Web小説っぽい冒頭と文芸小説っぽい冒頭を比べてみる。

<Web小説っぽい冒頭>


「おはよう!」

 近所に住んでる渡辺真由香が俺に声を掛けた。

 彼女は幼馴染で、同じ中学に通い、高校受験では都立の進学校に進んだんだ。俺と違って頭良いからさ。俺は……地元の二流高だ。

 そんなワケで、接点もなくなったと思っていたのに、春休みが明けると真由香はフツーに、朝、俺ん家のチャイムを鳴らした。

 今までと何も変わりません、みたいなカオして。



<文芸小説っぽい冒頭>


 我が家の玄関チャイムは間延びして、ぴん、ぽーーーん、と響いた。

 鳴り終わる前に俺は扉を開けていたから、チャイムを押した張本人とはニアミスでばったりと鉢合わせてしまう。ちょうど外へ出ようとドアノブをひねった瞬間だったもんだから、お互いがびっくりして固まった。

「お、おはよう、」

 うわずった声とぎこちない笑みで最初に動いたのは真由香の方だった。想定外の事で、ちょっと二人はバツの悪い感じになってしまう。

 俺は目を泳がせて、なんとなく、面と向かっては顔を見られなくなってしまった幼馴染の視線から逃れた。なんだか、罪悪感みたいな居た堪れない気持ちが湧き出してくるんだ。



 どうでしょう。違いが解かるでしょうか。ビミョーかも知れませんね、例文作ったヤツがヘタクソでどーもスミマセン。


 これ、私も本当のところを言うとビミョーというか、漠然とした理解しかしていなくて、ちゃんと話せるかどうか自信が無いんですけどね。

 上の、Web小説っぽい文章って何だか無味乾燥というか、素っ気無い感じはしませんか。読者に伝えるべき情報をせっせと焦って運んでいるようなカンジ。

 なーんか、面白みがないんですよねぇ、文章に。


 説明文が八割くらいなんですよね、上の冒頭文は。他は感情表現の文がちらほら混ざってるだけです。すごく説明文です。すごく。

 そりゃ、解かりやすいし、知りたい情報がサクサク伝わって手っ取り早いんだけども、なんでこう、味わいがないのでしょうか。味わいというか、迫ってくるモノが無いんですよねぇ。ホワンとなんかが香るって程度と言いますか。


 それと、上の例文はすごく慨視感があるんですけど。どっかで見たなー、みたいな。これを冒頭に置かれちゃうと、こっちはこれだけを読むわけじゃないので、それまでに読んできた他作品と合わせて、何十とある似通った説明文を連続で読むみたいな事になってるわけですよ。

「またか!」

 てね。

 正直な感想が多少、書き手さんに理不尽なものになっても仕方ないとは思いませんか。


 しょっぱなの、

「おはよう!」

 これにも文句があるんです。


 一見、物語の展開には無関係な台詞と見せても、私が下の例文で出した、

「お、おはよう、」

 には、ちゃんと物語上で必要な役目が付いているんですよ。

 主役の俺くんではなく、真由香ちゃんが先制攻撃を仕掛けたという事を匂わせつつ、『うわずった声とぎこちない笑み』が何にくっついた形容であるかを示しているんですけども。


「おはよう!」の方は、これは冒頭一発目をセリフにする事で読者の敷居を低くする狙いがまずあるわけですよね。小説はやっぱり会話が一番気楽に読んでもらえる部分なので。

 けど、だからって、ここが「おはよう!」でなければならない理由はないじゃないですか。もっと別の、もっと重要なセリフから始めたらなんかいけなかったんですか、と問い合わせたいくらいです。

 なんで「おはよう!」なんですか、なんで?


 この、取って付けた感が、こちらのSAN値をガリガリ削ってくるんですよねぇ。

 ものすごく多いんですよ、こういう冒頭文。


 恐らくは、冒頭のシーンを考える時に浮かべて、そのまま文字に変換しちゃうからこうなるんだろうなぁと思うのですけどね。

 漫画のコマ割りでも、アニメの停止画像でもいいんですけど、ぱっと浮かんだそのシーンはって事で、本当にその瞬間が、を吟味してないんだろうと思うのです。

 漫画はちゃんと切り取ってるけど、読者には流れているように感じるんですよねぇ。だから、いざ自分がやるとなると、テキトーなトコを切り取ってしまうんだろうと思うんですよ。

 ほら、漫画だって記憶される時にはコマ割りではなくて、アニメ変換されちゃいますからさぁ。


 文章で書いた後に一度は推敲すると思うのですが、その時に、ちゃんと文章として認識して吟味していないのではないか、と思う次第です。

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