第56話 プロにならなくてよかった話
子供の頃に通っていたカードショップがなくなった。 空き店舗では、代わりに水素水を売るようになった。
その店では昔、マジックザギャザリングというカードゲームを取り扱っていた。アメリカ発のトレーディングカードゲームで、歴史は結構古い。クリーチャーを召喚したり、魔法を使ったりする。遊戯王の海外版だと思ってもらえばいいだろう。
マジックザギャザリングのプロになりたい。それが小学生の時の私の夢だった。当時は誰も相手にされなかったが、eスポーツが盛んな現代ではそれほどありえない話でもないと思う。
外国を転戦する日本人プレイヤーの記事を読んで胸を熱くしていたが、高校の時に辞めてしまった。お金もかかるし、周りの友達も辞めていったからだ。そもそもそこまでの情熱がなかったのかもしれない。後悔はしていない。
二、三年前にふと、どんなカードがあるのか調べたことがある。もちろんルールに変更があったわけではないのだが、カード一枚一枚の力が、私の頃とは雲泥の差があった。
当時では考えられないようなゴリ押しが可能であり、序盤でほとんど趨勢が決まり、相性次第で逆転も不可能に思えてくる。ネット小説と同じでカードゲームの戦法にも偏りがある。向こうも商売だから、インフレは仕方ないのかもしれない。構築の幅が減ったとはいえ、トーナメントレベルの話なので、普通に楽しむなら問題ない。だが強いデッキで戦いたいのも道理である。まあ私はやらんけど。
ジャングルはいつもハレのちグウという漫画で、主人公が強盗の人質になる話がある。ゲーマーの主人公は強盗とゲームの話で盛り上がる。「最近のゲームはやらされてる感が強い」と主人公はぼやく。今から二十年近く前の作品だが、今聞いてもハッとする話である。
結局、プラットホームを作った奴の勝ちという真理は、永劫変わらなのかもしれない
プレイヤーは世界にどこまで食い込めるのか。プロになってから考えるのでは遅いのである。
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