第20話

 その日の潮風公園は、週末ということもあり家族連れやホームレスの親父、駆け回るちびっこ達で賑わっていた。

 岸壁沿いのベンチには親父たちが寝転がり、遊具が溢れる子どもゾーンでは家族連れが幸せな元気を振りまいている。

 しっかりと棲み分けができているようで、お互いに嫌な空気は流れていない。


 今日に限り、バンジー台は封鎖されており、その麓には看板がかかったステージが置かれている。

 看板の周りにサッカーボールを持った少年達が集まっている。

「なにこれ、芸人でも来んの?」「英語読めねえけど、世界一のバンドってなんだ?」

 少年達はそれぞれにいつもと違うこの雰囲気に推測を立てている。

 そのうちの一人の少年が、隣の体格のいい洟垂れの肩を叩く。促されるまま洟垂れが後ろを振り返ると、表情が固まった。

 洟垂れは本能的に身の危険を察知したのか、突然サッカーボールを蹴り飛ばした。ボールが飛んでいった先を辿ると、全身黒ずくめの二人組が歩いてくるのが見えた。

 少年達は洟垂れの陰に隠れるように、洟垂れは少年達を匿うように、一様に身を固めている。黒ずくめの二人組は、洟垂れたちの手前で進路を変え、バンジー台の傍らに設置されたテントへと姿を消した。

 ほっとしたのもつかの間、洟垂れ達を次なる衝撃が襲う。轟音を立て地面を揺らしながら巨大なクレーン車がゆっくりと近づいてきた。

 そこら中の子どもたちが嬌声を上げる。モーゼのなんたらのように人並みが割れた。

「逃げろ!」

 洟垂れは近づいてくるクレーンを見据えながら、後ろの少年達に指示を出す。自分が逃げるのはいちばん最後だ。だって僕は4月2日生まれのいちばんお兄ちゃんなんだから――。

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