第2話甘い物こそ正義じゃ!神じゃ!拝みたまえ!

【2】


アラームが部屋一面に鳴り響く。

ここから毎朝恒例のアラームVS自分の因縁の戦いが始まる……はずだった。

突然身の危険を察知し、咄嗟に寝返りをうつ。

寝返りをうった刹那、〝ドスッ〟と元居た場所から鈍い音が鳴り響いた。

……何故かデジャブを感じる

「あっちでもこっちでも同じことをするでない!」

……何処かでと言うか、つい最近聴いたような声が聴こえてきた。

取り合えず起き上がり、声の方向へ向く。

凄く背が低い……それが一番最初の印象だった。背の低さに似合う童顔で、妙に艶々していて長く綺麗な黒髪をゆったりと1つに結んでいる。

ここまでの姿だと完全無欠の日本人なのだが、瞳の色が赤かった。その血の様な色の瞳だけで日本人とはかけ離れた容姿に見えてしまう。

「なんじゃ?妾をじっと見つめて……妾に惚れてしまったのかえ?」

「いや、誰かな~って思ってただけ」

「さっきまで会ってたじゃろ!覚えてないとは言わせぬぞ!」

「あーあ、今日は変な夢を見たな~」

「夢で流すのではない!……いや、夢なのじゃが……目の前に実態が在るじゃろ!」

1回言ってみたかったボケをし、満足した鬼門は「助けるって何をどうやって助ければ良いんだ?」と問いた。

「やはり覚えておったか……まあよい。少し長くなってしまうがよいかの?」

「じゃあ準備しながら聴くよ」

「どこかへ行くのかえ?」

「学校だな」

「学校とな?学校とはなんぞ?」

「昔で言う寺子屋とか私塾みたいなものかな?」

「ふむ、裕福な家系なのかえ?」

「いやこの御世代、裕福でも裕福じゃなくても学校に行かないといけないんだよ」

「そうか……羨ましいのか羨ましく無いのか分からん話じゃな」

昔の人ならば無条件に羨ましいと言うかと思ったがそうでもないらしい。

「妾は勉強なるものが嫌いであったからの~」とのことだった。

着替え終わり、軽めの朝食を摂るためにリビングへ向かう。

「ま、そんなことなぞどうでもよいのじゃ!早速本題に入るとするかの!」

後ろにちょこちょこと着いてきながら酒呑童子は語り始める。

「どうやって助けるかと言っておったな?」

パンを口の中に詰め込み始めていた鬼門は、返事の代わりに大きく頷いて返す。

「お主と妾は波長がこれ以上無いほど合っておる。じゃからお主は妾の姿を見、話す事が出来るのじゃ。そこでの?妾はお主に取り付くことにしたのじゃ」

「取り付く?」

少しもごりながらも質問をする。

「そうじゃ……と言っても下級の鬼、そうじゃな餓鬼みたいなのの様に、一気に自殺に追い込んだり殺人を犯させたり殺して食べたり、馬鹿のする事なぞせぬから安心せよ。やっても穢れとか悪い気を少し食べるぐらいじゃからの……お礼に毎日甘いものを買ってくれてもよいのじゃぞ!」

悪と酒好きで有名な筈の酒呑童子が言うような言葉とはとてもじゃないが思えなかった。

「……毎日ではなくとも良いから買ってたも~?」

「まあ、僕も甘いもの好きだからな……」

毎日大量に食べているほどである。

「ほんとかの??楽しみなのじゃ!……じゃなくての?妾が取り付いた事での?お主が鬼化していくのじゃよ……しかも最終的に妾と同じ程の力をもつ筈じゃ。お主がある程度、力を付けるまで逃げながら特訓していけば妾の勝ちじゃ!ようやく元の位に戻れるのじゃ!」

「どの位掛かるんだ?」

「そうじゃな完全に鬼化するまで1世紀程掛かるじゃろう」

「駄目じゃん」

「ううっ………ではどうすればいいのじゃ?」

「まあそれは後で考えるとして、そろそろ僕は出発するぞ?」

時計を見ると、いつもより早く起きた筈なのにいつの間にか少し急がないと間に合わない程の時間になっていた。

「妾も行って良いかの?」

「他の人には見えないのだろ?」

「うむ余程霊感か波長が合わない限り見えぬぞ」

「なら大丈夫か……よし行こう」

二人は学校に出発する為に玄関へ向かっていった。

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新酒呑童子の野望 アイキ @5487

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