第13話◆ 自己責任度100% でも知っておいても損はない任意保険の話

 さて、知っておいても損はない節税話、いよいよ大詰めとなっていまいりました。

 もちろん家族や収入など、個人の環境次第で受けられる制度はまだたくさんあります。たとえばすっかり有名になった生活保護だってその一つでしょう。


 ただ個人的経験に基づく、誰にとっても知っておいて損はない制度と言えば、もう残るは一つ、『保険料控除』の話ぐらいです。


 ただし、今回は少し特殊な話になります。

 たとえば、今までに解説してきた数々の制度は、それほどリスクがあるものではありません。(年収が低い場合の文美への切り替えとかは別ですが)


 ですが今回は違います。自己責任度100%。性質上、なにがあっても私は責任は取れません。ただ一方で、そう無闇に怖がる必要もありませんし、偏見を持つ必要もありません。使いようによっては間違いなく役に立つ話です。


 それが、個人が任意で加入する保険の話です。生命保険とか医療保険とかああいうのです。


『帳簿をしっかりつけて、収入と支出を正しく申告して、将来に備えての積立とかをしてるなら、税金とか色々安くしてあげるよ』


 本エッセイでは、それが日本のシステムだと何度か触れてきました。

 以前に紹介した退職金制度などがそのその一つです。ですが、当然ながら『将来に備える』のは退職金だけではありません。


 それが任意保険です。将来に備えると言えば、退職金よりこっちの方が思い浮かべやすいかもしれませんね。日本では支払う保険料の一部を控除として計上することができるんです。


 ただ、もしあなたが10代、20代の方であれば、この時点で多くの方が興味を失うかもしれません。なにせ保険の必要性なんてなかなか感じる機会がありません。いつ事故に遭うか分からない以上、医療保険ぐらいは入ってる方もいると思いますが、20代で独身とかでしたら生命保険に入ろうなんて考える方はまずいないでしょう。


 ですが、保険というのはたくさんの種類があるんです。ここは一番声を大にして言いたいんですが、『万が一の状況に備えるだけ』が保険じゃないんです。たとえば、将来への経済的な備えが可能な、フリーランス向きの保険というものもあります。


 具体的な話をしましょう。『養老保険』というものをご存じでしょうか。これがまた字面の関係で若い人にはまったく興味をもってもらえないと思いますが(なにせ『養老』だもの!)、実は状況と使い方次第では非常に便利な保険です。


 養老保険とは、カテゴリ的には生命保険の一種です。数年間保険金を支払うことで、10年とか20年後とかの満了時に、利息のついた保険金を一括ないし年金として受け取れます。またもし万が一死亡した場合は、死亡保険金が遺族に支払われます。


 定められた期間を無事経過できれば保険金、もし万が一亡くなったら死亡保険金。

 つまり貯蓄と保障の両方の性質を併せ持ってるわけですね。支払った保険料は無駄になることはなく(加入後、早々に任意解約した場合などは別です)、しかも銀行預金よりよっぽど高い利息が付くことがほとんどです。


 もうちょっと具体的な例を挙げると、たとえば養老保険で年間50万を5年、つまり合計250万ぐらいを保険料として支払ったとします。


 すると保険加入から10年後ぐらいに、350万ぐらいの金額を一括受け取り、あるいは年金として月6万円ずつ5、6年間ぐらいもらえたりするわけです。


 また、たとえば加入してから一年後に不慮の事故で亡くなったとしましょう。その場合、一年分の保険料(この例では50万)しか払っていなかったとしても、即座に満額の保険金350万が遺族に支払われることになります。また、以降の保険料については納付義務がなくなります。


 ところでこの例を見て、「年間50万の保険料で、支払われる生命保険がたったの350万!? すくな!」と思われる方もいるかもしれません。


 それは間違いなく掛け捨ての保険と混同しています。


 掛け捨て。つまり支払った保険金が戻ってこないタイプです。生命保険や医療保険などではよく見受けられますね。


 掛け捨ての保険は、支払った保険料が無駄になる場合もあるものの、保険料自体はかなり安く、また一方で支払われる保険金も多いのが特徴です。

(前述の養老保険などは、支払った保険料が無駄になることはまずないものの、保険料自体はかなり高く、支払われる保険金も少ないわけですね)


 つまり、たとえば掛け捨ての医療保険に加入したとして、病気や怪我をしなければ、当然保険料は無駄になります。若い方で保険を敬遠する人が多い理由は恐らくコレでしょう。若い頃に、『自分が将来病気や怪我をする』という想像はなかなかできませんし。(医療保険なんかは若いときに入った方が安かったりするんですが!)


 というわけで。

 保険の種類は多分我々が思っている以上に多いです。

「保険なんて、大体保険料を無駄にして終わりだろ?」なんて偏見だけは持たず、状況に応じた保険を選択できれば、間違いなく重要な武器になり得ます。


 たとえば、『今のところ独身で、将来的に結婚する可能性はあるけど、当面生命保険に用はない』という方は多いと思います。でも将来は不安定なので積み立てしておきたい、という方は字面に騙されることなく養老保険を一考する価値はあると思います。


 もちろんノーリスクとは言えません。お金を積み立てる形になる以上、退職金と同じようにインフレリスクや可処分所得が減るというリスクはついて回ります。ですが、漫然と銀行預金にしておくぐらいでしたら、間違いなく一考する価値はあります。


 逆にすでに家族がいて、自分になにかあったときのために備えたい、という場合でしたら掛け捨ての生命保険に入るのも手です。掛け捨ての場合、支払う保険料が無駄になる可能性はありますが、支払う保険料自体はかなり安いですし、反対に支払われる保険金はかなり高いはずですから。


 ただ、保険は時勢に強く影響されるということも覚えておきましょう。


 たとえば、今は日本は超低金利時代(というかマイナス金利ですね)。こういう場合、多くの保険でも利率が低く調整されてたりするので、加入は様子を見た方がいい場合もあります。


 余談ながら、たとえば1980年代のバブルの頃の保険利率は凄まじく、「オレはバブル期に死ぬまで年金が出るタイプの保険に入ったから殺さない方が得だぞ」なんてジョークがよく聞けるとか。もしまたバブル経済とかになったら、保険加入にはちょうどいいかもしれません。


 他にも、たとえば子供が生まれた場合に多くの親御さんが加入を考えるという『学資保険』というものがあります。


 子供が高校や大学へ進学するとなると、かなりのお金が必要となります。

 ただその出費は15年後とか18年後とあらかじめ予想できるわけですから、そのときに保険金が出るように、計画的に保険料を積み立てていくのが学資保険のざっくりとした概要です。しかも、この手の保険には親が亡くなった場合、以降の保険料の支払いが不要になるなどの機能が付いていることがほとんどです。


 しかし今は金利が低いので、必ずしも有効とは限りません。また、たとえば15年後とか18年後の出費に備えて資産を形成したい、しかももし自分に万が一のことがあったら、保険金が出るようにしたい――ってこれ、養老保険とかでもほぼ同じことができるわけですね。つまり、学資保険というカテゴリにこだわる必要もないわけです。


 他にも、たとえば今、日本円はどうなっているでしょうか? 円高でしょうか円安でしょうか?


 世界的に見て円高基調でしたら、米ドル建てや豪ドル建てで貯蓄性のある保険に入るという手もあります。オーストラリアなどは日本よりはるかに利息が高いですし、極端な話、円高のときに外貨建てで養老保険に入り、円安のときに解約できれば凄まじい利益が出るわけですね。もちろん利益だけではなく、生命保険も付いてきますし。


とはいえ、「これだけ円高なら!」と外貨建て保険に入ったものの、解約のときさらにスーパー円高になって大損する可能性もあるわけですけどね。

(ただ据置といって、お金を受け取る時期を先延ばしにしたりできますけど)


 そうです。『外貨建て保険』なんて話になるともはや投資の領域です。生活資金に余裕がないときなんかは一切考慮する必要はありません。


 ただもう一つ、日本では保険料控除という制度があります。そうです、ここでようやく本題に入ります。

(注:なお、名前からして大変ややこしいのですが、国保などとは別の控除です)


 これはようするに、『あなたが任意で保険に入って将来への備えとしているなら、保険料に応じていくらか税金を安くしてあげよう』という制度です。


 たとえば生命保険に入っていた場合。保険料にもよりますが、所得税で最大4万円。住民税で最大2万8000円が控除されます。


 つまり年に8万払う生命保険に入っていた場合、所得税・住民税がそれぞれ10%だったとして、6800円の節税効果があるわけですね。


 年間8万の保険料支払いで、6800円の節税効果と書くと全然大したことないように見えると思います。ですが、これが掛け捨ての保険でなければ、8.5%の年利になるわけですからどんな銀行の利息より高いわけです。


 もっとも、掛け捨てでない保険は、支払う保険料が高いのが特徴です。そして保険料控除の上限は決まってます。つまり、年に50万払う養老保険に入っていたとしても、控除額はやっぱり所得税で4万円。住民税で2万8000。

 所得税・住民税がそれぞれ10%だったとして、節税効果はやっぱり6800円止まり。保険料50万とすれば、利息は1.3%に過ぎません。(保険による利息は結構に付くはずですが)


 また、喜ぶべきかややこしいと悲しむべきか、保険料控除は以下の三種類があり、それぞれに控除が設定できます。


 1,一般生命保険

 2,個人年金保険

 3,介護・医療保険


 つまりこの3種類の保険に入っていれば、それぞれ個別に控除枠がもらえるわけですね。

 先ほど生命保険による節税効果の例をあげましたが、生命保険は文字通り『1,一般生命保険』にあたります。ちなみに前述した養老保険もここですね。


 つまり、『2,個人年金保険』『3,介護・医療保険』分についてはまだ保険料控除枠が残ってるわけです。掛け捨てではない保険で、この三つの保険料控除枠すべてを埋めるようにして保険に加入すれば、一応それなりの節税効果は出ます。


(注:でも保険料控除を目的に保険に入ることは勧めないという説はよく聞きます。そもそも、保険料控除枠をピッタリ埋められるような掛け捨てじゃない保険って多分ないと思いますが)


 ただ、3つ揃うと控除料の計算がちょっと複雑です。

 前述しましたが、たとえば保険控除は、所得税は4万円まで、住民税は2万8000円までです。


 保険料控除は前述の通り三種類あるので、所得税は最大12万まで控除可能です。


 ところが! 住民税の控除はどういうわけか最大7万までです。

 2万8000×3=8万4000円じゃないんです。7万までです。1万4000円分は切り捨てられます。

(平成23年12月31日以前の制度の名残らしいです)


 一応、保険料控除の計算式は、こうなってます。


●所得税

年間の支払保険料等  控除額

2万円以下       支払保険料等の全額

2万円超 4万円以下  支払保険料等×1/2+1万円

4万円超 8円以下   支払保険料等×1/4+2万円

8円超         一律4万円


●住民税

年間の支払保険料等   控除金額

12,000円以下      支払保険料等の全額

12,000円超 32,000円以下 支払保険料等×1/2+6,000円

32,000円超 56,000円以下 支払保険料等×1/4+14,000円

56,000円超       一律28,000円


 つまり、『1,一般生命保険』『2,個人年金保険』『3,介護・医療保険』の三つに、年間8万円支払えば、一応最大の控除をもらえるわけですね。


(注:でもさっきも言いましたが、保険料控除を目的に保険に入ることは勧めないという人も結構います。保険はあくまで自分や家族への備えを第一に検討しましょう)


 具体例を出しましょう。


 前述した三種類の保険控除をすべて埋めるため、生命保険・個人年金保険・医療保険に月額5000円払う契約をしたとします。


・生命保険    月額5000円 年間6万

・個人年金保険  月額5000円 年間6万

・医療保険    月額5000円 年間6万


 すると控除額は次のようになります。


 1,一般生命保険  所得税控除3万5000円 住民税控除2万8000円

 2,個人年金保険  所得税控除3万5000円 住民税控除2万8000円

 3,介護・医療保険 所得税控除3万5000円 住民税控除2万8000円


 つまりこの例における、所得控除は10万5000円。所得税率を10%として節税効果は1万500円。


 住民税控除は7万4000円ですが、前述の通り住民税の最大控除額は7万となります。住民税は一律10%なので7000円の節税効果ですね。


 つまり年間18万の保険に加入することで、最低1万7500円の節税効果が生まれます。


 保険料が掛け捨てでなければ、利息9.7%とも言えるんですけどね……。多分そんな都合のいい掛け捨てでない保険はないと思いますが。

 ただいずれにせよ、3の保険による備えがついた上で年1万7500円税金が安くなると考えれば、状況によっては悪くないと思います。


 というわけで。


 保険なんてものは、結局100%自己責任。損するか得するかはまったく分かりません。ただ、適切な保険を選べば将来の備えになることだけは間違いありません。


 特に、保険に入って損したという例は枚挙に暇がありませんが、保険に入って得したという例も枚挙に暇がありません。ネットでは特に失敗談の方が広がりがちですが、むやみに偏見を持つ必要だけは決してないと思います。


 ではたくさんの保険から、自分の目的にあった保険を捜すにはどうしたらいいか?


 簡単です、専門家に相談しましょう。では専門家はどこにいるか?

 まず思い浮かぶのは、デパートなんかにある保険の無料相談窓口とかですね。それから銀行です。どこの銀行でも、間違いなく保険の紹介というのはやってくれます。


 もちろん、「町中の無料相談所なんて、仲介料取ることしか考えてないからロクな保険を紹介されないぞ?」なんて話は大変よく耳にします。

 ですがまあ無料ですし、どんな保険があるか話だけ聞きに行って参考にする分には問題ないと思います。(個人的経験)


 その気がなければもちろん保険加入は断りましょう。無料相談所などの場合、相談の際に住所や電話番号を聞かれることもありますが、言いたくなければ言わなくても大丈夫です。それでも強引に聞かれるようであれば席を立ちましょう。(また、保険は種類や契約状況にもよりますが、クーリングオフ制度の対象にもなります)


 なお、個人的経験から申し上げると、大手銀行に相談に行く分には、そう構える必要はないとも思います。特に銀行側からすれば、自分のところに口座を持ってる客に金融商品を紹介した挙げ句、揉めればロクなことがないというのはよく分かってるはずですし。


 ただ、これは私が『銀行から紹介された保険に入って良かった』という経験があるから言えるのであって、もし逆の立場の人がいれば、間違いなく私と真逆のことを言うと思います。そしてその人の言っていることが間違っていると私が断言することもできません。


 何度も言いますが結局保険は自己責任。将来の備えと言えば聞こえはいいですが、ギャンブルと言ってしまえばそれまでですから。でもタイミングと用途さえ合致すれば、本当に便利なんですけどね……。

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