第10話◆ 寄付金控除の基本(注:大変ややこしいので読み飛ばし推奨)

 ふるさと納税という制度があります。

 数ある節税手段の中でも、恐らく一番楽しい制度です。


 しかも青色申告特別控除並みに使わないともったいない制度なんですが、ふるさと納税を理解するためにはまず順番的に『寄付金控除』についての話をしておくべきなんですよね、多分。というわけで今回は『寄付金控除の基本』の話となります。


 ただ、正直に申し上げますと。


『ふるさと納税』をやりたいだけでしたら、今回の話は読み飛ばしても構いません。おまけに『ふるさと納税』なら牛肉やら果物といった特産品がもらえるんですが、寄付金となるとシステム上、税金対策にはなり得ないんです。


 その上、細かい話をすると相当ややこしいんですよね……! 本当に読んでて面倒臭くなったら今回の項は読み飛ばして次回の『ふるさと納税編』に飛んでもらっても全然構いません。

 あるいは不吉な話ですが、もし大きな災害が発生し、赤十字に多額の寄附をすることがあれば、続きを読んで頂いた方がいいかもしれません。


 と、散々読み飛ばした方がいいよという注意書きは終わったので本題に入りましょう。


 たとえば大きな震災があると、義援金の受付けやそれに伴う『寄付金控除』という単語を目にすることが増えます。これはようするに、赤十字など『特定団体への寄付に限り、寄付した金額のうち一定額を控除の対象にできる』というものです。


 控除というと、基礎控除・青色申告特別控除・退職金控除などなど、途端に節税に繋がる匂いがしてきます。

 では実際のところ日本における寄付金控除とはどのようなものか、せっかくですからざっくり概要だけでも知っていってください。


 細かいことを言い出すと複雑なんですが、一応3行でまとまるんです。


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・特定の団体への寄付金は、最大で寄付した額のほぼ50%分、所得税と住民税を安くできます。

(注:正確には『(寄付した金額-2000円)×50%』)

(注2:特定震災指定寄付金とか、特定の団体への寄付金でなければ50%の節税にならないこともあります)


・ただし寄付金で受けられる控除には上限があるので、寄付をし過ぎると節税効果は薄れます。

(詳しくは後述しますが、寄付金控除として認められるのは年間所得の40%まで。税額控除できるのは納めるべき所得税の25%まで)


・寄付金はその性質上、退職金控除などとは違い、『税金対策』にはなり得ません。

(たとえば10万寄付して5万節税できたとしても、残り5万の穴は埋まらないわけです。ややこしいですが、地方自治体に寄付する『ふるさと納税』の場合は別なんですが)


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(カッコ入れたら3行どころじゃないのはご容赦ください)


 さて、ここから先は詳細の話。言いたくないんですが大変ややこしいです。ただ、詳しく知らなくても『ふるさと納税』は利用できますので、読むのが嫌になったらどうぞ次へ飛んでください。


 まず、いきなりクソややこしい話になりますが、寄付金控除は寄付した全額が控除対象にはなりません。

 正確には、


(寄付金合計額-2000円) = 控除額


 つまり2000円分だけ手数料のように取られます。寄付金話になると、この2000円という数字がなぜか必ずついて回るので覚えておきましょう。ようは募金のような小額の寄付の場合、控除対象にはならないということですね。


 たとえば10万寄付したら9万8000円が控除額となります。

 その上で、控除効果を計算するには、


・所得税に対する控除

・住民税に対する控除


 この二つを別に計算する必要があります。

 住民税に対する控除額を出すのは簡単ですので、ひとまず所得税に限って話をしましょう。というのも所得税については、


① 『所得控除』

② 『税額控除』


 のどちらかの節税方法を選択することができてしまうためです。

(注:ほとんどの場合、②の方がトクです。

   ただし、②の税額控除は特定の団体に寄付した場合にしか使えません。

   大きな震災が起こった際に、赤十字に寄付するとかは大体大丈夫です)


 なぜこんなシステムになってるかというと、理由がありまして。


・年収300万の人が10万円寄付した場合

・年収5000万の人が10万円寄付した場合


 このように、『収入は違うけど寄付した金額は同じ』という状況の際、①の『所得控除』だけですと年収5000万の人の方が有利になってしまうのを防ぐためなんです。


 一つずつ解説していきましょう。


 まず ①。寄付金を『所得控除』として扱う場合。

 これは退職金や基礎控除と一緒です。『所得税の対象になる年収』を減らすことができ、結果的に納める所得税を減らすことができます。

(注:国保については控除対象にはなりません)


 また、寄付金にできる金額には限度があり、年間所得金額の40%までとなります。


 ……と言われてもまったく分からないと思います。


 まず寄付をしない場合で、


・年収400万

・経費と控除100万


 として考えてみましょう。

 400万から経費と控除の100万を引くと300万。所得300万の所得税は20万2500円です。(300万×10%-9万7500)

 ここに、


・寄付金10万


 を加えてみましょう。

 まず寄付金10万から2000円を引いた9万8000円が、寄付金による所得控除となります。

 これを控除として年収から引けるわけですから、


 400万-(100万+9万8000)=290万2000円。

 290万2000円に対する所得税は、19万2700円。


 つまり、寄付金10万による節税効果は、

 20万2500円-19万2700円=9800円です。

(ようするに(寄付金10万-2000円)に、所得税10%をかけた場合と同じですね)


 ただし、寄付金には限度額が設定されています。『年間所得金額の40%が上限』ですので300万×40%=120万円が限度額ですね。


 もちろん限度額を越えて寄付する分には自由なんですが、限度額を越えた分の控除は受けられません。つまり年収400万、経費・控除100万の場合、たとえば200万寄付したとしても、


・200万-2000円=199万8000円


 という控除は受けられません。限度額はあくまで120万なので、


・120万-2000円=119万8000円


 の控除しか受けられないわけですね。義援金の桁は間違えないようにしましょう。


 さて、ただ寄付金控除には、特定の団体への寄付金に限り、二つの制度から選べると書きました。

 それが『所得控除』ではなく、『税額控除』の場合です。


 税額控除。実は本エッセイで初めて登場する単語です。でもこれは効果の分かりづらい所得控除より理解は簡単です。


 税額控除とは、所得税などの税金から、直接引くことのできる金額です。文字通り、税金そのものを控除するわけです。ようするに所得税が10万で税額控除が1万だったら、10万-1万=9万が最終的な所得税になります。


 余談ですが、所得税率10%だった場合、『所得控除10万円』と『税額控除1万』の節税効果はまったく同じになります。

(所得控除10万で所得税率10%の場合、節税効果は1万なので)


 とにかく例を挙げましょう。

 寄付金による控除を『所得控除』ではなく『税額控除』で選択した場合。


 まず、控除額の計算式が変わります。

『寄付金-2000円』というのは前回と一緒ですが、この値に40%をかけた数値が税額控除です。

(注:余談ですが、政党などに寄付した場合は40%が30%になります)


 つまり、(寄付金-2000円)×40%=税額控除


 例によって年収を400万、寄付金を除いた経費・控除を100万、寄付金額が10万としてとして考えてみましょう。


 税額控除は、(10万-2000円)×40%=3万9200円。

 所得税は20万2500円。そこから3万9200円を直接引くことができるわけですね。


 ここで『所得控除』を選択した場合の節税効果を思い出してみましょう。


① 『所得控除』選択の場合、所得税10%として節税効果は9800円。

② 『税額控除』選択の場合、節税効果は3万9200円。


 つまり『税額控除』を選んだ方が圧倒的に得なわけですね。


----余談。なぜ二つから選べるようになったか--------


 以前は①『所得控除』の選択肢しかなかったそうです。

 しかし所得控除のみの場合、寄付金が同じ10万だったとして、年収5000万の人と年収300万の人で節税効果に大きな差が出てしまうんですね。


年収5000万なら単純に考えて所得税は40%。つまり10万寄付したとして、

(10万-2000)×40%=3万9200円の節税効果。


年収300万なら単純に考えて所得税は10%。つまり10万寄付したとして、

(10万-2000)×10%=9800円の節税効果しかないわけです。


 つまり、この格差解消のため、二つから選べるようになったわけですね。

(お気付きかもしれませんが、ようするに税額控除を選択した場合、所得税が40%だった場合と同じ数値が出るようになってるわけですね)


-------------------


 ただし、『税額控除』にも限度はあります。

 まず、寄付できる金額は年間所得金額の40%まで。

 同様に『税額控除』は、その年の所得税額の25%まで。


 例によって年収を400万、経費・控除を100万として考えてみましょう。

 まず400万-100万=300万が年間所得となります。つまりその40%、300万×40%=120万が寄付金の限度額ですね。


 ただし、所得300万として、所得税は20万2500円です。

 その25%、つまり5万625円が税額控除の上限となります。


 つまり、年収を400万、経費控除100万、寄付額10万というさっきの例を持ち出すと、税額控除は3万9200円のはずでした。


 これなら5万625円に収まっているので問題ありません。


 ですが寄付金額が20万になると、税額控除は7万9200円。

 25%枠の5万625円をオーバーしてしまった分は使えません。つまり税額控除できる金額は、あくまで5万625円分まで。


 寄付金や義援金は、あくまで収入に見合った額にしましょう!(戒め)


 ところで。ここまでの寄付金控除は、あくまで所得税の話。

 実は『所得控除』『税額控除』どちらを選んでも、住民税の控除にも適用できます。

(ただし、いくらまで控除できるかは自治体により増減するようです)


 住民税はほぼ10%。

(正確には県に4%、市区町村に6%)

 つまり、


(寄付金-2000円)×10%は控除できると考えて問題ありません。


 所得税の税額控除と合わせると、


 (寄付金-2000円)×40%+(寄付金-2000円)×10%

=(寄付金-2000円)×50%


 ようするに寄付金の50%ぐらいは住民税と所得税を安くできるわけですね。

 とはいえ国がわざわざ限度額を設定しているぐらいです。寄付金・義援金は、あくまで無理のない範囲で行うようにしましょう。


 ところでお気付きでしょうか。冒頭のまとめでも書きましたが、寄付金控除は結局税金対策にはなりません。


 だって、住民税・所得税の節税分は結局『(寄付金-2000円)×50%』です。

 つまり、10万寄付したとしても5万円分しか税金が安くならないわけです。

(正確には4万9000円)


 金銭面だけを見れば5万円の損なわけですね。もちろん、赤十字などに10万円寄付されていることは間違いありませんが。

 ただ「寄付のついでに節税」みたいな、「それ善意なの? それともお金が大事なだけなの?」といったことはできないわけですね。


 ただし一つだけ例外があります。地方自治体に寄付した場合、『特例控除』というものがつき、お金にこそなりませんが自己負担2000円で全国の特産物をもらえたりするんです。


 それが今回何度も登場した、『ふるさと納税』です。

 大変オトクな制度ですので是非次回のお話はご覧ください。


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