第69話 手に入れろ、アソコのボール

「う~ん…なんかパッとしないわね~」

 プリンセス天功がアクビしながらぼやきだす。

「派手さに欠けるんでさぁ…ダンナの技は地味な割に一瞬で決まりやすからね」

「演出不足ってヤツね」

 オヤジとB・Bも退屈そうだ。

 戦っているエドモンドの気持ちなどまったく意に介さない仲間達。

 そもそもなんで戦っているのか、ソレすら忘れかけているのだ。

「なんか貰えるんだっけか?」

 B・Bが首を傾げる。

「太郎玉です」

 HALのみが、覚えている…というか、ソレが何なのか…知っているのもHALのみなのかもしれない。

「だんなー、変身でさぁ!! アッシが渡したパワーアップブレスレットの威力を見せ付けるときでさぁ!!」

 観客席からオヤジが声を張り上げる。

「パワーアップブレスレット?」

 プリンセス天功がオヤジを嫌~な視線を向ける。

「コレでさぁ!!」

 ポケットからシレッと取り出した紙細工。

「あらっ、折紙じゃない」

 B・Bが懐かしそうに折紙を手に取る。

「1個、3000円でさぁ」

「高っ」

 プリンセス天功が驚く。

「オヤジ…まさかエディに?」

「もちろん、売りました…5個ほど」

 右手をパーッと広げてプリンセス天功の目の前にズイッと差し出す。

「15000円…また騙したのね…」

「エディから、お金を巻き上げてどうするつもりなの? 昔からホントに…」

「日の当たらない世界で生きる子供達に寄付してまさぁ」

日の当たらない世界キャバクラ生きる子供達キャバ嬢寄付指名してますってこと」

「昔からエディもよく騙されるものね」

 プリンセス天功が呆れている。

「信じる気持ちが力になるんでさぁ、アッシもダンナを信じてまさぁ」

「信じた分、お金になるんだもんね」

「仕入れには命を掛けてるんですぜ、その対価を頂いているだけでさぁ」

「その折紙、役に立ったようですね」

 HALが内臓モニターにダウンロードした『やさしい折紙 まずは星を作ってみよう』旧世界の本の1ページを映し出した。

「仕入れって…土産物屋で買った折紙を自分で折っただけじゃない…」

「信じる気持ちでさぁ!! 気持ちが込もってますぜ」

「この紙が15000円になったのね…」

「…金と銀は効果が1.25倍になりやす、値段も倍に!!」

「まさか?」

「へぇ、お買い上げいただいてますぜ!!」

 オヤジとプリンセス天功の会話を聞き流しながらB・Bはエドモンドの戦いを見ていた。

 オーディンスピアを紙一重で避けたエドモンド、ジャケットの袖が裂ける。

 その手首に不恰好な金色の星が見えた。

(信じたのね…エドモンド…)


「エドモンド!! 文字数にも限度があるのよ!! 変身して片づけてしまいなさい!!」

 B・Bが叫ぶ


(ええい…ままよ)

 ユーラシアから距離を取って

「変身!!」

 エドモンドがカミキリ虫に変身しようとした、その瞬間、それまで置物のようだったリッパーが動いた。

「ぐぁ」

 エドモンドの後頭部に鈍い音と痛みが走る。

 変身しながら倒れるエドモンド。

 バタッと顔面から崩れ落ちたエドモンド、無様な格好のまま変態を遂げたのである。

「途中リセットは効かないのねアレ」

 B・BがHALに確認する。

「はい」


 武舞台でうつぶせるエドモンド、手首に光る星形の折紙、手に巻く部分は桃色の折紙だ。

 その腕にユーラシアのオーディンスピアを突き刺そうと振りかぶる、油断しまくっていたユーラシア、その脇腹にリッパーことアノマノカリスが食いつく。

「なに!?…コ…コイツ…」


 何を考えているか解らない、飛び出た真っ黒い目が不気味に光る。

 スピアで払い退けたいが、長いスピアが仇となる。

 腕の力では引き剥がせず、足にも力が入らない。

「クソが…」

 ついに膝を付いてカランとスピアがユーラシアの手から滑り落ちた。


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