奇妙な音

 いつの頃からか、僕は奇妙な音が聞こえることに気づいたんだ。

 その音は、どこに居ても聞こえる。耳を塞いでも、逃げようとして走り回っても、ずっと追いかけてくるんだ。


 不気味になって、大人たちにどうやったら聞こえなくなるか聞いてみたけれど、みんな一様に聞こえなくすることはできないって言うんだ。


 僕は途方に暮れた。

 だってこんな奇妙な音、一生聞き続けるなんて嫌だったから。


 でもそんな時、親切なお兄さんが、高い所から飛び下りれば聞こえなくなるよって、教えてくれた。

 だから僕は今、学校の屋上にいる。本当は来ちゃいけないんだけど、早くこの音を聞こえなくしたくてしょうがなかったんだ。


 今から僕は、ここから飛び下りる。

 そうすればもう、この奇妙な音ともお別れだ。

 どくどく、どくどく、やっぱり今日も、この奇妙な音はうるさくてしょうがない。


 でもそれも、あと少しの我慢。


 僕は奇妙な音と一緒に、屋上から飛び下りた。

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