第28話 フリー飛行

「シェルちゃん、フリー飛行の順番がきたわ」

 飛び立った時に事故がおきないよう、ピットの位置により時間差がつけられているフリー飛行の開始時間、スケジュール表を確認したハルナがシェルに伝えた。

「準備はいいな」

「もちろん」

 シェルがライトに跨りレバーを握る。

「シェル」

「ん?」

「俺たちは勝つためにきたんだ、まわりに言葉なんか気にするな」

「うん、いくよライト」

 飛び立ちの咆哮をあげライフライトニングはハルナとナグリに見送られ、白い翼を広げコースへと舞い上がる。

 ピット傍の客席から小さなどよめきが起きた。そのタイミングを見計らったように水晶ディスプレイにライトの姿が写しだされた。

『ざっと本命を紹介したから、最後は大穴予想ね』

 水晶ディスプレイに映し出され白いドラゴンに客席からどよめきが起きた。

『もはや二度と見ることはないと言われた幻のホワイトドラゴン。ライフ牧場所属ライフライトニング。そしてなんと翼のセッティングも今や化石となったハチニーを使用しているとのこと、勝つ気がないイベント参戦か、でもだからこそ倍率が高いぞ、なんと単勝で82倍、ウケを狙ったとしか思えません』

「言いたい放題ね」

「言わせておけばいい」

 今、このレース場で、ダービー予選トライアルで、白いドラゴンが飛んでいるのだ。口の悪いアイドルの暴言などライフ牧場のチームにはチクリともこない。

 ハルナの瞳には薄っすらと涙が浮んでいた。

「オーナー泣くのは、まだ早いですよ」

 ナグリがハンカチを差し出した。

「そうだね」

『ミュウの予想も終わったところで、ついにスタートポジションの発表で~す。ポジションは公平にくじできめたそうで~す』

 ドラゴンはその巨体ため人間の競技のように横一列に並んでスタートはできない。ドラゴンレースのスタートは長いホームストレートに縦二列に並んだ形となっている。

 再度、水晶ディスプレイの画面が代わりスタートポジションが映し出された。

「おお」

「わ~お」

 ナグリは手を掲げ、ハルナとハイタッチを交わした。

「やりましたねオーナー」

「天もこのレースはライトに勝てって言ってるのよ」

 水晶に映し出されたポジション表には、レースで一番有利なトップ位置にライフライトニングと名前が表示されていた。

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