第4話・ロボット王

 荒れ果てた平原のまん中に、ロボット国の巨大要塞がありました。それは近寄るものをおびえさせるに十分な、不気味なたたずまいを見せていました。ゴツゴツといかめしいよろい塀に囲まれた広大な敷地内が、ロボットたちの帝国の中枢部です。そしてそのまたまん中に、すばらしくぜいたくで豪華な宮殿があります。ロボット国をおさめる大権力者のロボット王は、そこで優雅に暮らしているのです。

 ロボット王は満足の様子です。輝かしい玉座に身を預けて、ゆったりとくつろいだ様子がうかがわれます。その巨体の上にすげられた鉄の顔からは、もちろんどんな表情をも読み取ることはできません。なにしろ彼は、ロボットなのですから。

「こざかしい人間め。これで少しはこりただろう」

「はっ。なにしろ、我々のエネルギー源を奪うのに失敗した上、信頼を寄せる長老の家も無惨にぶち壊されたわけですからな」

 ロボット側近が、王に報告された今夜のゆかいな出来事を確認するように言いました。

 しかし王は、いましめるような口調でつづけます。

「だがこれで人間が悪だくみをあきらめるとは思えん。防衛体勢を強化するのだ」

「かしこまりました」

「それにしても人間め、我々のエネルギー源を直接ねらってくるとはちょこざいな」

 ロボット王は、自分のお尻から伸びた太いコードを見やりました。その先につながったエネルギー源が人間の手に渡れば、ロボット国はいったいどうなることでしょう。考えるだに恐ろしいことです。王がそれを想像して小さく身ぶるいすると、鋼鉄の体内におさまったクランクやラジエーターが、ごんがらごんがらと音を立てました。

「我がロボット国に刃向かった罰として、人間から取り立てるみつぎものの量を倍にするよう、採掘場のロボット親方にふれを出せ」

「ははーっ」

「鉄鉱石をとるために、人間どもをこき使ってこき使って、こき使いたおすのだ」

「ははーっ」

「やつらが逆らえば、どれだけムチを振るってもかまわぬ。目にものを見せてくれようぞ」

 王は、ぎ、ぎ、ぎ、と超合金のアゴのかみ合わせをみにくくゆがめて、ほくそ笑みました。

 ロボット側近は、王の目がらんらんと光を放っているのを見て恐ろしくなり、身を凍らせながら引き下がりました。

(陛下は、人間との二度目の全面戦争を考えておられるのかもしれない・・・)

 その想像は、人間相手に大勝利をおさめながらも、世界中のロボット制御システムに壊滅的な打撃を負った、先のあの全面戦争を思い起こさせました。

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