女の文学論(一)
司馬徽と会った。
鶴をおもわせる白髪の小柄な老人だが、ずいぶんと肌が若々しかった。
漢の皇帝である劉協とあっても、柔和な笑みを崩さずにいた。
(涼風のごとき人格だと聞いているが……)
気圧されているのは、むしろ劉協のほうだった。
「話は聞いていると思うが……」
「はい。今日は陛下が私の弟子になると聞いております」
劉協は普段の衣服とは違う服である。
書生の粗末な衣服を身にまとっていた。
「それにしてもご老人は元気ですな。足腰も丈夫そうだが、なにか養生でもなさっているのか」
すると司馬徽はからからと笑った。
「養生もなにも、私はまだ四十代でございます」
劉協は驚いた。
「この白髪のせいで、ずいぶんと年寄り扱いされますな」
そういって司馬徽は己の白髪頭を撫でた。
「曹操の仕官を断ったと聞いている」
「魏公のもとにはすでに天下の人材が揃っております。私が臣下に加わったところで大海に水滴を一粒くわわるようなもの。何のお力にもなれません」
「いまは人民のための学校を開いているとか」
「小さな塾でございます。魏公にお金を出していただき開いた塾でございます」
「荊州にいた頃に諸葛孔明を育てたと聞いておる。劉備のもとで辣腕を奮っているとか。孔明のみならず、荊州の名士たちはみな劉備のところで活躍しているそうな」
「しかし、孔明の兄は呉に仕えております。また、弟は魏に仕えております。乱世の世は皮肉なものでございます」
「あまり長話ばかりするわけにもいかぬ。女たちを待たせると後がうるさい」
司馬徽はうなずき、曹節たちの待つ部屋へと向かった。劉協も水鏡先生の弟子としてその後ろについていった。
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