第3話 やりとり

 彼は慌てて声をかけた。この機会を逃したら、次はないかもしれないと思ったのだ。

「あの!もし迷惑でなかったら、連絡先を交換しませんか」

(さすがに、いきなりすぎたかな)

 暗がりの中で浩平は、持っていた手帳に自分のメールアドレスを書いた。そして、その紙を彼女の家の塀に置くと「気が向いたらメール下さい」と言って走っていった。


(失敗したぁ)

 彼は走りながら、彼女の顔を見ていないことに気付いて、自分の失敗に気付いた。

 浩平は、噂の女性の容姿が気になっていたのだ。それなのに、焦りすぎてメモを渡してしまった。しかも彼女の顔は、家の光によって、逆光になっていてよく見えなかった。



 その頃、噂の女性はというと、貰ったメモ用紙をじっと見つめていた。彼の顔があまりにも好みだったため、連絡しようか迷っていたのである。

(でも、私、こんなブスだしな)


 悩んだ末に、加奈子は浩平にメールを出すことにした。加奈子は、メールだけでも話したいという自身の欲求に勝てなかった。

 それからというもの、加奈子と浩平のメールでのやりとりが始まった。




 噂に違わず、加奈子の話は幅広く、面白かった。浩平は、美沙子以来の教養のある女性に出会ったと内心喜んでいた。



加奈子も浩平とのメールを楽しみにするようになっていた。あの日見た彼の顔を思い出しては、会って話したいという思いが強くなっていた。

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