第7話◆ 小規模企業共済と、退職金のリスクの話

 前項で書きましたが、フリーランスの場合、退職金を積み立てるには任意で共済等に加入しなければなりません。


 そして、たとえば作家のような一人で延々仕事する人向け退職金制度となると、誰にでも勧められるものは一つしかありません。それが『小規模企業共済』です。どの税理士さんであっても勧める、かつ信頼度も高そうなのは多分これだけだと思うんですが……。


(注:もちろんフリーランスが入れる退職金制度自体は他にもあります)


 では本題。小規模企業共済とは?


 ようするに我々のような物書き等、フリーで活動してる個人事業者向けの退職金制度です。毎月1000円から7万円まで、つまり年間1.2万円から最大84万までの額を自由に設定して積み立てることができます。

(正確には『積み立て金』ではなく『掛金』と言うそうですが。でも積み立てって言った方が個人的にはイメージしやすいんですよね……)


 前項で解説した通り、退職金というのは積み立てた年数が長いほど控除額が増えていきます。つまり、収入が安定しないうちとか、何年フリーランスやっていられるか分からないときは月1000円でいいんです。


 もし収入が増えた年があったら、積立金を一時的に最大の月7万円とかに増やしましょう。その場合、年間84万にもなりますから、15%計算で12.6万円の節税効果が発生します。

(注:収入が増えた年であれば所得税率も増えるでしょうから、恐らく15%ではなく20%、25%計算が可能です)


 ちなみに、2016年4月から小規模企業共済のルールが改訂され、掛金の増減が以前より簡単になったそうです。(でも個人的に掛金変更してもらったことがないのでどれぐらい簡単かは分かりません)


 また、ここもポイントですが、積み立てたお金は共済で運用してくれるので利息まで付きます。銀行預金よりマシぐらいですけど。つまり運用してくれるという点で、タンス預金に比べると日本経済のためにもなります。


 ただ、一つだけ厄介なのが、この退職金をもらうのにいくつか条件があるということです。


 まず事業をやめて引退するというのなら問題ありません。作家辞めてサラリーマンになる、とかでしたら即座に利息付きで退職金もらえます。


 問題は、引退じゃない場合。任意解約というヤツです。たとえば小規模企業共済の場合、5年ぐらいで積立を辞めて任意解約した場合、利息が付くどころか積立金の80%しか帰ってきません。


 おまけに任意解約の場合、名目が『退職金(正確には共済金とかいう名称ですが)』ではなく、『解約手当金』になります。ようするに一時所得になって退職金控除枠が使えなくなります。節税効果が大いに薄れるわけです。

「廃業、死亡した場合」「65歳以上で任意解約」とかは問題ないんですが。


 ただ、小規模企業共済にはもう一点覚えておくべき便利な制度もあります。


 たとえば年に最大の84万を積み立てたとします。でも84万積み立てるということは、その年に使えるお金が84万減ってるということでもあります。しかも積み立てたお金は、引退とか死亡とか65歳になったとかじゃないとなかなか全額戻ってきません。


 じゃあもし小規模企業共済に加入して5年目辺りで病気を患ってしまい、収入が絶たれたら? 今解約したら積立金の80%しか返ってこない。でも手元にお金がない! あのとき積立なんてしてなかったら! ということになりかねません。


 安心してください、お金貸してくれるんです。


 小規模企業共済では、自分が積み立てた金額に応じたお金が借りられます。なにせ預けたお金に応じた金額なので、即日・無担保・低金利で貸してくれます。


 即日・無担保・低金利ですよ即日・無担保・低金利。いい言葉です。即日・無担保・低金利。

(注:金融機関によっては数日かかることもあるそうですが)


 もし借りたお金が返せなかったら? 積み立てた分から減らされるだけですから、少なくとも人に迷惑はかかりません。

(正確には利息だけ払って借金繰り越しの方がオトクだそうです。また、借りた分を無事返済できれば、何事もなかったようにそのまま積立が続けられます)


 ちなみによくある誤解として、別に『積み立て分を担保にお金を借りる』わけではありません。借金を返せなかった場合、『積み立て分から法定弁済される』というのが正しそうで。


 以下、事務局の方に聞いた具体的な話。

 たとえば120万積み立てると、100万ぐらいまで即日貸してくれます。

(注:貸し付けにも一般貸し付け・傷病災害時貸し付け等々ありますので、実際の数字に差異は出ると思います)


 一応、100万を踏み倒しても構いません。

 ただ踏み倒した場合、延滞利息が17%取られるので117万を積み立てたお金から弁済されます。なのでこういう場合は利息だけ払って借金を繰り越した方がいいというお話でした。


 では、散々メリットばかり書きましたが、デメリットは?


 当然あります。たとえば、小規模企業共済を運営している団体が潰れる可能性はやっぱりゼロとは言えません。ニュースで時折耳にしますが、関係者が横領したとか運用失敗したとかで退職金が減ることだって絶対ないとは多分言い切れません。


 でもそれを言うと銀行預金だってリスクはありますし、一番安全とされる日本の国債だってリスクがあると主張される人はいますからね・・・。それこそ退職金の積立より金の現物でも買っておいた方がいい未来もあり得るわけです。


 ただ小規模企業共済は、あくまで個人事業主の生活安定を目的とした機構みたいなところもありますし、確定申告の控除欄にわざわざ『小規模企業共済等掛金』という項目が設定されているぐらいです。さすがにそう破綻したりとかはないと思いますが、軽々しくはなんとも言えません。


 また、場合によっては数十年お金を預けることになるため、軽視できないのがインフレです。掛金を運用してくれているので多少のインフレは吸収してくれるはずですが、今後数十年でガンガンインフレしていくことになれば目減りは避けられないと思います。ただまあそれを言えば定期預金だって(以下略)


 そういうわけで、小規模企業共済にもリスクがあることは否定できません。もし潰れたとしても、私も全く責任なんて取れませんし、結局この手の積立は個人の責任で行う他ありません。


 とはいえリスクが充分考慮できるのであれば、小規模企業共済が便利な制度であることは間違いありません。フリーランスになったら、早い内から月1000円だけでも積み立てておくのはオススメです。それならリスクはほぼない一方で、後々大きなリターンに繋げられやすいですし。


 最後に、小規模企業共済の申し込み方法ですが。


『小規模企業共済』でぐぐって公式サイトへ行きましょう!(ぶん投げ)


 いやほら、こればかりはやはり自分で登録しないとどうにもなりませんし。

 ただ、意外と簡単だった覚えはあります。

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