水分三変化               087

87 村雨の 露もまだひぬ 真木の葉に 霧立のぼる 秋の夕暮れ

 むらさめの つゆもまだぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆぐれ


【カテゴリ】秋

【タグ】男性 僧侶 平安後期 千載集


【超訳】寂しいよね。

雨が結構降って、常緑の葉も濡れて、まだ乾かないのに、地面からは霧が立ちこめてきたよ。秋の夕暮れってなんだか寂しいよね。


【詠み人】寂蓮じゃくれん法師

俗名藤原定長。藤原俊成(83)の養子となるが、実子の藤原定家(97)の誕生により出家。『新古今集』の撰者のひとりだったが、完成を待たずに死去。


【決まり字】む(1)


【雑感】秋といっても紅葉でなく、常緑樹を題材にした歌です。秋の長雨。雨の降ったあとの滴はまだ常緑樹の葉にも残っているでしょう。それも乾かないうちに地面からは霧が立ちこめてくる。雨に滴に霧といろいろな水分が出てきます。美しい秋の夕暮れだけれど、この冷気だとそろそろ冬も近いのかなと思えます。


 余談ですが、この歌の決まり字は1字で「む」です。ちなみに「き」で始まる下の句もこの1首のみ。「む」で始まったら「き」。「む」は「き」、そんな風に覚えることもあるみたいですね。

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