第379話王女様との再会です!
王様が去ってしばらく、特に何事もなく平穏な時間が過ぎていく。
視線が消えることは無いが、トレドナがここに居るからなのか、誰かがやってくる気配はない。
前にも思ったけど、トレドナって権力的には結構上の方なのかね。
いや、トレドナがっていうより、親父さんなのかもしれないな。
しかし、結構時間たつけど、まだブルベさん達戻ってこないな。
全部じゃないとはいえ街回ってるわけだし、時間かかるのかね。
もし王都全体回ろうとかしてたら、日数単位でかかるよなぁ。
「お、やっぱ来てたんだ」
覚えのある魔力の持ち主が近づいて来たので、そちらに目を向ける。
すると、明らかに誰かを探している女の子がいた。おまけもついてる。
「・・・そりゃいるよね」
俺の視線の先に居る人物に気が付いたシガルは、少し嫌そうな顔をする。
まあ、シガルはあの子と色々有ったからなぁ。しょうがないかな。
「彼女は、ポヘタの王女、ですよね」
彼女を見て、トレドナが問うように俺に言う。
「あれ、トレドナ知ってんの?」
あの国あんまり他国と関わりなかったって聞いてるし、顔知られてないと思ってた。
彼女、クエル王女はもう、世間に知られた顔なのかね。
「ええ、一度挨拶をしましたから」
「あ、そうなんだ」
なるほど、トレドナと彼女は顔合わせ済みか。なら、紹介はいらないのかな。
彼女に視線を戻すと、どうやらこちらに気が付いたらしい。満面の笑みで歩いて来る。おまけはなんか嫌そうな面してるな。
彼女は俺の前で立ち止まり、一度礼をしてから口を開く。シガルさん、顔が怖いよ。
「タロウ様、お変わりは有りませんか?」
「うん、君も元気だった?」
「はい。変わりなく、過ごしております」
クエル王女は嬉しそうに、楽しそうに話す。その姿を見て、心の奥でほんの少し罪悪感が生まれるが、あえて無視をする。
何かしらの罪悪感を持って彼女と話すのは失礼だ。彼女は友人だ。あくまで友人として接するのが筋だ。
「トレドナ殿下、ご挨拶が遅れ、申し訳ありません。私にとってはタロウ様が一番優先する存在ですので。どうか御容赦を」
そう言って、トレドナに頭を下げるクエル王女。その姿を見て、トレドナは何かを悟ったような顔をする。
「なるほど。なれば話は早い。私も似たような物だ。お互い、良くやって行こう」
そして、トレドナと同じような反応をするクエル王女。
「・・・なるほど、確かに。今後ともよろしくお願いいたします」
「ああ、よろしく頼む」
なんか、王子王女間で謎の友好が結ばれました。なんだこれ。
まあいいや、仲いい分には。
「シガル様も、お久しぶりです」
「お久しぶりです王女殿下」
クエル王女はシガルにもちゃんと挨拶をして来た。シガルは一瞬戸惑ったものの、笑顔を作って挨拶を返す。
「ふふ、そう警戒しないで下さい。嫌われているのは自覚していますが、もうあなたが警戒するようなことは有りませんよ」
「・・・なんだか変わられましたね」
「貴女にそう言ってもらえたなら、本当にそうなのでしょうね」
クエル王女は柔らかい笑みで語り、シガルは少し困った顔をしている。
シガルの気持ちもわかるけど、彼女はもう、以前の彼女ではないと思う。
嫌いという気持ちはしょうがないだろうけど、警戒する必要は無いと思うな。
「シガル様、今だからこそ、もう一度。あの時は真に申し訳ございませんでした」
クエル王女は佇まいを直し、シガルに深々と頭を下げる。
それは以前のような、俺を気にしてではなく、彼女自身の謝罪。
シガルはそれを見て、深いため息を吐いた。
「・・・これで許さなかったら、私は只の酷い女じゃないですか」
「ふふ、やはり、貴女は良い女性ですね。本当に羨ましい」
「そうでもないですよ。近くにもっと良い女性がいますから」
「あの方と比べるのは、他の誰と比べるより酷と思いますよ?」
「あはは、確かに」
シガルはさっきまでの作った笑顔ではなく、本当の笑顔でクエル王女と語り合う。
良かった。和解出来て。
シガルが謝罪を受け入れられないのは、それはそれで仕方ないと思ってた。けど、仲良くできるなら、それに越したことは無い。
「ハク様にもご挨拶をと思いましたが、今はお邪魔しない方が良さそうですね」
『ん、気にするな』
ハクさん黙々と食ってたけど、名前呼ばれて反応。お前話聞いてるのか聞いてないのかどっちだ。
いや、多分聞いて無いか。
「ふふ、皆さま本当に変わりありませんね」
「まあ、あれからそこまで時間たってないし、変わりようもないと思うよ」
「そうですね。きっとそうなのでしょうね」
最後に会った時のような、柔らかい笑みを見せる彼女。
俺もちゃんと、笑顔で話せてるかな。
「んで、なんでお前いるの?山にお帰り」
俺は王女の横に立つ、おまけに声をかける。
「てめえ、今日は殿下の護衛だから大人しくしてたのに、堂々と喧嘩売ってくれんなぁ」
俺の言葉に眉をぴくぴくさせながら、低い声で唸るおまけ。
「護衛だったのか、それはすまん。何処の山から迷い込んだのかと思った」
「上等だ。てめえ、あとで面かせ」
「やなこった」
「ああん!?」
おまけの男が俺を睨むが、俺はサラッと流して酒を飲む。
「ガラバウ」
「タロウさん」
そんな俺達にクエル王女様とシガルさんから、低い声が放たれた。
「はい、ごめんなさい!」
「ぐっ、申し訳ありません」
即座に謝る俺と、悔しそうに謝るガラバウ。
やべえ、今のシガルさん、ちょっと本気で怖かった。
二人とも笑顔なのに、何とも言えない圧迫感があった。
「くっくっく。流石のタロウ様も、惚れた女性には勝てないのですね」
「うっせーよ」
トレドナが笑いをこらえきれないとばかりに肩を震わせる。
事実だけどこいつに言われるとなんか悔しいな。
お、どうやらブルベさん達戻ってきたみたいだ。
ミルカさん達も一緒にいるみたいだし、そのまま皆でこっちに来るのかな?
トレドナとクエル王女にその事を伝えると、クエル王女もこの場に留まって待つことになった。
今から移動しても、中途半端になりそうだものね。
トレドナは勿論、動く気は無い。
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