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敬子はわたしがブルーな原因を知っている。十日前、あまりの事に耐えられなくて、彼女に電話してぜんぶ吐き出したからだ。同じ繋がりの友達じゃないから、遠慮なく遙香のことをボロクソに言ってやった。
親友だと思ってたのに。
「祐介が可哀そうなんだもの。」
遙香はいけしゃあしゃあと、そんな事を言ってわたしを責めた。
カレシだけでなく、親友だと思ってた女にまで裏切られたわたしの方が、もっと可哀そうだと思わない?
ねぇ、遙香。
あなたが何を正当化していたのか、それを知りたいわ。
「奥さんが居ても構いません!」
演技がヘタなあの女優にも聞きたいわ。
なにが、構わないの? それはあなたの都合よね?
挙句の果てに、女優は演技で男を崖から突き落とし、遙香は悪態をついて音信不通になった。わたしが悪いような気がしてきて、後からよくよく考えたら、別にわたしに落ち度はなかった。
遙香は祐介に騙されて、遊ばれたことを認めたくなかったんだろう。
「誘ってきたのは向こうだよ、」
冷たい男の本音が詰まったセリフだね。
そんな男が心底好きなわたしも、遙香のことをとやかく言えないって、解かってる。
どうして遙香だったの?
聞けば壊れてしまいそうだったから、聞けなかった。
なんだかんだ言っても、あんなロクデナシがわたしは好きなんだ。
他の女なら良かったのに。
ぜんぜん知らない他の誰かなら、また祐介の悪い癖が出たと思って、その場限りで怒っておしまいだったのに。やっぱりわたしに戻ってくるのよ、なんて、知らない誰かに同情して終わったのに。浮気者のカレシを持ってしまったら、そうとでも思わなければ正気でいられない。
ううん。
そのうちに、遙香のこともそんな風に見下して心の平穏を取り戻すのだと思う。
こんな女だから、祐介が可哀そうだと思ったの?
遙香。
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