梅雨明けの、空の下。(再公開)

作者 Zooey(ゾーイー)

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★★★ Excellent!!!

梅雨明けの空を見上げたときのような、息苦しさを残しながらもとてもまぶしくて爽やかな、そんな読後感が心地よい素敵な作品でした。
第一部では、周りに期待される人物像を演じているチャラい主人公・陸が、中身のない自分に葛藤しながらクラスメイト達と関わっていく様子が描かれています。
第二部では、その陸のクラスメイトである拓が主人公となります。
中学時代、父を亡くした事件がきっかけで周囲との人間関係を遮断し、苦しい思いを抱えながらひた隠しにしてきた拓。その彼がある少女と出会い、恋をして、自分自身が築いてきた他人を寄せつけない壁の存在に気づいていく。その壁がほころんで新しい世界が見えてきたとき、彼の「ポケット」からこぼれたものは――。

陸と拓、どちらも思春期ならではの心の葛藤を抱えてもがいています。
特に壮絶な中学時代を経験してきた拓の心は、ガラスのナイフのように鋭利で脆い。
そんな瑞々しくて繊細な少年の心が丁寧に描かれていて、読む者も彼らの心に、そして忘れていた自分自身の幼い頃の心に、寄り添うことができました。

陸と拓、二人の思いが絡み合うエピローグもとても素敵なものでした。
少年時代に失った愛おしい世界をあなたも思い出してみませんか。

★★★ Excellent!!!

思春期の少年の心情がとてもよく描かれていて、その揺れ動く感情に胸が熱くなりました。
友情、恋愛、煌めく青春の裏には辛い涙も……。
丁寧な情景描写と感情表現に、苦悩する主人公に感情移入することも。
エピローグでの成長した拓君の姿に、スッと気持ちが楽になりました。
前を向いて進む、だけどもう一つの『世界』は、まだ手放して欲しくない。
青春は雨粒のように……
時とともに流れ落ち消えてしまうから。

★★★ Excellent!!!

 最近読んだエッセイの中で、男は妻がもし自分と結婚せずにもっといい男と結婚していたらと考えることがあるそうです。
 より強い。よりいい男に巡り会ったならば、きっと美しさも良さも違ったのではないか。
 そう思うと、結婚によって妻の幸せを自分は決定づけてしまったのだと。
 拓のエピソードを読んでふとこのエッセイを思い出しました。
 ……もっとも拓は、もっと得体の知れない何か表現しにくい恐れの感情を抱いたのだと思いますが。

 作者の読書の質を窺わせ、他の作品を深く読んでこられた力が、本作にも表れていると思います。

 年代としては子供と大人の中間。自己を確立しようと強がったり、グループを作ったり、いい人になろうとしたり、そして、周りが薄情な世界だと心に壁を作ったり、自分の心を持てあまして突っ走ってしまったり……。
 そういう揺れ動く心情や苦悩がよく表現されています。

 これから読もうとする方には、海外作家さんの小説をイメージして読んでいただいた方が、より本作の良さがわかると思います。


追記
エピローグがまた、なんともいえない良さ。いい余韻。

★★★ Excellent!!!

 辛い過去を持つ佐藤 拓とそんな彼の周囲にいる人々を描いた青春群像劇ともいえる作品です。
 読んでみて雨粒のように透明で儚げな印象を抱かせる、少年少女たちの瑞々しい心理描写に心打たれました。
 瑞々しい青春小説を読みたい方に是非お勧めな作品です。

★★★ Excellent!!!

他人に対する利己愛は自己欺瞞でしかないという片思いに気付かされながらも自分に正直に生きていこうとする陸。
その彼を見つめる第三者がいた。

陸を見つめる目はどんな思いで彼のことを理解していくのだろうか


自分と他人、肉親、その距離感にいつも戸惑うのは過去のトラウマ。自分では振り切っていると思っていても、それは家族の間にゴロンと転がっているし、他人との間に溝を作っている。
それを感じないように見ないようにする少年があがいて手にとるのは何なのか……?

拓は一体どんな形で自分というコートに着地するのだろう。

思春期の揺れ動く少年少女の心をしっかりと捉えた良作。

★★ Very Good!!

主人公の視点から、本人を含まない三角関係へ干渉する高校生の恋愛小説である。本人もその三角関係の一人に対して好意を持っているものの、自分にも付き合っている別の女性がいるという多少複雑な構成を取っている。
本作は他者の関係性に関わりつつ、自分にも変化が生まれるという展開となっており、多少読み手に読解力を求めるが、読者対象を高校生くらいと考えれば、十分に伝えきれていると思えた。

修辞は優れている。抜群とまでは思えなかったが、よく本を読み、その表現を盗んで自分のものとしようという姿勢が感じられた。「左右非対称のアシンメトリー」のような日本語として間違っている部分がいくつかあるので、表現のブラッシュアップは心がけたほうが良いが、推敲と仲間を作って相互に批評していく中で吸収できる可能性は高いかと思えた。

展開は遅い。この内容では2万字は多すぎるのではないだろうか。学園祭一本を扱う小説であれば、あと2割程度は削減できそうに思う。中心人物の変化に関係が無い描写は削り、それよりも3人の心情を徹底しておった方が読みやすく、面白くなりそうである。特に涼と主人公の関係については、終盤でもう少し触れてほしい。主人公の涼に対する気持ちが、なぜ彼女へのものとは違うのかが、少し言葉足らずのように思えた。

キャラクターは秀でてはいないものの、まずい感じもしなかった。ラノベのような頭がクラクラする口調のキャラがいないため、どちらかというと女性読者に向けての作品を意識しているのであろう。であれば、もう少し容姿容貌の描写は細かくて良いかと思う。口角を上げる、口元がゆがむ、などの表現でまとめてしまっているものが多いが、「最初はこういう顔をしていた、けれどこういう表情に一瞬だけなって戻った。その意味はこういう事であろう」という、人物の描写に時系列をつけて表現しても良いのではないか。

また、本作は学園祭を扱っ… 続きを読む