第2話 オーナーと従業員
オーナーと従業員
「おはようございます。あっ、マキさん早いですね。昨日はあり
がとうございました。」
「おはよう、滝くん。昨日は結構盛り上がったね・・・。私はこ
れがいつもの時間なのよ。表の掃除が大好きなので早く出てきてい
るの。滝くんも時々手伝ってね。」
「は~い。」
マキさんの服装は今日も黒子か。
「マキさん。今日も同じ服なんですね。」
「ん?やっぱりそう見えるかな。朝早くはほとんどこの服だけど、
あまり目立たない方がいいし、少しだけ毎日変えているのよ。でも
あまりわからないか。それに、スッピンだからね。」
十分に目立っていると思うのだけど、本人がそう言っているんだ
から、まっ、いいか。
『おはよう。滝くん、マキちゃん。今日も良い天気で暖かくなり
そうね。ちょっと私の白壁に太陽が反射して眩しいかしら。ごめん
なさい。マキちゃん、いつも綺麗にしていただいてありがとう。そ
のうちお礼をしますから。うふ。
滝くんも時々手伝ってあげてね。それじゃ今日も1日よろしく。
あっ、店長、ニシさんが来たようよ。』
「おはよう。マキちゃん、アンド滝くん。キミたちは早いね~。
ん?他の連中はまだなのか?しょうがねえなぁ。昨日の歓迎会で呑
み過ぎたのか?アハハハ。」
「おはようございます。西脇店長。昨日はありがとうございまし
た。ちょっと騒ぎ過ぎたような気がします。」
「いいの。いいの。たまにはパ~とやんないとね。ストレスが溜
まってしまうからね。ねっ、マキちゃん。」
「ニシさんは悪乗りをし過ぎ!みんなヘトヘトになっていたよ。
アハ。」
「そうか。ところで今日はオーナーが出張から帰ってくるから。
多分、このカフェにも顔を出すと思うのでよろしく。」
オーナーと初めて会えるのか。どんな人かな。この建物を造った
人だから、かなりオタクじゃないのかな。楽しみだけどちょっと不
安。
「おはよう。おぉ、みんな元気だね~。俺はちょっと二日酔いか
も。」
『出てきました。オタクの中のオタクちゃん。どうやら二日酔い
ですね。ボーとしています。仕事は大丈夫なの?』
「おはようございます。由美さん。昨日はありがとうございまし
た。」
「いやぁ~、あれだけ飲んで騒いだからすっきりしたぁ~。こち
らこそありがとう。滝くん、身体は大丈夫なの?あっ、若いもんね、
うんうん、若いってことはいい。」
「アホか!おまえもまだ29だぞ、十分に若いだろう。」
野村さんは俺からみると8つ年上。おばさんのような気がするが
・・・
あっ。そそ。この野村さんは女性で、自分自身のことを俺って言
っているけれど、イケメンの男前な女性です。ちょっとハーフっぽ
いかな。但し、かなりのオタクです。造詣が深い人なのでしょう。
とにかく、物への思い入れというのか、知識がすごくあり、自称、
プロダクトコーディネーターとか、グッズコーディネーターとか言
っていますが、そんな職業があるのかな?
それに、この方には子供がいます。6歳になる可愛く出来のいい
女の子で、隣のレンタルルームで一緒に住んでいます。
『アラ?もう一人はどうしたのでしょうか。もしかして呑み過ぎ
て寝込んでいるのでいるんじゃないの?・・・
あっ、彼女はほとんどお酒が飲めませんでした。失礼。あの子、
仕事はできるのですが、限度を知らないからついついやり過ぎてし
まうのよね。昨日もあの後仕事をしていたのかしら。何事も程々が
良いのだと思いますが、性格は良いのですが。あっ、出てきたよう
ですね。』
「おはよう。遅れました。今何時ですか?あっ、みんなお揃いで
どうしたの?
ニシさんモーニングサービスの用意始めなくていいんですか?
簡単な準備はやっておきましたけどね。」
「庄子さん、おはようございます。昨日はありがとうございまし
た。大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫よ。ちょっと厨房が気になって、朝一番に整理し
ておいた。みんな、そのまま帰っちゃったから。」
「おぉ。悪い、ショウちゃん。サンキュウ。よし!準備するか。
」
「私も外の掃除終わったから、お庭のチェックと手入れをやろう
っと。」
「俺も小物たちのチェックをするわ。」
えっ。みんな変わり身が早いというか、切り替えが早い!
最後に現れたのがショウさんで、年齢は24歳でマキさんより1つ
年上だけど、ワークスタイルが真逆。服装には無頓着だけれど、仕
事には超が付くくらい集中しやすく、非常に頼りになる。店長より
しっかりしているように思えるね。ただ、集中しやすくのめり込み
やすいようで、他が見えなくなることもあるそうです。マキさんか
らの情報なので確かかどうかわからないけど。ある意味、オタクだ
ね。
俺は違うけれどね。
『アラ!そうかしら。滝くんもいずれオタクの仲間入りとなるんじ
ゃないの。これで従業員全員が現れたわね。
後は、オーナーともう1人・・・いや、もう2人ですね。この2
人がちょっと厄介です。従業員というわけではありませんが。・・
・後で登場しますのでその時にね。
それから、店長のニシさんだけど、この際紹介しておきます。年
齢は45歳くらい。正確な年齢はわかりません。男性でバツイチ。
子供は、女の子が一人で17歳の高校生がいます。この娘が2人の
中のひとりです。親のニシさんよりしっかりしています。
そして、ニシさんは元モデルと自称していますが、確かにイケメ
ンではあります。オーナーと気が合って、このカフェや家全体の管
理をしている管理人であり、店長兼シェフってことですが料理はシ
ョウちゃんの方がうまいかも。料理のレシピはみんなで考えて、そ
して、オーナーの友人シェフに相談しているようです。
あっ、長話をしてしまったわね、ごめんなさい。』
「え~と。俺は何をすればいいでしょうか?」
「あっ。そっか。滝くんは今日が初日のようなものだね。じゃ、
ユミさんの仕事をサポートして、その時に物たちのことを学んでね。
」
「はい。わかりました。」
って、何でショウさんが指示を出すんだ?店長のニシさんは・・
・あぁ。もう厨房で準備に入っている。ワァ~作業が超早い!すご
い!
「ほんじゃ、滝くん。俺に付いて来て!横で見ながら勉強してね。
」
「はい。お願いします。でも、物たちはどれだけあるんですか?
ここはカフェなのに小物なども販売しているんですね。」
「そそ。オーナーの趣味のようなものだけど、俺は大好き。その
縁があってここで働かせてもらっているのだけどね。いろいろな物
たちに囲まれて楽しいし、学ぶことも多いよ。あぁ、売り物は小物
だけじゃないよ。このカフェにあるモノ全てが販売の対象だからね。
テーブルやチェア、そして、灯や額など全部ね。」
「えっ。そうなんですか。じゃ、この壁紙や壁の塗り工事なども
売り物ですか?」
「おぉ。いいところに目を付けたね。流石クリエーター、建築家
のたまごだ。うん、もちろん売り物だよ。お客様が気に入ったら企
業などの業者を紹介しながら、この壁紙を販売するの。どう?面白
いでしょう?だから、みんな多少なりとも知識は持っているわよ。」
確かに、どこかの綺麗で整理された「魅せます!売ります!買っ
て!」っていうショールームやショップと異なって、使っている実
感というか、ちょっとしたモデルルームのような感じがするね。で
もすごく自然体のような気がする。それに、ちょっと変わった物や
面白い物が多くて感性が刺激されて楽しい。
ん、何このフィギュアたちは?動物たちだけど、身体の大き
さに対して目がデカイ!それに色彩も様々で面白いし、丁寧に作っ
てある。・・・ほしい!
「ん。滝くんどうかした?そのフィギュアが気になるの?」
「はい。可愛いですね。ここのオリジナルですか?」
「そそ。オーナーの手作りでみんなも手伝っているよ。ちゃんと
モデルも居るしね。」
「えっ。モデルって。」
「あぁ~ほら、噂をすれば来ちゃった。アハハハ。」
あっ。犬と猫、それにウサギまでがウロウロしている。
『そうそう。滝くん、言い忘れていました。
ここには、人間の従業員の他に動物の従業員も居るのよ。ただし、
常に外には出していないようだけど、時々店内を散歩しているよう
です。この子たちをモデルにフィギュアを作っているのです。あま
り似ていないけれど可愛いでしょう。仲良くしてね。』
へぇ~アンティークな小物や生活品もあるんだ。昔のラジオや扇
風機。それに、レコードプレーヤーもある。そう言えば初めて来た
時に飲んだコーヒーのカップもアンティークっぽい印象があったね。
逆に、超モダンなものやシンプルな物まであって面白い。これはガ
レのテーブルランプだね。こっちにあるのは、和紙で作ったランプ
に木製のランプもある。高額な作家ものもあって、バラバラだけど、
基本はインテリア性のあるものらしいね。うまくコーディネートさ
れている。
「ユミさん。このラジオやランプなどもオーナーの趣味ですか?」
「オーナーも好きだけど、殆どの物は俺がセレクトして収集した
ものだよ。一応小物たちに関しては任されているからね。時々オー
ナーが邪魔をするけどね。アハハハ。」
このカフェと家はどうなっているのだろう。外観、インテリア、
そして、庭や小物たち。人や動物の従業員も含めて面白過ぎる。楽
し過ぎる。どんなオーナーなんだろう。早く会いたいような、期待
と不安が・・・要するに興味があるってことか。へへへ。
『滝くんも少しずつオタクになってしまいそうね。ここにある小
物たちはみんな良い子ばかりだし、この家も・・・そっ、私も良い
子ですので安心して生活をしてね。』
「あっ。オーナー、お帰りなさい。お疲れさまです。」
店長の後ろから唐突に現れたのがどうやらオーナーだね。無言だ
ったのでちょっと怖い。いつからそこに居たのかわからなかったし、
音もしなかった。雰囲気は昔に見かけた“ちょい悪オヤジ”のよう
な人。
「やぁ~ニシさん。ただいま。元気?みんなも元気かな?久しぶ
りに顔を出しました。」
「は~い。マキは元気です~。」
「ショウも同じく。」
「俺、ユミも小物たちも元気ですよ。」
アハ。みんな個性があるなぁ。
「あっ。始めまして滝と申します。宜しくお願いします。お帰り
なさい、オーナー。」
「うんうん。君が新しい人か。よろしく。頑張れとは言わないけ
れど、いつも元気で楽しく働いてね。そして、お客様を大切にして
ください。」
「はい。」
「ニシさん、意外に早く新しい従業員が見つかったね。なかなか
雰囲気のいい人だね。よかった、よかった。アハハハ。
じゃ、よろしく。」
と言いながら奥の方に消えちゃった。奥はまだ行ったことは無い
けれど、オーナーの部屋などがあるのかな。隣はレンタルルームで
俺たちが住んでいるけど。・・・
でもオーナーは見た目より優しい感じで話しやすそうなのでホッ
とした。
『滝くんはちょっと緊張しちゃったかな。独特の雰囲気を持った
オーナーでしょ?まだ、オーナーの気質はわからないと思いますが、
くれぐれも油断をしないようにね。うふふ。
ここで、オーナーを少しだけ紹介しておきます。私たちにとって
は恩人であり仲間です。ニシさんと同じバツイチで子供は居ません
が、可愛がっている姪っ子が居ます。年齢は多分50歳代というこ
とですが、はっきりとはわかりません。その他の詳しいことは後ほ
どに・・・。
この家もあるコトがあって造ったのです。それも後ほどにね。う
ふふ。』
「さぁ~。カフェ、オープンするぞ!みんな今日もよろしく。」
「は~い。」
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