第7話・作戦
地平線を埋めつくすロボットの大軍勢を目の当たりにして、隊長はごくりと生つばを飲みこみました。おでこの汗がちょびひげへと流れ、しずくになって落ちて、乾いた大地にしみこみます。その荒野に頼りなげな影をつくって立つ足は、かたかたと震えていました。
「ほ、本当にあんな数のロボット兵を相手に戦おうというのか・・・?」
隊長の声はうわずっていました。背後につづく者は無言です。しかしもう後には退けません。パル博士の作戦は、すでに実行段階に移されたのです。
この岩陰にひそんだ人間は、たったの7人です。みな、脚力に自信のある者、という呼びかけにこたえ、勇気を持って手をあげた猛者たちです。
そのうちの一人が言いました。
「隊長、ご指示を」
「よ、よ、ようし・・・」
人間の戦士たちは、山すその岩場に身を隠しながら、自分を押しつぶしそうな重圧に耐えていました。人間の未来が、自分たちの足にかかっているのです。がんばらなければなりません。しかし誰もが、内心はおびえていました。ロボット兵に真っ向から戦いを挑むなど、まるで無鉄砲な作戦と言わざるをえません。それでもみな、パル博士を信じていました。逃げ出したい臆病心に打ち勝ち、ロボット軍を目の前ギリギリまで引き寄せました。
「い、今だ。うてー!」
「おーっ!」
隊長の掛け声に、戦士たちはいっせいに応じました。戦いの火ぶたが切って落とされたのです。
目と鼻の先まで迫ったロボット兵の行進の前に、人間たちは身をおどり出しました。そして勇敢に、石つぶてを敵に目がけて投げこみます。
「うわっ!おのれ、人間め」
石は、かつん、こつん、と音を立てて、ロボット兵たちを打ちました。
不意な攻撃を受けてひるんだロボット軍でしたが、しかし鋼鉄のよろいに、石ころなどなんの打撃にもなりません。すぐに大挙して、この無法者の人間たちに襲いかかってきました。
「こしゃくな人間どもめ。やつらをとらえろー!」
「よし、逃げろー!」
頃合いを見て、隊長は退却の号令を発しました。そしてお先に失礼とばかりに、自分も一目散に逃げ出しました。他の戦士たちもその後につづきます。
ロボット兵たちはそれを追いかけました。
「逃がすな!やつらは秘密基地に逃げこむにちがいない」
ロボット兵を指揮する将軍が、全軍に指令を出しました。するとロボット兵たちは、全員がいっせいに一方向に向かいはじめました。つまり、ちょびひげの隊長たちが逃げる方向に、です。
「やっと地下組織の反逆者たちをせん滅できるわけだ。王様に逆らう人間どもめ、巣ごと根こそぎ退治してくれるわ」
ロボット将軍はそう言うと、自分も戦車のように突進し、にっくき人間を追いかけます。そのお尻につながった太いコードもまた、にょろにょろと将軍の後ろを追いかけました。
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