暴発について

 暴発とは、自分が意図しない状態からの発砲、つまり不意に銃から弾丸が発射される事を言います。

 そしてそれは大きく分けて二つ、人間そのものが関わっている場合と、銃や弾丸の構造や状態、環境や道具そのものに問題がある場合に分けられます。


 人間が関わっている場合の多くは、不注意による操作ミスが原因だと思われます。銃口管理、引き金への注意力不足、理由は様々ですがそれはどれもが最悪誰かの命に関わる事態にも発展する可能性があります。不注意による暴発は多くの場合、銃を握る本人より周りの方に危険が及ぶ可能性が高いですから。なにせ撃つつもりで構えているわけではないので、銃口がどこを向いているかわかりませんからね。

 ですが当然、銃を握った自分自身にも危険が及ぶ場合もあります。ホルスターから拳銃を抜く拍子に、うっかり力んでしまい引き金に指がかかり足を撃ち抜く、そういった暴発事件は珍しいものではありません。これは素人だからという話ではなく、扱い慣れた人ですら起こしてしまうものです。極度に緊張していたり、冷静さを欠き判断が鈍れば誰もが起こし得る失敗です。特に、昨今はマニュアルセーフティ、手動で操作できる安全装置のない拳銃、グロックやシグなどが軍・警察・民間あらゆる場所で流通するようになったことでそういった暴発事故を起こす可能性もより高まったようにも感じられます。

 そしてこれらは、銃とは比較的縁の薄い日本に住む方にも関わる話です。狩猟のために銃を持つ方はもちろん、海外旅行先の射撃場で銃に触れる方もいらっしゃるかと思います。決して、日本人だから気にしなくて大丈夫、遊びで撃つだけだから大丈夫、などということはありません。銃は使い方次第で便利に利用できる道具でもあり、同時に非常に高い殺傷力を持った武器でもあるのです。それはどんな状況でも変わりません。それを常に意識することで、事故はある程度未然に防げます。

 こういった暴発はプロの方、普段銃を扱う方ですらやってしまいます。多少慣れた頃が一番危ない、なんてのはスポーツやらなんやらでもよく聞く話ですが、まさにその通りな話ですね。慣れてるからこそ油断して、注意が疎かになってしまう。そういうことは銃に限らず起こるはずです。

 海外の射撃場に行く方の中には、ある程度知識を持った方もいることでしょう。あれこれ説明されるより早く銃を触りたいという気持ちもあるとは思いますが、初心を忘れずスタッフさんの指示に従って安全に銃を使いましょう。

 スタッフの方からすれば、扱い方は知っていると言われてもそれがゲームでなのか、モデルガンでなのか、あるいは狩猟用に実銃を持っているのかは分かりません。実銃を取り扱ったとして、どれだけの頻度、時間なのかさえもです。そんな人に慣れてるから自分でできるなんて言われても、スタッフの方は困ってしまいますから。というか怖いです。それで暴発事故なんて起こされたらたまったものじゃありません。

 ちょっと悪い言い方になりますが、「知識がある」にもかなり差があります。ゲームで知ってるだけの人、トイガンを触ったことのある人、書籍や動画を見ている人、そもそも実銃に触れる職業や趣味の人など程度は様々です。半端に知識を得てしまったがゆえに自分は大丈夫だなどと根拠もない自信を得て、基本など大事なことを疎かにしてしまうこともあれば、トイガンを触っていたからこそ妙な手癖がついていて、トイガンに触れる時のように雑に扱ったり必要のない場面で引き金に指をかける、そういう方もいるかもしれません。

 これは銃が関わる話ではないのですが、あるレジャー施設の体を動かすタイプの体験で、怪我や事故の危険があるので禁止している普通お客さんにはさせないような高等テクニックを経験者だからとやってしまうお客さんがいました。本人は満足かもしれませんが、もし最悪の事態が起きたらと考えると見てる方は気が気じゃありません。だってその人の実力も分かりませんからね、失敗するかもしれない。

 という経験から私が思うに、一番危険なのがこういう少しだけ慣れた方なんじゃないかなと。私も人のことは言えませんが、右も左もわからなくて一から十まで言うことを聞いてくれる初心者と違って変な癖を身につけたまま銃に触れてしまう可能性があるわけですから。実銃に触れる機会があるなら、まず何よりもそれが玩具ではなく本物の銃であるということを意識した上で扱うことを心がけたいですね。


 人による暴発は危険ですが、同時に銃側に原因があって起こる暴発も非常に危ないです。

 例えば、落とした衝撃で撃鉄の固定が解除されてしまったり、構造上引き金を引く以外のある特定の操作をすると弾が発射されてしまう。そういう構造的に弱点を持つ銃も存在しますから、使う銃の特性は把握しておくことが重要ですね。

 また、銃の機構だけではどうしようもない暴発にコックオフというものがあります。これは連続した射撃で放熱しきれず内部の温度が上がることで、弾薬内部の火薬が発火し引き金を引かなくても弾が出てしまうものです。主に機関銃などフルオートで撃つ頻度の高い銃や開口部が少なくなるクローズドボルト式の銃で起こることが多いものです。

 そしてもう一つ、確率的にはとても低いらしいですが、遅発と呼ばれるものもあります。これは雷管を撃針が叩いてもすぐには装薬が発火せず、しばらく経ってから燃焼し弾が出るものです。これそのものが暴発というわけではなく、遅発弾のせいで暴発事故につながる、と言った方が正しいですね。

 遅発はその性質上、不発か遅発かを見極めることが非常に難しく危険なものです。不発だと思って銃を置いたら突然弾が出た、なんてことにもなりかねませんし、リボルバーならもし遅発の弾を抱えたままシリンダーを回転させてしまえば、フレームに弾が衝突して銃の破損や怪我にも繋がります。


 最後に、これは厳密に言えば射手の意図しない状況下で銃弾が発射されるという、暴発という言葉の定義から外れてしまうものになりますが、広義の場合というか一般的に暴発と呼ばれてしまっているものの例です。

 銃身内部に異物が入ったり付着したり、前の弾が銃身内で止まったのに気づかず次弾を撃ち、その結果銃身が破裂し銃が破損。規定された量以上の火薬を薬莢に入れ、それを撃ったら銃内部が爆発。水または泥に浸した銃を撃ったら部品が吹き飛んだ。こういう事例も暴発と呼ばれていますね。主に発砲したことで銃の破損に繋がる事故が起こった場合に、暴発という言葉が用いられているように感じます。

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