逃走と治療1『「〇▲◆*※♢……――」』
「どうするよ。お仲間はもう誰も戦えないみたいだが。まだやるかい?」
「当たり前だ。仲間だけに戦わせて、けしかけたオレが何もせず降参なんかできるわけないだろ」
「…………」
ほう、クズのくせに身内には義理堅いんだな。
一名ほど戦わずに逃げた仲間もいたようだが……。
そこは触れないでおいてやろう。
「〇▲◆*※♢……――」
たった一人になったルドルフは何やらブツブツと呟きだした。
見ればやつの頭上には塵が舞い、空気の渦が巻き起こっている。信じられん、こいつ本当にやりやがったぜ!
「ルドルフ、こんな町中で攻撃魔法を使う気なの!? あんたバカなの!?」
平たいビッチがドン引きしていた。
町中で魔法をぶっ放そうとするルドルフに心底呆れているようだった。
「うるせえ! お前はオレがこのエルフを圧倒するところを見ていればいいんだよ!」
平たいビッチを助けに来たのに怒鳴りつけるとか本末転倒になっていませんかね……。目的が俺を倒すことに成り代わってますよ。
わざわざ助けに来て評価を下げるとか希少なことをしやがる。
あのチンピラが誰に嫌われようと構わないが、この暴走は阻止しなくてはならない。
俺は時速六十キロでルドルフの懐に飛び込み、鎖骨付近にトラックストレートをお見舞いしてやった。
ところが、
「なぬっ!?」
遠慮なく叩き込んだ俺の拳は見えない何かに弾かれてしまう。
ルドルフは人間離れしたスピードで接近してきた俺に一瞬だけ慄いた顔を見せたが、攻撃が通らないことを理解するとすぐさま余裕ぶった表情を取り戻した。
「ふ、ふははっ……。バリアの存在にも気が付かないとはなぁ! お前、エルフのくせに魔力探知能力が低すぎるだろっ!? そんな雑魚っぷりでオレに歯向かおうとしてたってのかぁ!? こいつは傑作だぜ!」
……実にイキイキしておられる。他者を見下すことで潤うとか相当歪んでるなぁ。
「――――」
それから何発か連続で殴ってみたがバリアの向こうには届かなかった。その間にもルドルフの作り出す魔力の渦はどんどん拡大していく。
うろ覚えだが、これは広範囲に渡る風属性の魔法だったはずだ。
それも結構威力が高いやつ。
すでに野次馬の何割かは危険を感じて逃げ出しているが、それでもまだそれなりの人数が周囲には残っている。
屋台を出している商人は魔法の行使を見てから慌てて荷物をまとめているし、このまま術を行使されれば被害は大きめなものになるだろう。
ドゥルン……ドルゥン……。
俺は脳内でエンジンを吹かした。
時間がない。ここは全身を使ったトラックアタックを解禁するしかない。
これくらい頑丈なバリアを張ってるならきっとミンチにはならないはず。
「ふんっ!」
――パリィィィンッ!
俺が突撃をかますとガラスの割れたような音が響き、ルドルフを覆っていたバリアが砕け散った。
……日本の現代技術が異世界の魔法に勝利した瞬間である。すごいぜ、I○UZU。
「ぐああああああああああっッ!!!!」
撥ね飛ばされたルドルフは宙を舞い、地面に叩きつけられる。
やり過ぎてしまっただろうか……。まあ、即死でなければ別に構わんが。
ゴブリンたちのときよりも若干抑え気味のスピードだったが時間差で死なれても困るし、抵抗してこない程度に回復魔法をかけてやるか。
俺が回復魔法の用意を始めると、
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