知らないだけで50万損するフリーランス向けお金の話

師走トオル

第1話◆ 将来フリーランスになるかもしれない人にこの話をしたい最大の理由

 私が専業作家というかフリーランス、つまりどこにも属さない個人事業主の立場になったのは2003年でした。あのデビュー直後の数年の無知を思うと本当に呪いたくなります。もっとしっかり税務処理をしておけば、間違いなく200万円ぐらい資産額は増えてました。それぐらい、適切な税務処理というのは大きな効果があるんです。


 一方で適切な税務処理なんてものは、自分で知ろうとしない限り誰も教えてくれません。なにかの拍子で話題になることはありますが、「自分には関係ないだろう」「ややこしそう」「本当に困ったらでいいや」などと考え、大体実行に移すこともありません。


 その結果、私のように大損するわけです。


 これを読んでいるあなたが、今どんな職についているかは分かりませんし、まだ働いていない学生の方も当然いらっしゃると思います。


 ですが終身雇用という言葉が死語になりつつある今、いつ誰が自営業・フリーランスの立場になるか分かりません。プロゲーマー、ブロガー、ユーチューバー、歌い手等々、新しい形のフリーランスも生まれました。去年なんか知り合いのゲームプログラマーが独立してインディーズゲームクリエイターになってしまい、「フリーランスに強い税理士さん紹介してくれない?」と頼まれたこともありました。


 というわけでプロアマを問わず、小説家に限らずこの手の税金話はそれなりに需要もあると思いますし、そういうのが小説投稿サイトにあるのもいいんじゃないかと思い、書いてみました。


 別に脱税とかそういうことを指南するわけでもありません。ただ日本という国は、


『帳簿をしっかりつけて、収入と支出を正しく申告して、将来に備えての積立とかをしてるなら、税金とか色々安くしてあげるよ』


 というシステムになっているのでそれを使うだけです。天からお金を降らせるわけでもありません、寝ててお金が増えるわけでもありません。ただ仕事をしている上で、毎年引かれていく税金を直接的に安く、あるいは退職金など別の形にすることで安くしようというだけです。

(注:この関係上、お金に繋がる仕事をしてない場合、つまり納める税金そのものがない場合、効果は大きく薄れます)


 なぜそんな節税が可能かというと、その方が国にとってもプラスだからです。収入と支出をハッキリさせることで税金の徴収もしっかりできますし、一個人が将来に備えて積立等を行い、継続的な経済活動を続けられれば減税分を補って余りある利益が出るからです。


 先の大地震の直後、国に納める税金を減らしてどうするんだ、などと考える方もおられるかもしれません。ですが、支援の形は様々です。たとえば義援金を送るにしても、まず手元にお金があってこそです。あるいは熊本県にふるさと納税するとか、熊本に取材旅行に行って経費を計上するという方法だってあるということをお認め頂ければ幸いです。


 一方で、税金なんかの話は大変複雑です。もちろん、本やウェブサイトなどでいくらでも解説しているところはあります。ですが一からすべて勉強しようとすると、途端に嫌になると思います。(個人的経験)


 ただフリーランスが覚えておくべき最低限の制度というのは、そんなに多くありません。つまりこれは個人的経験に基づく、またどの税理士さんに聞いても口を揃えて教えてくれるような、「作家業とかフリーランスになったとき、最低限この制度・仕組みは知っておかないと損します」とかそういう話です。


 たとえば、我々フリーランスでも退職金制度があります。

 そのことを知ってる方は少なくないと思います。ただ、「退職金を積み立てることで、将来への備えという以外にどう利益に繋がるのか」とか、「毎月千円でもいいから積み立てておくと後々大きな利益に繋がることがある」という話になると意外と知られてません。


 同様に、青色申告特別控除の有効さについてはよく知られています。ですが実際のところ、何万円ぐらいの節税効果があるかという話になると、意外と知られていません。


 余談ながら、私もよく忘年会などで新人の作家さんに「このままではあなた毎年数十万円損しますよ!」みたいな話をするんですが、食いつく方はまずいません。冷静に考えると話し方が詐欺師みたいでうさん臭かったのかもしれませんが……!


(余談ですが、このエッセイ原稿を現在アニメが絶賛放送中の某猫先生に読んでもらったところ、『なんか商品レビューアフィリエイトサイトみたいな文ですね!』と指摘されぐうの音も出ませんでした。いやでも本当に変なことは書いてませんから!)


 だだ、税金の話に関心が持てない理由は分からないでもありません。


 たとえば作家に限らずデビューしてしまうと、大体の場合、税金の勉強どころではなくなります。なによりも仕事優先、勉強優先。お金を稼ぐなら節税とかじゃなくて仕事で稼ぎたい。税金なんて言われた通り払うから、今は仕事の方を優先させて欲しい。今はとにかくがむしゃらに仕事したい、生き残りたい――。


 振り返れば私もそうでした。


 ……いやすいませんウソです。私の場合は「面倒臭そう」というだけでした。

(注:でも大体の手続きは、最初の一回目さえ乗り越えれば意外と簡単です)


 ですが私も専業物書きを続け、もう他の職業への転職も難しくなり、結婚したり出版不況とか災害とかの話をしたり聞いたりする度、お金のありがたみを実感するようになりまして。


 それもただのお金じゃありません。通常の仕事とは別に得られるお金です(ここ重要)。実際、新人の方ではなく10年以上やってる方に退職金制度の話とかすると、ものすごい興味を持たれることがあります。


 ただでさえフリーランスは自分が倒れたらそこで終わりです。会社員なら付いてくる失業保険もありません。「あのとき適切に税務処理をしていれば」と思う時が来ないとも限りません。たとえば10万円の貯金があれば、一か月生活できます。一か月あれば本が一冊書けるかもしれませんし、次の仕事まで繋げるかもしれません。


 なので、ここまで読んだら是非もう少し先まで読んでみてください。え、まだ学生? だったら尚更です。フリーランスは職業を問わず、業界の荒波に放り込まれた直後は、多分税金のことなんて考える余裕はなくなります。今だからこそ是非知っておいてください。


 本当に制度というのは知らないだけで損をします。今はとりあえず制度の概要だけでも知っておいて、将来必要になったらあらためてまた調べるってことでも充分意味はあります。


 なお、一応このお話は、私がお世話になっている税理士さんに監修してもらい、小規模企業共済の相談窓口にも確認した話がほとんどです。


 ただ、だからといって、取材した私がなにか聞き間違えをしたとか解釈を間違えてるという可能性は否定できません。もし間違いとかもっといい他のやり方とかありましたら、ご指摘いただければ幸いです。

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