第4話 正体

 二人のやりとりは、互いの仕事の関係でメールが主だった。加奈子の仕事が不規則ということもあるし、浩平も新しい企画の準備で忙しかったのだ。

 子供は、両親が英才教育を施していた。日に日に自分に似てくる光太を見て、浩平は紗知を思い出してしまうのだ。



 そんなある日。

 加奈子と浩平の休日が合う日ができた。土曜日の昼から夜までであるが、面と向かって話したいと思っていた浩平は喜んでデートをセッティングした。

 加奈子も、自分の容姿に自信はなかったが、彼に会えるのを楽しみにしていた。早速新しい服を買ったり、美容室に行ったりして準備を整えた。



 そして約束の日。

 二人は個室のカフェでお茶をして、高層ビルにあるレストランで夜景を見ることにしていた。

『じゃあ、14時に噴水の前でお待ちしています。気を付けていらしてください』

『分かりました。俺の仕事の都合で、変更してもらってすみません。すぐに行きますね』


 加奈子は、軽くウェーブをかけた栗色の髪に、今流行っているワンピースを身に纏っていた。

 顔を見ているのは加奈子だけなので、浩平が現れたら声をかけるということにしていた。

(緊張するなぁ。もうすぐ14時か)

 加奈子は10分前には待ち合わせ場所に来ていて、先程からキョロキョロと辺りを見渡している。

(あ、浩平さん!)


「浩平さん!こんにちは」

 加奈子は、スーツ姿で現れた浩平に向かって、少し小さな声で彼に声をかけた。

「あぁ。加奈子さ、ん」

 彼は笑顔が固まり、言葉を失った。


 染めてパーマをかけたせいか傷んだように見える髪に、彼女には不似合いな半端丈のワンピースを着ている。しかもなぜか色黒を強調するような白を着ている。

(なんで、これチョイスしたんだろう)

 化粧も顔に合っていない。所謂残念な感じなのだ。

「じ、じゃあ行こうか」

「はい」

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