まずは問題点を洗い出そう ――「勉強が苦手な人」が絶対に直すべき6つの問題点



 さて、「超ズボラ勉強法」の内容に入る下準備として、いわゆる「勉強が苦手な人」が陥りがちな6つの問題点について見ていきたいと思います。


 なぜわざわざ問題点などを見る必要があるのか、勉強法がわかればそんなことを知る必要はないじゃないか。

 いえいえ、そうではないんです。はじめに問題点をきちんと把握することで、この「超ズボラ勉強法」の効果も飛躍的にアップするんです。例えるならば、患者に薬を出す前に原因や症状を伝えるようなものでしょうか。もしそれを伝えなかったとすれば、薬を与えたとしても症状を悪化させるような行動を取り、結局状態が改善しないかもしれません。

 そうならないためにも、まずは学習を阻害する6つの問題点について確認しておきましょう。その6つとはこちらです。


問題点1 課題の難易度が適切ではない

問題点2 参考書マニアになる

問題点3 解けない問題をいつまでも考える

問題点4 時間を気にしない

問題点5 問題の正誤を把握していない

問題点6 問題を反復学習しない


 そんなのは当たり前だというものもあれば、それのどこが悪いんだ、と思うものもあるかもしれませんね。

 ですが、これらはすべて「超ズボラ勉強法」においては正すべき問題点です。逆に言えば、「超ズボラ勉強法」とはこれら6つの問題点を裏返しにした勉強法なのです。


 これから、この6つの問題点を順に見ていくわけですが、これらの何が問題なのかをわかりやすくするために、ここからは二人の少年少女に登場してもらおうと思います。一人は上の6つの問題点を抱えた少年、もう一人は「超ズボラ勉強法」に沿って学習を進めている少女です。ここの二人のやり取りから問題点を一つずつ浮き彫りにし、その都度解説を加えていきたいと思います。


 それではここで、プロローグをご覧いただきたいと思います。よくあるシチュエーションを設定しましたので、この二人の勉強の仕方を通じて問題点や対処法がイメージしやすくなるのではないでしょうか。まずはどうぞ気楽に読んでください。




プロローグ ――最強の家庭教師



 俺は北条秀哉ほうじょうしゅうや。今年高校受験を控えた、ごく普通の中学3年生だ。

 俺が所属するバスケ部は、順調に勝利を重ねて夏の大会出場にまでこぎつけた。俺もレギュラーとして、最後の大会に臨もうとしているわけだが……。


 そんな俺は、教室の片隅で今必死に一人の少女に頭を下げているところだった。


「頼む、この通りだ! どうか勉強教えてくれ! このままだと俺、大会に出られないかもしれないんだ!」

「ちょっとやめてよ秀ちゃん、みんなが見てるから」


 目の前の少女が、困った顔であたりを見回す。

 こいつの名前は上杉夏子うえすぎなつこ。俺とは幼なじみで、今も腐れ縁が続いている。

 こう見えても、夏子はうちの中学では2年生の頃からずっと学年トップを取り続けている。なんでも昔テレビのドキュメンタリーを見たとかで、将来は医者を目指しているんだそうだ。テレビに影響されるだなんてまるで子供みたいだが、それでトップを走り続けてるんだから恐ろしい。

 夏子は塾に行ってるわけでもないのに、塾に行ってる連中を寄せつけずにずっと一番を取り続けている。まあ、こいつは部活にも入ってないし、きっと家では毎日何時間もガリ勉してるんだろう。


 そんな夏子にこうして頭を下げているのは、いよいよ数学が全くわからなくなってきたからだ。今まではなんとかごまかしてきたが、今回ばかりはヤバい。うちの部は一つでも赤点があったら大会への出場禁止だからな。俺はレギュラーだし、死んでも赤点を取るわけにはいかない。

 そこでこの夏子に勉強を教えてくれるよう頼みこんでいるわけだが。

 はあ、と一つため息をつくと、夏子はやれやれといった顔で口を開いた。


「わかったよ、教えてあげる。なにせあの秀ちゃんが、試験の10日も前から頼みこんでるんだしね」

「マジか!」


 俺は喜びのあまり、思わず大声を上げる。


「サンキュー! マジ助かる! さすが夏子! 夏子さま! 夏子大明神!」

「や、やめてよ、みんな見てるってば」


 慌てる夏子に構わず、俺は話を続ける。


「じゃあさっそく今日から頼むよ! まだテスト期間前だから部活あるし、とりあえず6時半くらいにうちに来てくれないか?」

「うん、わかった。それじゃ6時半に行くから、ちゃんと起きててね?」

「バカ、当たり前だろ。それじゃ頼んだぜ」


 夏子に約束を取りつけると、俺は一仕事終えた達成感にひたりながら自分の席へと戻った。




 約束の時間のちょっと前、家の呼び鈴が鳴った。夏子の奴、あいかわらず時間に正確だな。俺は二階の部屋から飛び出すと、玄関へと続く階段を駆け下りた。親が長話を始めると面倒だからな。

 インターホンをのぞくと、私服に着替えた夏子がちょこんと立っている。玄関の扉を開くと、俺は夏子を家に招き入れた。


「よう。まあ、入れよ」

「お邪魔しまーす」


 サンダルを脱ぐと、夏子は俺についてくる。どうやら親は出かけてるようだ。親に留守番を頼まれたらしい妹が、居間から顔を出して夏子にあいさつする。

 階段を上りながら、夏子がしみじみとつぶやく。


「秀ちゃんの部屋に入るのも久しぶりだね。2年ぶりくらいかな?」

「まあ、俺は部活あるしな。ガキじゃねえし、昔みたいにはな」

「おうちにはいつもお邪魔してるのにね」


 夏子の家とは家族ぐるみのつき合いなので、1,2か月に一度くらいは夏子たちがうちに遊びに来る。でも、ここしばらくは居間でメシ食ってみんなでしゃべって解散してたからな。

 まあ、こいつを部屋に入れても、なんとも思わないから別にいいんだけどな。ガキの頃からのつき合いだし。

 学校だと夏子をいいって奴もいたりするけど、そんなにいいか? まあ、顔は悪くないかもしれないけど。……出るところも出てきてるみたいだしな。


「秀ちゃん、どうかした?」

「い、いや、なんでも!」


 後ろを振り返ってしばらく夏子をみつめていた俺に、夏子が不思議そうな顔をする。べ、別になんでもないからな! ブラウスが薄地で、ちょっと成長したみたいだなって思っただけだから!

 ドタドタと階段を駆け上がると、開きっぱなしのドアの中へと夏子を招く。


「へえ、意外ときれいだね。秀ちゃんのことだから、もっと汚れてるかと思った」

「お前、俺をなんだと思ってるんだよ。部屋くらい掃除できるっつの」


 まあ、ホントは親が掃除してるんだけどな。俺あんまり部屋にいないし。


「とりあえず、お前はこっちのイスに座ってくれよ」

「うん」


 机のイスの隣に居間から持ってきたイスを置く。

 夏子はそこに腰かけると、カバンを開きながら確認してきた。


「数学を教えればいいんだよね?」

「ああ、今回マジでわかんねえんだ」

「了解」


 夏子が笑顔でビシッと敬礼する。

 さて、最強の助っ人も来てくれたからな。これでテストも大丈夫だろう。ひょっとしたら、意外と満点とか取っちまうかもな!


 続く




 プロローグをご覧いただきありがとうございました。今後この二人のやり取りを通じて、皆さんにも「超ズボラ勉強法」の具体的なイメージを持ってもらえればと思います。

 それでは次回より、問題点を一つずつ掘り下げていきます。最後にはチェックシート形式での学習状態診断テストもありますので、どうぞお楽しみに。



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