医療と夢、出会い、そして友情と愛情。たくさんのテーマが詰まった感動の作品です。
主人公は『おじさん』。
敷かれたレールの上を進みながらも成功を収めた人生。
ここで一つの想いに気がつきます。
『夢』
『夢』のためにもう一度やり直せるなら……
そんな『夢』を巡って繰り広げられるドラマは青春そのものです。
青春には『夢』はもちろん、恋も必要。
恋に落ちるのは『おじさん』なんて関係ない。
でもスムーズにいかないところが青春。
波瀾万丈が待っています。
医療と夢を叶えるシステムが柱になった物語。
壮大なSFで読み応え十分です。
そして最後は感動に包まれます。
秋の夜長に楽しめる作品であることは間違いありません!
ある日、彼は未知のウイルス「ノーザンライト」と出会う。
ウイルスは赤ん坊の命を次々と奪っていく。
そのウイルスに立ち向かった彼は、しかし、その心の中に自分を縛る鎖を抱き続けていた。
名声と地位を手に入れた彼だったが、彼は自分の中の鎖を持て余し、新たな夢を掴もうとした。
それを助けたのは、彼の親友。
親友の作り上げたシステムの中で彼は一体何をみつけるのか。
これは、彼と、彼の親友と、そしてある数奇な出会いの物語。
それぞれが痛みを抱え、それでも諦めることなく。
助け合い、支え合い、歩き続けたからこそ。
手にすることの出来た紛れもない『奇跡』。
作者はもしかして、医療関係者なのだろうか。
それとも医療機器の開発者?
これはSFであると分かっていても、もしかしてこんな病があるんじゃないか、こんなシステムが存在するんじゃないかと心のどこかで思えてしまう。それほどのたしかな知識に裏打ちされたリアリティ溢れるストーリー展開に、いっきに読みたくなってしまうこと間違いなし。
この作品は4章仕立てになっているのだが、その章ひとつひとつがそれぞれ別々の作品だったとしても高いクオリティを備えている。
十分に楽しめる作品だ。
しかし、最後の章を読んだとき、きっと貴方は手に汗を握り、強く心揺さぶられるだろう。
ぜひ、多くの人にあのエンディングを読んでほしい。
個人的には、主人公の親友がとてもツボだった。
もうね、ラストのエンディングでの彼を思うと、若い時のあの日からよく頑張ったね、と今でもホロッと来てしまうくらい。
そして何より好きなのは。
この物語に出てくる人は、誰もが全力で前を向いて生きているっていうこと。
そのとき、そのときでベストを尽くし、誠実に運命と向き合って、一歩一歩ちゃんと歩いていること。
ちんけな嫉妬や虚栄心や猜疑心で、前に進もうとする彼らを邪魔する人がいない(まったくいないわけじゃないけど)。
だから、読んでいる最中も、そして読み終わった後も、なんだか爽快な気分だった。
『バランサーズ』も良かったけど、この作品もいいなぁ。
どっちが好きかと問われたら答えに困ってしまうくらい、どちらも大好きな作品です。
まず一言断りを入れますと、こちらの作品はWeb小説にはそぐわない一面があります。冒頭からリアリティを演出する為に細かな仕掛けが用意され、最後までその仕掛けが続きます。
こうした凝った作品は、どうしてもWebの特性に合わない部分があります。
それでも皆さまに紹介したいのには理由があります。こちらの作品は、感動したい作品を読みたいと思う方に対しては、全力で応えてくれる作品であるからです。
ストーリーとしては医療系の話に見えますが、実際は違うと思います。人間ならば誰もが抱くであろう『夢』をテーマに、その『夢』を巡って繰り広げられる人間ドラマが、こちらの作品の一番の見所だと思います。
もし、社会的に成功し実力も知識も備えた人が、仮想の過去に戻って本来の夢を追いかけたらどうなるかというのがストーリーの基盤ですが、注目すべきは、細部まで造り込まれた仕掛けです。全てがラストに向かってドラマを盛り上げる為に見事な役割を果たしています。どれか一つでも欠けたら機能しなかっただろうと思わせるくらいに、緻密な計算の上に成り立っていると思います。
夢を追いかけ、叶える為に奮闘した男たちの友情と熱意に、読み終えた時には感動を覚えること間違いなしです。
出会えて良かったと思わせる傑作作品。自信を持って皆さまにオススメいたします!!
深見真45歳。昔はSF小説が大好きで作家になる事を夢見ていた少年は、父の敷いたレールを進み、医者としての人生を歩んでいた。
未知のウイルスの対策チームに入り、見事治療法を確立させた彼は間違いなく名医。人生の成功者を呼べます。
しかしちゃんと夢を終えなかった事は心残り。父の敷いたレールの上を進むばかりの人生にはどこか引っかかりを覚える。
そんな彼は現実世界を忠実に再現された仮想現実の世界へと足を運びます。そこは1993年の東京を再現した世界。当時学生だった深見も当時と同じ姿で再現されています。ここで再び、夢に挑んでみるのです。
叶えられなかった夢を追って仮想現実に行く。とても熱い展開です。しかし話はそれだけでは終わりません。出版社に小説を持ち込んだ時に偶然出会った女性、岡安かをり。この出会いが、今後の彼の運命を大きく変えることになるのです。
現実とは違う仮想現実。しかし現実とは違うからと言って、物事を都合よく進ませられるわけではありません。困難が降りかかってきても、あくまで一人の人間として立ち向かっていかなければならないわけです。
岡安かをりと出会ったことで、深見は今までにない困難に直面し、同時に彼女を助けたいと強く思うようになります。
その描写がとても見事で、最後の方は読む手が止まらなくなりました。
医者として成功を収めた男が、夢を追いかけて行った仮想現実で何を思ったのか。
悩みながらも奮闘する深見がとても熱く、心を撃つ物語です。
ジャンルの分類って悩みますね。私は、現代ドラマよりは、作者がタグを付けたSFの色合いが強いと感じました。恋愛物っぽい味付けのSF。まぁ私がSFファンという事情が影響してますが。
さて、私は「死神に選ばれた女」のレビューで、作者は法学部出身か?と書きました。本作品では医学部出身か?と思いました。それだけ描写が細かく、素人には見破らせない記述です。第一章でWHOに行くなんてキャリア、門外漢には思い付けないと思います。また、治療シーンに登場する薬剤名も実在するかは素人に判断できませんが、それっぽいです。これらは一例ですが、最初から最後まで、細かく、それっぽいです。或る意味、本作品自体が仮想空間っぽい。仮想空間っぽいのは小説だから当たり前なんですが、SFファンなら理解してもらえるリアル感に溢れています。
でも、個人的に1つだけ釈然としなかったので、星2つに留めました。主人公が全てを投げ打って、危険を承知で桃源郷に身を投じた動機が、私には理解できなかったのです。この動機に共感できないと、その先の展開に上手く感情移入できないんですよね。これは、小説家より医者の方が遥かに社会に貢献しているという私の意見が、主人公なりRAYさんの意見と対立するからです(私、医者じゃないです。しがない会社員です)。だから、偏屈男の評価だと見逃してください。
でも、その点以外は、様々な要素が良く繋がった力作だと思いました。