にも堪え、相手の感情や感覚、心をクリスタルに閉じ込めて奪うディアを手にした男。

私もほぼ全ての感情、感覚を奪われた事がある。


激情、怒りに身を任せると大きな隙が生まれる事も私は知っている。


「最高傑作が新人モルモットに負けたのは事実よ?」


怒りを煽り、隙を、もっと大きな隙を生ませる。

怒り叫び剣を振っても、そんな攻撃では私を捉えられない。


「....さらに劣化した様ね」


この男の戦闘ステータスは高い。でもそれだけが強さではない。技術や経験から学び取得した強さは小さな事で一気に崩れる脆いモノ。

戦闘力は高い、強い。けど...心が弱いのも昔から変わってない。


自分にないモノ、心を相手から奪って上に立った気でいる、ただの子供。

あの頃から何1つ変わってない進んでない。


誰よりも幼い頃から研究所に隔離され研究者達の辛く厳しい実験台にされていた。

最初に来たからこの男をベースに色々と実験された。運が悪かっただけ。そう割り切るしかない。

10年程経過してもこの男は何も変わっていなかった。次は自分を自分で奪ってしまうだろう...そんな事する必要は無いのに、研究所も研究者も、もう何も無いのに必ず自分を奪ってしまうだろう。弱い心を無くしてしまおうと考えて。


それは生きている間ずっと死んでいる様なもの。もう何もしなくていい、全部終わったの。だから。

だから...最高傑作のまま、


「おやすみ」



苦しんだのはあなただけじゃない。私も、皆もあの牢獄で苦しんだ。

でも希望を捨てなかった。

夢を見る事を、希望を捨てたあなたは研究所と共に無くなるべきだったのよね。それがあなたにとっての一番の救い。


生きている事を知らなかったとはいえ、10年間も放置していた事を謝るわ。


あなたの生きた痕跡は私が持って前に進むから、、、



ゆっくり おやすみ。






蜘蛛の館に入って数時間程経過しただろうか。あんなに早く巨大蜘蛛を倒したのだが、それは個人の体感時間でしかなく、実際は予想以上に時間を削られていた。

まぁボス戦等ではよくある話だ。

その後二階にハロルドを残し階段の先、三階へわたしは到着した。

二階に比べると明るく雰囲気がまるで違う。隅々まで掃除された廊下。ランプにも塵1つない。外からこの建物を見た時に全員が最上階...この階を見たハズ。恐らくここに蜘蛛女が居る。

今すぐこの廊下を爆走して一番奥の部屋に突撃したいのだが...蜘蛛女が結構ヤバイ性格らしいので誰か来るのを待つ事に。


ハロルドは大丈夫だろうか...あの男を見た瞬間ハロルドの雰囲気が一変した。

何と言うか...余裕がなくなった感じだ。そんなにあの男は強いのか?2人で戦った方いいんじゃ...やっぱり戻ろう。

薄暗い階段を降りようとした時、廊下に響く足音がわたしを三階へ留めた。


すぐに剣を取り戦う姿勢をとるも廊下を走ってきたのは1匹の子犬。それに続くかの様にタイプの違う金髪が2人顔を出す。

息を切らして走る薄い金色のワタポと体力がまだ全然余っている様子の黄金色のプー。

現れたのが仲間で安心したが再開の挨拶よりも3人声を揃えて言ったのは「みんなは!?」だった。


みんな、とはハロルド、ビビ様、音楽家の事。誰が誰とペアだったのか解らないので名前ではなく みんな と言った。

ワタポは音楽家と、プーはビビ様とペアになっていたらしいが2人は下...二階で蜘蛛モンスターと戦っているらしい。どちらかが残りどちらかが進む。そこでこの2人が上の階へ進んだ。わたしもハロルドの説明をし二階へ戻る事を伝えるとプーがわたしの手を掴み首をふる。


「ひぃちゃんが残ると決めたんでしょ?大丈夫。それより行こう」


そう言ってプーが睨む先...絶対ネフィラが居るだろ。と思ってしまう悪趣味で派手な扉の先へ行く事になった。


「ワタシが先に入る。ネフィラが居たらワタシが。他のメンバーが邪魔そうならみんなに任せる。ハズレ部屋だったら速やかに掃除して次の部屋へ行こう」


何かのスイッチが入っているのか、普段あまり聞かない声質でそう言うワタポ。わたし達は短く返事をして蜘蛛女の部屋を突撃する。突撃 と言っても扉を蹴り破る等ではなく普通に開き普通に入る。


大きな蜘蛛の巣が壁に書かれていて大きなシャンデリアがぶら下がる。その近くにこれまた大きな蜘蛛の巣が...ここにコウモリがいて棺桶でもあったら蜘蛛女ではなく吸血鬼が出てくるであろう雰囲気。

しかし現れたのはアンデッドでもアストラルでもなくヒューマン、人間。それも相当な数。


「うわ、モブの巣かよ」


見るからにシタッパだ。

でも各々 蝶のシルエットのタトゥーを持っているのでギルドメンバーなのは間違いない。つまり敵だ。

薄青色の細剣、マグーナフルーレを構えて余裕の発言。


「ワタポは別行って」


続く様にプーも長めのカタナを抜刀し言う。


「ここはボク達が引き受けるから」


無理はしないで。と言葉を残しワタポとクゥはモブ部屋を後に。

ここにもターゲットが居ないとなれば...しらみ潰しに館内を探すしかない。ま、それはワタポとクゥがやるとしてだ。


「引き受けたんだから頼むよプー」


「ボク達って言ったじゃん。エミちゃんもガンバ!」


ざっと見て20人程いる相手を前に軽い会話を披露する。

相手から見れば余裕ともとれる態度だ。

1人が全員に戦闘の合図を出すと20人程が一斉に攻めてくる。

ギルドの雑魚だとしても油断は出来ない。でも、不思議と負ける気はしない。


一番近くにいる相手へ下から上へのスラスト、そのまま左側にいる相手へ剣を振り下ろす。2人を攻撃してすぐ頭を下げ後ろからの剣を避けた。


複数の敵と戦う時は視界に出来るだけ敵を入れる事。

少しの動きで次の動きを予想、先読みする事。

下手に動かないで相手の攻撃へカウンターを合わせる事。


まだ義手を探していた時にワタポが教えてくれた多数との戦い方。身体を起こすと同時に向きを変え後ろにいる相手を斬る。



「おぉ~!かっこいい~!」


金色の瞳を輝かせわたしを見るプー。ふっ、こんな相手じゃ本気も出せないぜ。と反応してやろうと思ったがそんな暇はやっぱり無かった。

次から次へと攻めてくるモブ蜘蛛にイライラしながらも殺さず反撃。しかし顔色1つ変えずに立ち上がり何度も挑んでくる。

わたしは相手の足を斬った。勿論死なない程度にだが痛みで立ち上がる事を諦めると思ったのだが、その予想は外れる。我慢している様子もなく平然と立ち上がり斬りかかってくる。プーも相手がオカシイと気付くも怯む事なく1人の足を深く大きく斬り裂く。


太股がパックリ開き血が溢れる。並の人間なら...いやモンスターだとしてもあの傷口と痛みに顔を歪めるハズだが表情は全く変わらない。痛みも無いのか立ち上がり平気な顔で挑んでくる。

こいつ等本気でオカシイ。

徐々に焦りの色がわたし達を染め息も切れ始める。

このまま戦っても時間と体力だけが削られる。かと言って殺すワケにも...相手は疲れる気配もなく何度も立ち上がり何度も...。


「エミちゃん!ボクの合図で....お願い!」


プーは合図で の後に上を見た。わたしも戦いながら上を見ると大きな蜘蛛の巣が視界に入る。人1人くらいなら乗せても大丈夫そうな太く広い蜘蛛の巣。

あれに乗れと??

プーへ目線を送ると黄金色の髪と瞳を揺らす。

何をするか解らないが何かを狙っているなら、、、。

わたしは扉とは逆、部屋の奥にある偉そうなイスを目指し走る。

相手の攻撃を避けつつイスまで後数メートル。そこでプーが「いくよー!」と叫ぶ。恐らく合図だろう。わたしは飛び、イスの背凭れを足場にまた飛んだ。身体を捻り大きな蜘蛛の巣にお尻から着地しすぐ下を見る。

何人かはわたしを見上げる。

そして何人かはプーを狙い続ける。どうするつもりだプー?


身の丈程あるカタナを大きく振り回し相手を数人吹き飛ばししゃがむ。そのままの姿勢で左手を床につけ...、


「ばーん!」


と、悪戯に叫ぶ。すると轟音を響かせ青白い雷が室内を走る。速度も雷魔術と同じくらいたが...アレは魔術ではない。

魔女であるわたしは それが魔術なのか魔術ではないのかを即判断、区別できる。

どう説明すればいいか....白と黒の色の違いを見た事ない者に説明し納得させる程 難しいが、とにかく区別できる。

ワタポが爆発する鱗粉剣を使った時も一瞬で魔術ではない。と見抜けた様に。


プーが使った雷攻撃も間違いなく魔術ではないが、今そんな事どうでもいい。

室内を走る雷は多くの敵、モブ蜘蛛も貫く、と言っても感電する感じだ。

身体をピクつかせ倒れる中、プーは平気な顔でわたしを見上げブイサインを。


「降りてきて大丈夫だよ、この人達はもう動けないから」


わたしはプーの言葉を聞き終え、蜘蛛の巣から飛び降り近くに倒れる者の身体を少し揺らす。が 確かに反応はない。


「弱めに麻痺したけど10分は自由に動けないかな」


なるほど。プーが使う雷にも麻痺効果があるのか...そこも魔術と変わらないが麻痺効果を高めると速度や威力が低下する。あくまでも電気、雷系の攻撃なので麻痺への期待値は麻痺魔術などよりは低いが麻痺効果が高い雷を選び速度を上げ威力を下げたのは見事だ。

威力を下げたり速度を上げたり、言うのは簡単だが、いざやるとなれば相当な集中力と精神力が要求される。

凄い冒険者に出会ったものだ。


麻痺する相手を見てどこか浮かない顔のプー。

まさか期待していたダメージを与えられなかったからもう一撃ぶっぱなすつもりか!?


「この人達やっぱりオカシイよね...雷に触れた時も表情を変えなかった...でも確実にダメージ、痛みはあった...」


違った。びびって蜘蛛の巣に避難しようかと思っていたわたしは安心し言葉を返す。


「うーん...痛覚的なモノが無いんじゃない!?虫には痛覚がない。とか本当か嘘か知らないけどそう言う虫マニアとかいるじゃん?まぁ相手は人間だけども」


わたしの適当すぎる答えにプーは眼を丸くして反応、わたしを指さし「それだ!」と強く言い言葉を繋げる。


「痛覚、痛いってゆー感覚、怖いってゆー感情、それが無い。そう考えれば何度も立ち向かって来た事も納得できる!」


そこでプーは言葉を切り、雰囲気を変えて質問してくる。


「ひぃちゃんが今足止め?してる相手って人間でしょ?どんな人?」


人間...かは見た目では解らないがモンスターではない。

わたしも少ししか見ていないので詳しい特徴は説明できないが...髪がツンツンしてて眼の下が黒かった。と説明した。


「そっか...、よし!ボク達もネフィラを探そう」


ハロルドはほっといていいのか?と思いつつネフィラを探す事を選んでしまった自分。

まぁプーがここまで強いしハロルドも強いだろう。


鍛冶屋と音楽家も大丈夫だと思うし、蜘蛛女を探して捕獲してワタポに渡せば何とかなるでしょ。


一応この部屋の扉をわたしは氷魔術で凍結する事にした。

あんなゾンビみたいな連中に館内を徘徊されると面倒極まりないし。


「よし。さて、どこから...」


どこから探す?とプーに声をかけようとしたが迫り来る足音がわたしのクチを閉じさせる。

赤い髪と茶色の髪がわたし達を見て笑顔で手を振る。

鍛冶屋と音楽家だ。プーも笑顔で手を振り返すも、その笑顔は徐々に消え驚き、または焦りの表情へ。


「ごめん!」


と、ビビが少々笑いを堪えて叫び、音楽家はイケメンフェイスを可愛く変化させ舌を出して言う。


「連れて来ちゃった」


音楽家ユカと鍛冶屋ビビの後ろを...2人を全力で追うあり得ない数の小型蜘蛛モンスターがわたし達の再開の笑顔を震え上がらせる。

眼は4つで赤く、全身には短い毛を持つ小型蜘蛛モンスター。

わたし達のヒザくらいの高さ程だがアレでも小型になる。

小型は体力も攻撃力も防御力も低く特殊な攻撃もない。しかし、速い。


「ちょ...こっち来んなよ2人とも!」


「わわ!...逃げろー!!」


逃げるわたしとプー、来るなと言ったのに付いてくる鍛冶屋ビビと音楽家ユカ、そしてそれを追う蜘蛛の群れ。


最悪な追いかけっこが始まった。


「行き止まりで追い付かれたら全身蜘蛛のうぶ毛で撫でられる...きゃー!鳥肌っ!」


「エミちゃんそれ本気で気持ち悪い...」


最悪だけど...なんか ちょっと楽しい。と思ったのはみんなには内緒にしておこう。







湿気が漂う小さな部屋。

長い蝋燭に灯る弱い炎が力なく揺れる。



「久しぶり元気だった?...あら?ワンちゃん飼ったの?カワイイ」



黒く鋭い爪でワイングラスをつまみ揺らし蛍光色の液体を飲む黒髪の女性。

髪には黄色のラインがいくつも入っている。


「久しぶり。あなたは少し痩せた?」


黒光りする長い爪。黒髪のストレートで黄色のライン。バッサリと切り揃えられた前髪。黒い眼元と黄緑色の奇妙な瞳。

黒いドレスの様な格好で程よい反発力を持つ蜘蛛の巣に腰掛けるこの女性が、元トワルダレニェのマスターで今はペレイデスモルフォの名を語るネフィラ。


「痩せたわね...」


そう呟きワイングラスを石のテーブルへ置き立ち上がる。

ゆっくり首を上げ眼球を動かしワタシを見た。一気に刺々しく毒々しいオーラを放つネフィラ。昔よりも濃く深い殺意。


「クゥー?」


高く可愛らしい声を漏らすクゥを見ると金色の糸がクゥへ絡み付き縛り上げる。


「クゥ!?」


「クゥって言うのねそのワンちゃん...邪魔になりそうたがら少しおとなしくしていてね?」


天井から吊り下げれるクゥ。

予想通りワタシと1対1の戦闘を望んできた。


「なぜペレイデスモルフォの名を語ったの!?何を企んでいるの!?」


ワタシの強い問い掛けにネフィラは顔を酷く歪ませて答える。


「目障りだからよ。蝶の分際で蜘蛛に楯突いた存在が!だから蝶の羽をもいであげようと、コレを用意したんだけど...あなたも好きよね?鱗粉」


小さなビンに入っている黒い粉...アレはワタシの知る鱗粉とは違う。

色もそうだけど...形が粉と言うより固体。


「バブーンスパイダーの卵を小さく、小さくしたモノ。コレを街の空から降り注がせ吸い込んだ人間の体内で...想像しただけでも楽しくならない?」


「やっぱりまたバカな事を考えていたのね。それは勝手にやってよ。ペレイデスモルフォの名前を使わないで蜘蛛の名前で!」


「それじゃ楽しくないでしょ?ペレイデスモルフォが人間を使って楽しんでる。そう世間に思わせないと蝶を地に落とせないもの。その後この私が蝶を捕食して人間達から称えられる。目障りな蝶を消して、トワルダレニェを復活させる!蝶の次は騎士団を喰い漁る!」


「...、そっか」






ネフィラはまだ過去に生きてる。蜘蛛が蝶に負けたあの日からずっと。

その復讐なのか何なのかワタシには解らないし理解したいとも思わない。


ただ....間違っている とも言えない。


ワタシも騎士団を潰す為にペレイデスモルフォを作った。

ワタシの故郷を見殺しにしたドメイライト騎士団が憎くて憎くて、復讐心だけで作ったギルド。


復讐心だけで作ったギルドはまとまりも無く関係ない人々の命を奪い苦しめた...知らなかったとはいえ やっていた事は騎士団とそう変わらない。


ワタシもあの時は過去に生きていた。でも1人の魔女が蝶を燃やした。

やり方は酷くて手荒で対価も必要以上にとられて、みんなは燃やし殺された。

悪魔の様な性格の魔女に。


でも、その魔女はワタシに新しい羽を、ワタシにもう1度考え直す機会と違う道を見つけ出すための時間をくれた。


本人は気付いていないだろうけど、命の代償は命ではなく、罪はそれ以上の罰で償うのではなく、何か違う方法がある。そう教えてくれた。


そんな魔女も今は自分の存在を否定せず、魔女からみた人間の命の重さと価値。

この答えを探し求めている。

ワタシはその答えを一緒に探したい。

ペレイデスモルフォのマカオンとしてじゃなく、騎士団隊長ヒロとしてじゃなく、1人の冒険者ワタポとしてエミちゃの隣に立ってたい。


だから、今日。

本当に全て終わらせる。

過去を無かった事に出来ないのは解ってる。

でも、終わらせる事は出来る。


その為にワタシはここに来た。

ネフィラが望む1対1で今度こそ蜘蛛の頭を潰して騎士団の牢獄へ送る。

今度は自分達を守る為だけではなく、汚されたギルドの名の為に、キャンディーで弄ばれた人達の為に、そして先伸ばしにしてしまった 蝶と蜘蛛 の物語を完全に終わらせて新しい物語を始める為に。


だから...、




「手加減はしないよ。ネフィラ」




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